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音楽が売れない今、何故レリゴーは売れたのか?

こんにちは。
そろそろ2014年も終盤。
一年を振り返る時期でもある。

音楽の話題で今年を振り返ったときに外すことの出来ないのが、
そう”アナと雪の女王”とその音楽、通称”レリゴー”だ。

今回はレリゴーが音楽として成功したその理由について迫って行きたいと思う。

近年稀にみる”ヒットソング”

みなさんは”ヒットソング”と聴いて何を思い浮かべるだろうか。
もはや”ヒットソング”と言う言葉が死語になりかけているほど、
ヒットソングと呼べるものが出てきていないように思える。
私なんかは”ヒットソング”と聴くと完全にレミオロメンの”粉雪”をイメージしてしまう。

2005年にリリースされた”粉雪”、ほぼ10年も前のことである。
私にとってはだが、この10年間に”粉雪”よりヒットした実感のある曲はなかったといえる。

あとは”マルマル・モリモリ”なんかは流行ったが、アレは完全に別枠扱いだろう。うん、別枠扱いにしてください。

実際にテレビの音楽番組もひたすら昔のヒットソングを流し続けて揶揄されたり
ミスチルがジャニーズに負けたり

特に最近、ヒットソングは不作続きで、もはや飢饉といえるレベルだ。
江戸時代の農業がこのレベルの不作になったら、確実に日本と言う国が地図から消えているレベルである。

そんな中で久しぶりに”ヒットソング”の名を冠するのに相応しい曲が現れた、
そう”レリゴー”である。

 

 

単純に映画が売れたからじゃないの?

単純に映画がヒットしたから曲も売れたんじゃないの?
そう思うかもしれないが、それは少し短絡的かもしれない。

現在、映画の興行収入No.1、要するに世界で最も売れた映画は、ご存知、”アバター”だ。
あなたはアバターのテーマソングのタイトルを言えるだろうか?

私はわからなかった。
というか、そもそもアバターにテーマソングがあるのかというところから始まるレベルである。

このことからもわかるように
映画が売れる=曲も売れる
ではないのないのだ。

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wikipedia - 最高興行収入映画の一覧より引用

映画興行収入のランキングだが、どうだろうか。
映画のタイトルを見て”歌の無いテーマ曲”が頭に浮かぶのが全体の三分の一ほどで、
”歌のあるテーマ曲”が浮かぶのは、アナ雪を除けば、タイタニックと微妙だがしいて言えばトイストーリーぐらいだろう。

これらのことからアナ雪がミュージカル映画だということを考慮したとしても、
”レリゴー”の曲自体に売れる要因があることは明白だろう。

 

まずは曲自体を分析していこう

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アナ雪にどっぷりはまったマスコミが言うところの”大人の女性”(この呼び方すげー違和感を感じる)は
口を揃えて”レリゴー”が良い曲であると言うらしい。

何故”良い曲”なのだろうか。

よく自己啓発系の胡散臭いブログなんかで
「レリゴーは”ありのままでというメッセージ”が届いたからヒットした。だから……」
なんてのをよく見かけるが短絡的過ぎると思うし、
”何故メッセージが届いたか”という一番重要な部分をぶっ飛ばしている。

具体的な原因を考察すべきであると思う。
そうキャッチーを科学するのだ。

ということでまずは音楽的な側面からレリゴーを分析していこう。

 

ビートルズの”Let it be”と同じコード進行

ビートルズのLet it beの最初とアナ雪のレリゴーのサビが俗に”循環コード”と呼ばれる、心地よい響きのコード進行、
悪く言えば使い古され、ありがちなコード進行で出来ている。
(個人的にはレリゴーのほうがこのコード進行を印象的に使っていると思うが、
一般的に”ビートルズのLet it be進行”と呼ばれることが多いので便宜上そう呼ぼう)

この”Let it be進行”の特徴はなんといってもシンプルかつ原始的なところだろう。
また、これまた伝説のコード進行の”カノン進行”の前半部分と殆ど同じである点も特徴とも言える。

 

ポイントはシンプルさ

レリゴーは前述のサビ部分だけでなく曲全体を通してコード進行が非常にシンプルである。
転調やノンダイアトニックコードの使用が少なく、使用されていても”テクニックを誇示したり、トリック的な使い方”ではなく
あくまでメロディラインを際立たせる、コード上の曲のダイナミクスの表現の為に使用していて
個人的には非常に品の良いコード進行だと感じる。

