AimerのRAD ワンオク TK 抱き合わせ商法って、ちょっとやり過ぎじゃないですか
抱き合わせ商法、数ある商法の中でも最も古典的かつシンプルな販売計画である。
考えてみてもほしい。なぜ女性向け商品のCMにジャニーズやモデルさんたちが起用されるのか。なぜビールのCMはいつも人気女優なのか。
「あ、〇〇がCMやってるやつじゃーん」
で買うヤツがいるからである。にわかには信じがたいと思うが、一定数確実に実在するのだ。僕が金麦を飲む理由、それは戸田恵梨香との一体感。それだけである。にわかには信じがたいと思うが、事実だ。
別名タイアップというヤツである。抱き合わせ商法、なんて言えばほのかに詐欺の匂いも立ち込めるが、カタカナにしてしまえばフォーマルな手法にイメージは急変する。
では、音楽またはアーティストを売り出すには、何とセットにして宣伝するのが最も効率的か。その答えがこれ。
Aimer 『蝶々結び』※野田洋次郎(RADWIMPS)楽曲提供・プロデュース
このやり方。どうなんでしょう。というのが今回の議題である。
全否定しようとは思わないのだけれど、ちょっと、どうなんだろうなあと僕は思うのだ。みなさんはどう思いますか。
好意的に考えると
あらためまして、Aimer。エメと読むそうだ。
「謎の新人!」と銘打たれ語られることが多い彼女だが、実はメジャーデビューから5年のキャリアを持つ歴の浅くないシンガーだ。しばらくアニメソング周辺やその他での活動が主だっていたためか突然露出したように見えるからだろう。
推しポイントは何つっても歌。
15歳の頃、歌唱による酷使が原因で声帯を痛め、治療のために沈黙療法を選択したことで発声が出来ない期間を約半年間経験するが、回復後に現在の声質と歌唱法を確立する。このときの声帯の傷はデビュー後の現在も完全に治癒していないが、完治すると今の声は出せなくなるとの主治医の忠告もあり、声質を維持するために現在の状態を保っている。
癌とか怖いから治そうよマジで。
しかし生命をリスクに置くだけあって、歌はどう聴いても上手い。声質も特徴がある「RADが歌ったほうが絶対良い!」と言う人もちらほら見かけるけれど、それはまた別問題かなあ。
面白いのが、この歌声で聴いても野田洋次郎が作った曲はどうやってもRADWIMPSになっちゃうんだな!という点。メロディの癖とかもきっとそうだけれど
「羽根は大きく 結び目は固く
なるようにきつく 結んでいてほしいの」
りぼん縛りのあのスカスカの輪っか部分を強引にも"羽根"呼ばわりできるのは、日本全国14万人の野田の中でもきっとラッドさん家の洋次郎くんだけ。世界中探したって他の野田には無理。「~してほしいの」というちょっと甘えた表情も野田イズム。もう決めたもん 俺とお前50になっても同じベッドで寝るのの感じ。
歌詞も面白いけど、楽曲にも随所にクセを感じる。面白い。
ワンオクじゃん。思わずTORUを探すぞ。
これを歌いこなして、自分のものにしているのもすごいよね。カラオケでワンオク入れたがる人は顧みろうね。常人向けに作られてないから、ワンオクの歌パート。
否定的に考えると
やりすぎでしょう。
まずYouTubeのタイトルや、宣伝文句に必ず「RAD野田やワンオクTakaら参加の」がつく。なんか、30ぐらいの息子が両親同伴でバイト先の面接に来るみたいな恥ずかしさを感じる。つらい。
コラボレーションの経緯は各アーティストがエメの歌声に共感して、ということらしいけれど。
・Taka(ONE OK ROCK)
・野田洋次郎(RADWIMPS)
・TK(凛として時雨)
・内澤崇仁(androp)
・阿部真央
・スキマスイッチ
・chelly(EGOIST)
今回のアルバムの参加アーティストだけでこの並び。アルバムについては各メディアはもちろん公式サイトも「豪華アーティスト陣参加の~」と宣う始末。本当にそればっかり。
