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2018/10/14

コラム 記事

CDの売り上げの半分もバンドに行かないのはどう考えてもおかしいので、なんとかしようとおもいます。

「CDは儲からない」

 あんまり音楽に関心のない人でも、一般常識として知れ渡っている。とにかくCDは儲からない。

 

 よく業界暴露系のテレビ番組なんかで言われるのは、CD売り上げのうち、50%以上がレコード会社、25%ぐらいがCDショップ、アーティストに配分されるのはその他諸々差し引いて訳1%以下、というもの。

 契約内容だったりアーティスト自体の人気だったりで値に変動はあるけれどまあ、概ねこんな感じ。

 この図を見ると「ひでえ、やっぱり音楽業界は利権で汚れ切ってやがる!」という感情を煽られるが、実情を思えばそんなひどい分配でもない。

 レコード会社はこれとは別に、バンドメンバーに対して毎月給料を支払っているわけだし、その上で製作費(MVとかも)、宣伝費、スタッフ分の給料等の雑費を全面負担しているわけで、仮に赤字が出ようとも、担当の首が飛ぶぐらいなもんでアーティストにまで赤字分の補填義務が発生することはない。

 だし、CDが売れなければアーティストももちろん近いうちに契約解除となりインディーズに逆戻り、逆に売れれば支払われるお給料にもどんどん色がついてくる。

 話は逸れるが、アイドルだったりK-POPだったりで日本のオリコンチャートは終わっている!みたいなことがよく叫ばれるけれど、彼らの莫大な売り上げがなかったら、メジャーレーベルはそもそもバンドを抱える余裕すらないだろう。バンドというそもそも商売に向かないジャンルが未だにメジャーシーンで活躍できるのは、レーベルの稼ぎ頭のみなさんと、バンドが好きなレーベル勤務の偉いおっさんたち、そしてそれに予算を出してくれるもっと偉い物好きなおっさんたちのおかげである。

 

 だけれど、これはメジャーレーベルに所属するアーティストに限った話であり、世のほとんどのバンドマンであるいわゆるインディーズバンドにおいては全く関係のない話。このサイトの読者の多くはインディーズバンドを中心に聴いていることでしょう。みなさんが知るべきはこっちである。

 

 東南アジアの国旗みたいになった。

 この図は「自主制作盤を大手CDショップに置いた場合」のグラフである。

 1000円のCDを売ると450円も利益が出るのだ。1万枚売れたら450万だ。トップ層の大人気バンドなら、大体4000円前後のアルバムが2万枚とか。各自計算してみてください。

 じゃあインディーズでCD出した方が良いじゃん!と思った方、お忘れではないでしょうか。メジャーレーベルが負担していた、制作費宣伝広告費その他諸々の費用を。

 特に、CDの制作費なんかはピンキリで、5曲入りのEPを作るとして、格安のレコーディングスタジオで、エンジニアを知り合いに頼んで、ほぼ録りなおし無しの一発OKテイク(まずありえないが)を出し、順調にミックス作業を終えた場合で約製作費15万ぐらいか。それも、ちょっとこだわったら5倍10倍に跳ね上がるし、実情は50万ぐらいかかるものとみて間違いない。曲数が増えればその分更に跳ね上がる。

 そんでもってマスタリング費用だったりCDのプレス代だったりで、更に何万もかかるわけで。その合計費用を45%の取り分から捻出されることになる。

 つまるところ自分がレコード会社になる、というような感じ。なので当然赤字が出ればバンド側に全額のしかかる。

 しかも、流通会社を通しているわけじゃないので、CDの入荷も全部自分の手でやることになります。赤字労働です。

 探すと、インディーズバンドはいくらでも世の中にいて、その何割かはCDをリリースしているんだけれど、ほとんどは赤字。初期プレス分売れてる気配がない。たぶん、あなたの好きなバンドもそう。

 インディーズバンドは形態が様々なので、すべてがこの限りじゃないけども、例えばインディーズレーベルに所属しているバンドだったら、上のメジャーレーベルからCDを出した図に近い配分になっていく。ただし、給料はマネジメント契約までこぎつけないと一銭も出ないが。

 

 ここまではあくまで実情の説明で、今回話したいのはこの先のこと。じゃあ、より多くのバンドが生き残っていくためにどうすればいいか?誰のどの費用を削るべきか?

 唯一削れる支出があるとすれば、上のグラフ黄色部分。小売りに支払う55%を取っ払うべきだと。

バンドのCDはできるだけ物販で買ってほしい

 例えばの話、バンドがライブの物販でCDを売った場合どうなるか。

 グラフは面倒なので持ち出しませんが、上のグラフの黄色の部分が一切なくなるので全部赤色。つまり、100%バンドに入る。

 インディーズレーベルに所属している場合はもちろんその限りではないが、少なくともレコードショップに消えていた55%はアーティスト、あるいは所属レーベルに流れることに。

 あと最近だと、BASEとかSTORESとかで個人でも簡単にオンラインショップを持てるようになったので、バンドの個人ストアで買った場合も、もちろん100%(+送料)分バンドに売り上げが入る。

 ただ、一点問題があって。発送作業が死ぬほどダルい

 CDショップもむやみやたらに55%もかすめ取っていたわけじゃなく、オンラインショップ展開から、店舗の家賃、店員さんのお給料、その他雑費を全部負担していてくれるわけで。それでもCDショップはバタバタ閉店していく。別に、殿様商売をしているわけじゃなく、実店舗をもって物を売るっていうのはそのぐらいお金がかかるということだ。

 なので、バンドの為にできればライブの物販、そうでなければできるだけバンド側に取り分が多い支払方法でCDを買ってほしいなと。

 

インディーズオンラインストアと、インディーズ業界の悪習

 ○○RECORD!つってオンライン展開しているディストロなんかは大体40%から30%持っていかれる。有名なところは初回40%。

 買う側からしたら、バンドのストアで買っても、ディストロで買っても、同じことなので普段気にすることはないと思うが、なぜバンドは利益を手放してまで委託販売をお願いするのか?

