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米津玄師を、ちゃんと聴いてほしい

 昨今の米津人気と言えばもう留まる所を知らない。米津玄師のファンが全員集まればちょっとした国がつくれそうなくらいだ。みんなで攻め込めば鳥取県ぐらい余裕で滅ぼせる規模になりつつある。

 米津玄師はここ数年で現れたアーティストの中でもブッチギリの天才。ブッチギリ。他のバンドとはやってることが根元からごっそり違う。なのにファンはというと

「米津さんのキャス余韻…癒しだわ…」
「米津さんの歌詞見てるだけで泣ける…」

 恋か?たぶん叶わないよ、それ。いや、でもね、わかる。恋しちゃうよね。俺もメスだったらイントロ聴くだけで生理予定日ズレる。わかる。

なにがヤバいのか米津玄師

 彼の何がどう音楽的に気が触れているのか、まったくそこに耳を向けないまま聴いている人が多いと思う。それはそうだ良い音楽は新しい試みを取り入れながらも、幼稚園から老人ホームまでもが理屈抜きに「良いな、なんかわかんないけど新しいな」と思わされるものだ。

 でも、知ればもっと聴くのが楽しいとも思う。解説を受けて化けの皮が剥がれてしまうバンドもいるけれど、彼の場合そんな心配はまったく要らない。だって米津玄の師ですよ。なんすか、米津玄て。

 

 初期米津玄師と言えば、1stのdioramaにて随所にて聴けるこの不協和音のようなサウンド。これ、不協和音に聴こえるだけで実際に音を取ってみるとイントロ全てキーG#mで弾けるようになっている。

 じゃあこの何とも言えない不気味な響きは正体は?というと、エフェクトでシンセのピッチを許容範囲ギリギリまでブッレブレにしたものだ。"ド"をブレブレにして"シ"と"レ♭"の間をわざと不安定に揺らしている。

 普通はちょっとだけズレた音程を重ねることで響きの印象を変える為に使われるエフェクターだが、こんな使い方をしたミュージシャンを国内外通して彼以外誰一人として思い当たらない。あってもJames brakeとかが飛び道具的に使ったりしてるぐらいなもんで、歌謡曲でこんな危ない音程聴いたことがない。中居の歌くらいなもんです。

 

 同期の楽曲ゴーゴー幽霊船もイントロからツッコミどころ満載。ホントは抄本を例に出したかったが音源がないのでとりあえずこっち。

 ミソはよく耳をそばだてないと聴こえない「うーうー」と唸るコーラスと、上の方でピポピポ鳴っているシンセ、そして出だしから鳴る半音チョーキング。

 半音チョーキングっていうのは、なんかこうギターをぐいってやって音をニャーンってさせるやつ。音程がドからド#とかにアナログに上昇するのだ。つまりヤバい。音程がヤバい。危ない。

 その音程のヤバを強調するために下で唸る米津。上で鳴る笛みたいなシンセは楽曲を構成するサウンドの一番下から一番上までの幅を引き上げる為に鳴らしているんだと思われる。このマヌケでかわいい謎シンセも彼独特。こういうところから無意識に"ぽさ"を感じているんだと思う。

 

 あとコレ、他にはドーナツホールとか駄菓子屋とかTOXICとかとかで聴けるこの小人だがバケモノだがの鳴き声みたいなサウンド。これどうやって出してるんだろ、そういうwav売ってるのかな。

 ともかく入れるにしても普通はエフェクト的に使う所を、この鳴き声に音程を持たせてイントロのリードパートにしている。

 YANKEEぐらいからか、音程のあるシンセや音素材をプツプツ細かく鳴らしリズムパート的な役割を持たせようとしている。しかもドラムも複雑怪奇、基本パターンから大きく外れて「そこで鳴らすの?」みたいな位置でスネアを叩くがそれがまたツボにストンとはまるように曲ができている。となると花に嵐とかのシンプルなロック曲がアルバムの中で際立つ。いや花に嵐ってタイトルもいいよね、教養が覗く。タイトルのおかげで歌詞に一本趣旨の筋が通る。

 アルバム全部通して曲が並んでいるアーティストってのはロック畑じゃ珍しい。みんな狙って曲作れないからアルバムが一個の指向性に偏りがちなのだ。良い意味で最近っぽくない曲芸師のようなミュージシャンだ。

 

 言いたいことが書きだしたらキリがない。これ以上はまた機会があったら書こうと思う。

 言葉で説明できる部分を取り沙汰して書いたが、米津玄師の異常性は文章じゃ伝えきれない部分ばかりだ、自分でも探してみてほしい。

 それよりなにより彼の一番怖いところは、上で書いたような無茶の連続を楽曲に山盛り詰め込んで最終的に形にしてくるとこ。これはもう、頭じゃなくてセンスだとしか言えない。

 これがきっかけでより彼の曲を聴き込むようになってくれたら幸いだ。

 ホント何回聞いても新しい発見がある。耳を立てて聴くに申し分ないアーティストだ。是非に。

 

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