またシンプルだからといって、ロック系にありがちな”なんちゃってテキトー音楽理論”とも違う。
高度な技術に裏づけされた、出来る人のシンプルさというべきだろうか。非常にハイセンスである。

近年の日本の音楽、J-popやアニソンなど、”所謂、作曲家が作った音楽”は
”テクニックの誇示や、派手な進行”の多用、”コード進行に頼りすぎた楽曲”
流れ作業でまるでパズルを組み上げるかの如く作られた曲が多くあると感じ、
シンプルながら”心地よく歌を聴かせる楽曲”のレリゴーとは対照的であると思う。

例えば
「ねえねえ!この曲のコード進行は四度移動セブンスに第三転回形からのベース半音下降、そしてIaug/♯IVを使用し、四度へ強制誘導しているんだよ!凄いでしょ!」
なんて言われてどう思うだろうか?

”コード進行が凄い曲”ということがわかっても、それが”良い曲”であるはわからないだろう。
恐らく作曲者の自己満足で、ただ難解なだけの曲になっている可能性が高い。

 

メロディ

レリゴーのメロディ、同じくシンプルかつ効果的なコード進行な曲ながら、
逆のアプローチのメロディを歌うアーティストと比べながら考えていこう。

そのアーティストとは宇多田ヒカルである。

Utada Hikaru - Beautiful World

宇多田ヒカル、アメリカ生まれの影響なのだろうか、J-popのカリスマでありつつも、
曲の根底が日本人らしくない、アメリカの音楽らしさが走っているように聞こえる。
恐らく私がレリゴーのコード進行に感じたシンプルさと同じものであると思う。

だがアレンジ面を除いた"レリゴー”と宇多田ヒカルの音楽性には大きな違いがある。
メロディだ。

両者とも非常に印象的で耳に残るメロディであるのだが、対照的である。
レリゴーは普遍的に、宇多田ヒカルは非普遍的。
日常的、非日常的と言い換えたほうが、わかりやすいだろうか。

 
レリゴーの場合は印象的なメロディだが、耳なじみがいいというか、
初めて聴いたとしても、聴いたことがあるようなイメージ。
要するに普遍的であるからこそ、キャッチーであると思う。
またそういった特徴があるため、割と歌い易い、口ずさみ易いのである。

逆に宇多田ヒカルのメロディは、同じく印象的であるが、どこか聴きなれない感じ、
非普遍的なメロディだからこそ印象的であるといえようか。
そしてレリゴーとは対照的に、歌うのが難しいメロディである。
リズムや音程面が難しいのと、本人の歌唱能力に依存した良さがあると思う。
まさに歌姫が自分が歌姫であるために作った曲といえようか。

 

シンプル=良い!?

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人間は常に大きい刺激を求め続ける生き物である。
更なる刺激を追求するがあまり、いびつで不自然な形となってしまった音楽が市民権を得ている時代でもある。

いびつな音楽でも名曲は名曲なのではないかと思うかもしれないが、
名曲が名曲足りうるためには多くの人の必ず多くの人の支持が必要だ。

多くの人が良いと思える音楽。普遍性を持った音楽。
今までのヒットソングをみても、普遍的な音楽にはシンプルさが不可欠であるのではないかと思う。

 


 
だがシンプルかつ良い曲が必ずしも売れるとは限らない。
というか寧ろ売れないことのほうが多い。

それはシンプル故に新しいことを取り入れたり、特徴をつけるといったことが難しいため、
他の曲に比べて目立ちにくいからである。
大抵そういう曲は、その曲のアーティストの持ち曲として名曲と呼ばれることになる。

また、この世には既に名曲と呼ばれる曲が無数に存在している。
既にある数々の名曲たちと比べられるため、ヒットソングとして成立するハードルは高くなる。

 

まとめ

ヒットソングになるためには、シンプルさ、普遍性が必要である。

今回のレリゴーは映画自体のヒットと、劇中での使われ方、
そして曲がヒットソングたるポテンシャルを持っていたからこそヒットソングと成しえたのではないだろうか。

今回のレリゴーのヒットから、
まだ本当に良いものは評価される時代であることが伺える。
だが、そのためには圧倒的な知名度が必要だ。

だが現実はもっと複雑で、たった一例からヒットのセオリーを導き出せるほど甘くはない。
だがレリゴーが音楽の本質を見失ってしまいそうな時代に警鐘を鳴らしていると考えてみれば凄く面白い曲なのではないかと思う。

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