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AKG TRIBUTEが良かったり良くなかったりする

2017/04/15

 先月末にアジカンのトリビュートアルバムが出た。リリースの報せを訊いたとき、俺の鼻血も出そうだった。

 とんでもないことなんですこれは。今流行りのアーティストたちを招いて、各々の個性を生かしたアジカンのカバー曲を1つの盤に詰め合わせたアルバム。しかもジャケットは浅野いにお。

 ピンと来ない人は、つぎの例えを頭の中で想像してみてほしい。今連載中のジャンプ漫画家がNARUTOのスピンオフを1話ずつ描いて、1つの単行本として発売するようなもの。

 どう考えても大事故でしょ。「サスケくんはこんなセリフ言わない!」とか言ってTogetterあたりで腐女子がブチギレてるのが目に浮かぶ。

 ソルファの再録版が出たときは諸手を挙げて大喜びした俺だけれど、今回はなんだか素直に楽しみだなあ~という気持ちにはなれなかった。あるのはただ不安。同じクラスの好きな子が先生に指されて教科書を朗読するときのような不安。同世代の母親よりやや老いた母を持つ子が授業参観日に抱くような不安。好きなインディーズバンドがMステに出たけどタモさんがよりによって一番口下手なベースをイジり始めた時のような不安…

 後藤先生もこの様子。大丈夫なんですか。というわけで聴きました。


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賛否がすごい

 発売前から予想できたことだけれど、賛否がすごい。

「アジカンの名曲たちが色んなアレンジで聴けて楽しい」

 という人もいれば

「思い出を汚された。浅野いにおを絶対に許すな」

 という人も。なんか、両方わかる。

 というのも「これって俺たち20代にだけ向けられて作られたアルバムじゃないんだろう」というところに拠る。参加アーティストと選曲を並べてみても

1. ソラニン / yonige
2. 未来の破片 / 04 Limited Sazabys
3. Re:Re: / じん
4. 夏の日、残像 / amazarashi
5. リライト / Creepy Nuts [R-指定&DJ松永]
6. 迷子犬と雨のビート / シナリオアート
7. ブラックアウト / LILI LIMIT
8. N.G.S / 夜の本気ダンス
9. アンダースタンド / BLUE ENCOUNT
10. ムスタング / リーガルリリー
11. 君の街まで / never young beach
12. 踵で愛を打ち鳴らせ / the chef cooks me
13. 君という花 / KANA-BOON

 こう。シェフクックスミーなんかはゴッチがプロデューサーやってるくらいだし近縁の人選と言えるけれど、それ以外は良くも悪くも"最近のアーティスト"くらいにしか共通点が見いだせない人選。アジカンに影響を受けた人たち!という風な題目でやっているが、今の世代で音楽をやっていてアジカンから影響を受けないなんて恋を知らずに老衰するぐらい無理。バンドやってるヤツは全員何らかでアジカンから影響を受けている。

 なので、どちらかというとこのアルバムは、アジカンの屋台を借りた、今現役で勢いのあるバンドたちのショーケースアルバムという格好なんじゃないだろうか。

 10代にはこれをきっかけにアジカンを!20代にはこれをきっかけに若手バンドたちを!という世代間の窓口的なラインナップ。なので俺たち20代がアジカンを期待してこれを聴くこと自体が間違っている。第一、そういう姿勢で聴けばどんなに素敵なカバーも「こんなのアジカンと違う!」で一蹴だ。違うに決まってるだろ、カバーなんだから。

 でもまあ、アジカンで青春を過ごした人間には、どうしても耳慣れなさが拭えないアルバムなのも事実。

Creepy Nutsからのコメント
皆さんの言わんとしてる事分かります。何処の馬の骨かも分からんHIPHOPアーティストがあの大リライトをカバーなんて.....あまりに出過ぎたマネだとは分かっています。

 クリーピーなんか普通にアジカンのリライトの上でラップしてますからね。
「消してー!!」
『モイチドッ』
「リライトしてー!!」
『ソゥナンドデモッ』
 つって、正気か。オファーを受けた勇気を称えたい。ラップの内容からも「アジカンのファンに怒られそうだなあ…」という畏れが伺える。勇気を称えたい。それ以上こちらサイドから言えることは一切ない。

 でも逆にyonige、フォーリミ、ブルエン、KANA-BOONあたりは、本家と同じくギターロックということで彼ららしいカバーで素直に聴きやすくかっこいい仕上がりとなっていた。yonigeはそうかソラニンの世代かーとか、未来の欠片だよねやっぱり!とか、アンダースタンドなんだ渋いな、とか。選曲を見てるだけでも楽しい。選曲と言えば

 最近異様に激推しされてるリーガルリリーがムスタングを担当してるのも笑える。リッケンバッカーと来て、ムスタングと来たら面白いでしょ!という制作のジジイたちの意図が見える。まったく面白くないのが面白い。

 N.G.Sなんかは元々ナンバガを象った曲だから、これをさらに夜ダンがカバーするってのはNUMBER GIRL→ASIAN KUNG-FU GENERATION→夜の本気ダンスと三世帯住宅みたいなもん。もはやナンバーガールの原型が一切ないのが良い。メガネしか受け継がれてない。

 そんな中で一番良かったのはLILI LIMIT。正直に言うとあんまり好きじゃない、というか足りないサカナクションみたいなバンドだなと忌避していたくらいなんだけれど、このアルバムの中では彼らのブラックアウトがダントツで一番良かった。元の曲が好きなのもあるけれど、彼らのアレンジが曲にとっても噛み合っていて、まるで人の曲じゃないようだった。

 ネバヤンなど他はなんだか原型を壊しすぎていたり、原曲のフォーマット上無理が出ていたりで、俺は全然好きになれなかったのだけど、逆に俺の友達(アジカン好き)は

「ギターロックの人たちは元の曲のまんまで全然面白くないなあ、amazarashiのヤツとか好き」

 なんていう風に言っていて、人によって好き嫌いがバラバラに別れるようでそういう意味でも面白いアルバムになっている。

 10代は純粋にオムニバスとして、20代は邪な気持ちでカバーアルバムとして、いろんな楽しみ方ができる一枚。「元カノのアイコンが愛子ちゃんだ」とか、浅野いにおにそういう特別嫌な思い出等なければ是非聴いてみてほしい。

 それでは。

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