 それはそれらオンラインショップがインディーズ業界の窓口になっているからである。インディーズというシマを張る、ヤクザみたいなもんである。

 インディーズで人気バンドになる一番手っ取り早い方法が、ここら辺の界隈に潜り込むことだったりする。というか、逆らって生きていけない。

 顧客がめちゃめちゃに多いわけじゃないんだけれど、こういうCDショップから情報を拾っている人たちって「インディーズバンド」の専門のファンだったりして、メジャーバンドには見られない、ひねくれた音楽性とかが好きで、ライブハウスにもよく出入りするし、CDもよく買う人たちなのだ。そういうコミュニティが形成されている。

 それに、店側に気に入ってもらえば主催イベントに出させてもらえたり、コネクションを紹介してもらうことだってある。

 だからバンドはとりあえず、鳴かず飛ばずの状況を脱出するためにこういうところにお願いしてCDを販売するんだけれど、それでレコ屋の人に気に入ってもらって大プッシュしてもらえればとりあえずは良いとしても、悲惨なのは置くだけ置いてもらったけど宣伝はろくにしてもらえない。というケース。もしくは、取り扱ってすらくれないというケース。

 先ほども述べたように、そういうインディーズの界隈では非常にひねくれた音楽性が異様にウケたり、売れ線と呼ばれるバンドを蛇蝎の如く嫌う傾向にあるので

「このバンド、ちょっと人気が出たら爆発しそうなのにな…」

 っていうようなバンドがここでつまづいて苦労して解散したり、インディーズでウケるように音楽性を180度変えてしまう、っていう例も少なくない。いざその音楽性でメジャーデビューしたら今度はメジャーでウケない、なんてジレンマもよくある話だ。

 邪な言い方をするならば、この界隈にゴマをすり取り入らないとメジャーに行く前にインディーズ業界に潰されてしまうのだ。

 個人の趣味として、素直にかっこいいことをやってるバンドが好きなので、そういうバンドがインディーズの悪習に埋もれて消えていくのは忍びないと常々思っている。

 

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 ここまでの話をまとめると

・メジャーレーベルは制作費と給料を保障してくれる代わりにCDからは利益配分されない。
・無所属でCDを店舗に置くと55~45%ほど持っていかれる
・自分でストアを開設して売れば100%自分の手元に返ってくるが、現実的には無理
・というのも、インディーズで生き残る為にディストロに40~30%ほど利益を献上しなければならない。

 地獄!

 問題だけ指摘して打開策を提示しないとインターネットで無能と吊るしあげられること間違いなしなので、自分ができる範囲でなんかやろうと思ってですね。とりあえず、オンラインストアをはじめたいと思います。安心してください。こういう話をした手前、最低限のマージンしかとりませんし、どのみち、CDじゃ絶対儲からないので…

 前から思っていたんですけど、CDショップも、ディストロも、取り扱いバンドが多すぎて何から手を出したらいいかわからないというか。小売店だから仕方ないんだけれどオススメバンドもめまぐるしく変わるし、それ本当にオススメなのか…?みたいなものが大々的にプッシュされていたり、客側に優しくないんですよね。

 CDショップの役割自体があくまで「CDを購入する場所」になっていて「良い音楽を見つける場所」ではないなとかねがね思っていたり。

 このサイトも実情そうで、いろんなアーティストをプッシュするあまり、読者の方も「結局どれが良いんだ…?」と手を付けるのに困るんだろうなと。

 ということで、僕らが本当にオススメできるバンドを額に入れて飾り宣伝する場所が欲しかったのもあり、オンラインストアはちょうどいいなと思った次第です。

 僕らが手作業で発送するので、多くは仕入れられないし、入荷が追い付かないかもしれないですけど、ここで見つけたバンドのライブに行って直接買ったり、ライブに行けない人は他の小売で注文したり、それでいいので是非見ていってください。

 一戦で活躍できるはずのバンドが、お金で挫折したり、インディーズに埋もれない為のパイプラインになるような、バンドと、そのファンの為のストアになれば幸いです。リンクはこちら

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 ストア開設記念に、第一弾としてCDを取り扱わせていただく僕らイチオシの2バンド。インディーズ業界にそっぽを向かれ唾を吐かれてきた彼らを呼んで記念ライブを開催したいと思います。

 詳細こちら。

 

 フライヤーデザイン:むつき潤(@mutsukijun

 手前味噌ですがご来場のみなさまには、僕がコンプライアンスの問題で普段このサイトじゃ書けないマジの怒り苦しみを語った号外を配布させていただきたいと思います(帰りに回収します)

 取り置きこちらから承っております。僕らもスタッフとしてお手伝いするので、当日見かけましたらウーロンハイでも奢っていただければ幸いです。

 

本イベントはSOLDOUT致しました。

 

 それでは。何卒よろしくお願いします。

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