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レビュー 邦楽ロック

the peggies/LOVE TRIPは、ガールズバンドに付きまとうSHISHAMOやチャットモンチーの壁を超えてる

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 少なくとも僕の中ではそう。

 前にこのサイト内で"ガールズバンド戦国時代、僕はthe peggiesを応援したい。歌詞が良いから。"って別の人が書いていたんだけど、全然わからなかった。褒めすぎだろうと。

 "歌詞が良い"ってよく言うけれど、歌詞に一切注力してないバンドか、もしくは突出して歌詞が良いバンド以外、今現役で頑張っているバンドはだいたい歌詞はそれなりに良い。みんな歌詞の重要性に気が付いている。

 もちろん歌詞の良さは武器の一つにはなるんだろうけれど。それだけじゃダメだと思うのだ。「あの力士は太ってるから強い!」みたいなな。いや、そりゃそうだけどさ、納得や共感を得られる為の説得材料にはならんでしょそれらは。

 the peggiesはライブも見たことあるし、メンバーが良い人なのも知ってるし、そりゃ顔もかわいいと思うけど、正直なところ「普通のガールズバンドだな」と思っていた。

 日本のガールズバンドにおける"普通"っていうのは、軽く流し聴きしたときに「あー、チャットモンチーとかSHISHAMOに向かってる音楽だー」と思われてしまう音楽だということ。

 いやちゃんと聴くと差別化されてるところもこだわってるところも彼女ららしさもあるんだけど、基本的に新規のリスナーって薄情なもんで、YouTubeはタダで聴けるのにそれすら聴くのを面倒くさがるし、聴いたら聴いたでほとんどの人は1サビ終わりまでしか聴かない。フルコーラスちゃんと聴いてくれるような真摯なリスナーは稀だし、それを期待や強制するのもヘンだ。バンド側が工夫を凝らして、全部聴いてもらいさらにパッと聴いてすぐ恋させるような仕掛けを考えるのが現実的な線じゃないか。

 そればかりか、the peggiesはガールズバンドとして欠陥を抱えている、とすら思っていた。

 たとえばSNS上での挙動や天性のルックスが、男受け良すぎるが上に、男ファンが嫌に多くてそれが女性ファンを遠ざけるところ。

 上の記事でもそうだけど、女性がやっているバンドを紹介するときに「顔がかわいい」とかそういうのをアツく語られると、もう単純に気持ち悪くないですか。なんというか男性性がさ。

 かわいいのは見ればわかるし、そこも重要なポイントではあるけど、男目線で「かわいい!かわいい!」と鼻息荒く語られると、そのバンドを知らない人たちは引いちゃうでしょう。だし、アイドルじゃない!とお客も当人たちも別枠意識をしっかり持って活動してるんだからあんまりそこを強くプッシュするのは本人たちに失礼だ。

 SHISHAMOやチャットモンチーを国内のガールズバンドの大成功例だと考えるなら、重要なのは女性ファンだ。いやもちろんファンはすべからく重要だけれど、30過ぎの男性ファンと10代の女性ファンでは、あり方が違う。男性にとっての偶像じゃなくて、女子たちにとっての憧れの対象になるのが望ましい。僕はそう思うのだ。

 かといって、彼女らを目指すとガールズバンドはたいてい上手くいかない。パンチがないから。チャットモンチー以上に純粋にソングライティング力が高いか、SHISHAMOぐらい初登場時に度肝を抜くルックスをしているか。そういう厳しい戦いに巻き込まれてしまう。

 のだけど、the peggiesは賢かったし、センスが良かった。彼女らはSHISHAMOやチャットモンチーの壁を超えたし、この調子で続いていくならその2バンドを超えるバンドヒロインになれるし、もっともっと知られて支持されるべきだ。


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LOVE TRIP

 新しく曲を聴いて「かっこいい!」とか「そうでもない!」とか、そういうことはよく思うんだけど「すげえこれ!」って飛び上がってしまうことって、そうそうない。けど、この曲は発明だし天才だよ。すごい。

 音楽にはどうやったって時代性が付きまとう。それは曲の色んな部分から無意識に感じとる「古臭いな」とか「新しいな」とかそういう機微なんだけど、このLOVE TRIPって曲の音はなんだかとっても現代的。でも安っぽくなくて、センスの良い若い子たちが、今センスが良いとされていることを楽曲に落とし込んでいる。そういう感じ。

 個人的にはギターとベースの音がすっげえ好き。間奏のギターなんか超シンプルなのに音作りがバリっと乾いてて気持ちいい。ずっとこれ聴いてたいくらい。

 あと色。MVの色。俺はこういう色が一番好き。好き。水彩グラデーションすごい好き。メジャーセブンスのI IVコード好き。あと校舎と屋上と女と曇り空好き。やっべえ全部好き。

 

 ペギーズの以前の楽曲って、まだまだ全然自由じゃなかった。バンドっていう形を成すことに必死な感じで、それも初々しくて良いんだけど、でも上で言ったように既成のスターの背中を追いかけている風に映った。

 それと比べると今回の楽曲なんか誰になろうともしてない。肩の力が抜けて自由にかっこいいことやってて、思い通り作曲を操縦している風だ。

 もう比べるのなんか野暮も野暮だけど、最近は良い曲面白い曲連発してるSHISHAMOだけど、いっちばん最初に出てきたときは「別になんでもないバンドだな」と思った。え、思わなかった?普通に拙い曲ばっかりで、もっと良いバンドもいるのに、世の中が振り向く尺度っていろいろあんだなあ。とか思ったのだ。なんだか、それはとにかくつまんなかった。

 

 この当時のSHISHAMOと聴き比べれば、音楽的にはなに一つだってペギーズが劣る側面はないし、今のSHISHAMOにだって勝るとも劣らないところまでぶっ飛んでる。いや、チャットのえっちゃんは最初ぶっ飛んでたけど。それにしてもそのクラスのトビ方してる。

 

 今回のリリースのもう一方。これもスタンダードで良い曲だけど、俺は断然LOVE TRIP。邦楽の女性ボーカルで久々に普段ふとしたときに聴きたくなるような一発。ていうか、こんな中身の詰まった二曲をシングルに詰め込んでいいのかよ。CD破裂しないか、大丈夫か。

 前から実験的なこととか、挑戦とか、そういうことをモリモリやってて、ただの"かわいい女の子三人組"で終わる感じはなかったんだけれど、そういうのが今良い感度で噛み合ってるのか、ポップでわかりやすいのにオシャレで自由。これって誰にもできてなかったことだ。

 ここで一歩垢ぬけたことで、今までもともと彼女たちが持ってた良さがもっともっと映えるはずだ。

 たとえば女子特有の剥き出しの愛情表現とか恋愛100%の頭とか生理二日目みたいなヒステリーとか、そういうマジの"女"部分。そういう漫画のキャラクターみたいな絵に描いたような女の子感って他のバンドになかった。SHISHAMOなんかはさ、絶対頭良いじゃん。いろいろ計算づくでやっててその精度が高くて結果を出してるんだけど、ペギーズからはそういう"人工の女像"みたいな清潔感はなくて、良くも悪くも本当に生身の女で、計算がなくって自然で、俺はそういうところが彼女たちは良いなと思っていた。それがさこのクオリティで音楽も面白くって120%でぶつかってくるとなれば絶対面白いじゃん。

 いや、絶対面白い。この曲も最高。新しいバンドヒロインの誕生だ。絶対聴いて。それじゃ。

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