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2016/10/25

レビュー

Jack`s mannequinから考える、キャッチャーなメロディと世界観

数年前から、とりわけメジャーにおいて日本人のバンドを語る上で欠かせないワード「メロディのキャッチーさ」

あるものは売れるための必要条件として語り、あるものは特に突筆する特徴がないバンドを述べる際に「キャッチーなメロディ!」と付け足すのが多いように思われる。僕の知り合いのバンド、何人もいるよ。そんなメロディかけてたら27にもなっていつまでもスカスカの箱でデモCD売ってねぇだろ。頼むから頑張って。

僕は幼少期はカーペンターズが大好きで、オアシスやビートルズにはまり、rise againstやzebraheadに魅せられ、同時にELLEGARDENやストレイテナーによって日本のロックの洗礼を受けたわけなんだけど、失礼ながらたくさんある流行り廃りで彷徨うバンドといつまでも語り継がれる偉大なバンドを比べてみて、本当のメロディって、ただポップなだけなのかな?そんな簡単に表せるものなのかな?とずっと疑問だった。

「君の曲のメロディね、ただメロディアスなだけなんだ」

某10代限定バンドコンテストの選考会で審査員にボロクソにこき下ろされた、僕の曲に下された、無常で、でも的を射ているであろう最終批評。

17歳10か月にさしかかろうとしていた僕の耳に飛び込んできた、この「本物のメロディ」というもののひとつの解答になった素晴らしいバンド、それがジャックスマネキン!

是非みなさんにも聴いて欲しいな。

少なくとも、僕はこのアルバムにハッとさせられたんだ。

ひとさじじゃ済まないほどの哀愁に添えられる歌声の妙!

紹介させていただくこのバンド、音楽をジャンルで分けて語るのは好きじゃないけど、いわゆるピアノエモに分類されると思う。有名な代表曲は上の動画でチェックされたし。

サウンドはポップスというにはわずかに重たいし、ボーカルの絞り出すような歌唱やミドルテンポでしっかり聞き取れる、内省的な歌詞。

理論的な話を持ち出すと、特に変わったことはしていなくて、強いて言えばピアノサウンドが曲の要所要所でフィーチャーされているくらいだと思う。

ただ、このバンドのメロディ、皆さん聴いてみてどうでしたか?僕はすごく胸につっかえるような、悲しいような、ピアノも相まって切なく感じた。

ここまでの泣けるメロディは、そこいらのソングライターには作れない。個人的には譜割がうまいからメロディに抑揚が効いてるのかな?と勝手に分析。

歌唱方法も絞り出すようなパンキッシュな歌声で、切ないメロディと相まってギャップを作り、よりメロディの良さを引き出しているなぁと…どうですかね?

昨今、明るい曲が多くを占める日本、社会が明るくなってるからとかじゃなくむしろ逆で、多分明るい曲、踊れる曲じゃないとやっていけないんじゃないかなって思うんだ、僕は。僕も込み合う京王線で振られそうになってる彼女のこと思いながら郷ひろみとか、相川七瀬聴いてるもん、上の例にあてはまるかって言われたらそうじゃないかもだけど。

ただ、皆さん、世の中には明るい曲を聴いても癒せない傷はある。他人の傷口除いて安心しなきゃいけない、あの後ろめたいけど、そうしないと俺はどうなっちまうんだよって、横並びになった不幸で安心しなきゃあいけないような、あれ。少なくないはずだよ。そういう人たちは。

I`m ready to fall…

ニコニコ動画からの映像で申し訳ないけど、これが一番僕が好きな曲。

持ち味となる強固なメロディセンスとシンプルで飾らないアンサンブルが魅力…このバンドの特徴を言い表すには事欠かない曲で。

それはもちろん歌詞にも言えるわけであって。

And today was a day just like any other

と言うボーカル、アンドリューの語りで始まるアルバムのこの曲。

なんて事はないいつもの1日だった、と述懐する。

歌詞を見るとわかるんだけど、人と人との関係を述べていて、いろんな解釈ができるけど、明確なのは人間関係から生じた悲しみ。

人によっては別れの歌とも取れるだろうし、すれ違いやうまくいかない現実だったりするんだろう、僕はこの曲を聴いて、ちょっとだけ泣いた。

高校生の頃に組んだバンドは、「絶対売れようぜ」って約束して、でもみんなが同じ方向を向くのは当たり前だけど厳しいわけで。

そんな、解散しちゃった僕らのバンドを思いながら、ちょっとだけ泣けた、ってよくありそうな話なんだけど。

「ここから転落するのは覚悟してるんだ、だからもう俺を呼ぶなよ」なんて歌詞、人の心に刺さらないわけがないじゃない、こんな諦めとも忘却に没頭しようとしているとも取れる歌詞がさ。

 

結局音楽で人を魅了するには?

後から知ったんだけど、ボーカルのアンドリュー、このアルバムを制作している時、実は難病を患っていたらしい。

この曲が入ってるアルバム「everything in transit」、このバンドの入門にマジでオススメなんだけど、通して歌詞がいい。

英語の歌詞なんて日本人がパッと聴いてわかるもんじゃないんだけど、なんていうか、ワカンねぇけど歌詞の世界観が曲からにじみ出てる曲ってマジでハンパない。あとで歌詞見て二度美味しい的なさ。こういうところに英語圏じゃなくてよかったって気持ちが爆発する、アハ体験みたいな!

それができるのは、単に作曲の才能でも、歌のうまさでも、先ほどから取り上げてる歌詞の巧みさでもなんでもなくて、生き様なんじゃないかなって。

俺のお世話になっていた地元のライブハウスのPAさんがよく言ってるのが、「演奏云々もだけど、バンドはマジで雰囲気」ってワード。要は世界観を作れと。「キャッチーなメロディ」とか、世界観がありきたりです、って言ってるようなもんだからお兄さんがた!

雰囲気、なんか個人的にカッコ悪いから、俺は上のように生き様って言ったわけだけど、現場の意見もこんな感じ。

世界観、難しいけど、僕はつまるところ生き様だと思ってます。

そして、アンドリューを例にとるなら、それは難病との戦いの日々と、その時を過ごすうちに募った憂いや悲しみなのかなぁって、勝手に思いを巡らせてます。

たった一枚の円盤にその人の醸し出す生きた香りが渦巻いている、これってちょっとした奇跡じゃないですか?それこそが「本当のメロディ」を生んでるんじゃ?

そんなことをふっと気づかせてくれた、そんなバンドをみんなに聴いて欲しいな。

分かち合いてぇ!この思い!感想待ってます!!

ついでにこのバンドのボーカルがやってるもう一個のバンド、「サムジングコーポレート」もオススメです!!それでは!!

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