BASEMENT-TIMES

読める音楽ウェブマガジン

ホーム
アバウト
人気記事
月別索引
オススメ記事

2017/04/15

記事

WANIMAを心療内科のBGMにしたら人が死ぬと思うんです。

 WANIMA、とっても良いバンドだと思う。ずっと下火だったメロコアが輩出した、まさに起死回生の一発。

 楽曲はメロコアの伝統をそのままに、音色だけは現代的にきらびやかでEDMに負けないくらいの迫力があり、歌っている内容はちょっと照れくさくなるくらいまっすぐ前向き。ライブも遊び心があって、デカい会場でも屋外でもインパクトを損ねない演奏力もある。

 でも、僕みたいに子宮で人間性にパンチパーマかけてきたようなヤツならわかると思うんだけど、なんかもうこういうの生理的にダメ。専業主婦のおばさんのツイッターとかで見かける「笑顔で人生は変わる!」「感謝することが幸せへの第一歩!」みたいな画像見てる時とおんなじ気持ちになる。藤原紀香のブログと同じベクトルの波動が出てる。

 仮にね、WANIMAを心療内科のBGMにしたら人が死ぬと思うんです。いや絶対死ぬ。治す側だった医者看護婦サイドからも病人が出てくるに違いない。

 今回は、なぜWANIMAを聴いたときに僕らに拒絶反応が起こるのか。そういったことについて考えたい。

 曲名からしてもう僕には厳しい。隣に太宰治がいたらたぶんヒロポン一気飲みして死んでる。

 イントロに入る前からモヒカン、筋肉、炎、バイク、笑顔。この世界観。ハッピーな北斗の拳じゃん。

 まあ、あと決定的なのがルックスですよね。もうこの際遠まわしな表現もしないけど、ヤンキーだもんね、完全に。ちょっと前の世代のピアスショップの店員とか見事にこういう感じだったよね。見てると義務教育時代にヤンキーの先輩に蹴られた太ももが痛む。ハリーもヴォルデモートが復活したときこういう感じだったんだろう。

 しかも何がたちが悪いって、この手のヤンキーね、だいたいめっちゃ良いやつ。すげえ優しいんだよね、ヤンキー過ぎて逆に。

 よくよく思い出してみてほしいんだけど、運動部とかでも意地が悪かったり誰かを積極的にいじめてたやつって、ちょっとショボいやつだったでしょ。所詮取り巻き的なやつ。逆に一番人気者だったり一番不良っぽいやつって意外とグループ外のヤツにも優しかったよね。

 俺ぐらいのヤンキーソムリエになるともう一目見ただけでわかるんだけど、WANIMAは完全に良いやつ。後輩には飲み代を一銭も出させないし、キュウソネコカミに対しても謙虚でフレンドリー。逆にファンキー加藤とかは地元帰ったとき絶対めちゃくちゃ偉そうにしてるし老婆とか殴って大根とか盗んでる。知らんけど絶対そう。

 

 今や広く認知されているけど、鬱病の人に絶対言っちゃいけないのが「がんばれ」の一言。

 WANIMAのみなさんもよもや鬱病の方に聴かせようとバンドやってるとは思わないけど、本当の意味でキラーチューンな仕上がりだ。Syrup16gのライブ会場で是非流したい一曲。出口でカミソリ売ったらクソみたいに売れまくるに違いない。

 WANIMAね、かっこいいからみんな気が付いてないと思うけど、歌詞の向いてる方はファンキー加藤とか上地雄輔とかナオトインティライミとかとほぼ一緒よ。もしWANIMAの詩集でたら、置かれる場所は間違いなく自己啓発本のコーナー。ポジティブの暴力ですよ。

 

楽曲はどうなのか

 一応音楽ウェブマガジンという体裁なので、曲としてはどうなのか。というところにも触れると、WANIMAはめちゃくちゃキャッチーで「なんでそんなメロディ思いつくん」っていうメロディの連続。メロのセンスは天才的。だけど楽曲単位で考えると個人的にはあんまり面白くないなあと思う。

 

 モンパチの現代版だなー、で話が済んでしまう。というかメロコアっていうジャンル自体がもうやり尽くされてて、メロコアド直球で勝負しているWANIMAからは音楽としてすごく目新しいものではない。リバイバルって言っても新しい要素が追加されたわけでもない。

 そう考えると、誰も変えようのなかったメロコアを新しいものに進化させていってるフォーリミなんかの方が面白いなーと僕はおもっちゃう。

 でも、新しくも面白くはないんだけど、このメロコアっていう手垢にまみれたジャンルで現代でも聴ける出来のものを演奏してるのが彼らのすごいところ。

 だって、音も進行もリズムパターンも、もう死ぬほどやられ尽くしてアイデアの砂漠状態になっているメロコアなのに、知らない楽曲でも聴いた瞬間「これWANIMAだな」と歌メロで一発でわかる。

 この工夫もクソもしようがない単純すぎるの曲調に、真新しいメロディをつけることに関しては本当に天才的。サビに高い声でロングトーンを歌うやつ(アジカンのリライトみたいな)にWANIMAは全く頼らない。なのに一発一発キャッチーで耳に残ってしまうのだ。

 

 なんか、やっぱり気に入らない。

 なんというか「金持ちでイケメンで頭が良くてスポーツ万能の同級生が性格までめちゃくちゃ良い」みたいな嫌さ。せめて性格ぐらいは悪くないとルサンチマンのやり場もない。これをWANIMAに当てはめると、曲も良いのかよと。

 多くの人にとっては素敵で素晴らしいものでも、自分の性格的に、生理的に、受け入れられなくて厳しいものって誰にでもあるはずだ。例えばセカオワとか、村上春樹とか、宮根誠司とか。いや宮根はまあ、違うか。逆か。

 そういったものに対して人は「何かとくに理由がないけど嫌い!成功してるからヤダ!」みたいな身も蓋もない主張を口に出しても仕方がないと本能で勘付くのか、いつも何かしら攻撃できる粗をどこからかヒョイと持ち出してくるもの。「深瀬は英語が下手」「春樹は文体がキモい」みたいな。たぶんこういうのはただの建前で、深瀬の発音が良くなろうが春樹の文体が変わろうが、また別の粗を持ってきて「気に入らねえ!」というエネルギーをぶつけにかかるのだ。基本的に人間に理屈なんかないのだから。

 僕のWANIMAに対する感情はそう。完全に全部言いがかりだ。もっと難癖つけてやりたいんだけど、なんか特に批判するところがなくて余計ムカつく。なんか、子供の時苦労したらしいしめっちゃ良い人っていううわさしか訊かないし。ムカつく。せめてメチャクチャキモい性癖とかあってほしい。

 あ、そういえば。チンコめっちゃ小さいらしいです。

 それでは。

オススメ記事

記事検索

オススメ記事