「上のアーティストたちが事務所の言いなりでプライド捻じ曲げて参加した」とまでは思わない。どういうマッチングの仕方であれ「歌に惹かれた」とか、アルバムコメントに書かれていることはきっと嘘っぱちなんかじゃないと信じたい。彼らは事務所もバラバラだし、こういう仕事は断ろうとすれば断れないこともないくらいの立場にあるでしょう。どの程度まで「惹かれた」かは想像するだけ無駄なので審議することもないけれど、その気持ちが1%であれ、99%であれ、彼らが彼女に楽曲提供することは合意の上で執り行われたはずだ。
に、してもですよ。そればっかり振りかざしてセールスにカチ込むのはどうなんだろうか。
楽曲には製作者本人のコーラスが入っていたりする。しかもボーカルに負けないくらいのボリュームで。そりゃ「TAKAの声だけで聴きたい」なんて言う人も出てくるでしょう。というか「TAKAが!野田洋次郎が!!やってますよ!!!」なんていう宣伝方法をしたら聴く側も彼らを期待するに決まっているじゃないか。
こういうことはあんまり触れたくはないが、YouTubeアナリティクスの日別グラフもおかしい。こんないびつなグラフ見たことない。再生回数を水増しして営業をかけに行ったんじゃないか?と言うのも陰謀論ではないなと思ってしまう。
今度はオリコン週間2位獲得!とかを掲げて宣伝に回っているんだけれど、そんだけ派手な広告しまくって今絶好調の野田洋次郎のネームバリューを使って2位は、なんだかなんとも言えない。
まとめると
歌は上手い。良いものをガッツリ広告して売り出す。というのは商売としては何も間違ってはいない。
RADやワンオクのファンが「へー、曲提供したんだー聴いてみようー」となり「いいじゃん!CD買おう!」となる流れ、誰も困っていない。ラッドやワンオクがきっかけで新しい音楽を手に取る機会が増えた。しかもエメはシンガーとしては秀逸で、邦楽ロック畑の人がこういう楽曲を聴く機会を得るのはとってもプラスなことだ。
でもそれにしても売り方、売り手。僕のなんかこうモヤモヤした気持ちは本当にそこだけにある。こんなのAimer自身にも、楽曲提供者にも、なんにも良いことないじゃん。やめようよ。
Aimerをもともと応援していた人からしたらば、他のアーティストの名前をベタベタ貼り付けて、楽曲にまで少なからずほかのアーティストの主張の強いコーラスが入ってきて「もうエメはあなた方向けのコンテンツではありません」と宣言されているような気分にもなるだろう。
逆に、RADWIMPSやONE OK ROCKが好きで今回の宣伝からAimerを知った人たちは、次の楽曲がタイアップでないとなれば離れていってしまうんじゃないだろうか。だって彼女たちが聴きたかったのはただ純粋に野田洋次郎やTAKA作曲の楽曲なのだ。
きっかけは何であれ、ジャンルを超えてAimerいいじゃん!と素直にファンになった人もきっといる以上、この宣伝が一概に悪とは言えないけれど、アーティストの摩耗につながるやり方じゃないか。
声帯のくだりもそうだし、プロフィールも過剰にドラマチックに書かれていて、有名な人の絶賛の声ばかり並べられて。僕みたいなひねくれ者からしたらば「偉い人がほめてますよ!良いものですよ!ほら何も考えず買って買って!」と酷くバカにされているような惨めな気持ちになる。
Aimerの声はホントに素敵なのに「RADに曲書いてもらったら、何も考えずに買うでしょファンは」と、そういう売り手の浅薄さが滲み出ていて、とても悲しい。それじゃあ別にAimerじゃなくてもいいってことだし、もっと言えば広告さえすれば誰が歌っていても良いってことじゃないか。それは音楽を売る側作る側が「音楽の良し悪しなんか、どうでもいい」と一番大事な部分を投げ出しているってことじゃないか。
一部の人はわからないけど、多くの音楽ファンはそんなに単純じゃないし、色々考えて曲を聴いていると僕は思うのだ。そういう意図はすぐ見透かされてしまうし、それをわかった上で彼女の曲に罪はないなと聴いている人だっているでしょう。
「ああ、音楽の出来なんか、この人たちにはどうでもいいのかなあ」
と寂しくなる時もある。けどそれを販売側が開き直ったらダメだろうと。それはアーティストもファンも侮辱しているんじゃないかと。
みなさんは、この売り方に対してどう思いますか。