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RADWIMPSの歌詞は恋愛でベロベロに酔っぱらった状態で書かれているからすごい

RADWIMPSというバンドをはじめてちゃんと聴いた。非常によかった。笑ってしまった。歌詞がすごい。すごいすごいとは噂で聞いていたが、たしかにすごい。笑ってしまう。

いや、笑うというのは否定の意味じゃなく、ものすごく肯定的な意味なんですね。というのは、RADWIMPSはラブソングが多いんだが、ほんとうにしっかりと、「恋をしておかしくなった状態」で歌詞を書いている。これはすごいことなんですよ。

普通、ラブソングの歌詞といっても、妙に耳ざわりのいい言葉を並べちゃうもんだと思う。たとえば「君を守りたい」とか「いつまでも一緒にいよう」とか。ラブソング界隈にすでに流通している言葉をヒョイッと拾ってきたような歌詞だ。でも、やっぱそれは嘘なんですよ。薄っぺらいんですよ。リアルじゃないんですよ。

持論として、恋愛状態というのは要するにアルコールでベロベロになっている状態に近い。酒に酔うかわりに恋人に酔う状態を「恋愛」というんだと思う。だからこそ恋をした人間の目はトロンとなる。恋をした人間は頭がおかしくなる。頭がおかしくなっているから妙なことを平気で言う。それが歌詞に出れば本当のラブソングになる。

そういう意味で言うと、RADWIMPSの『マニフェスト』はすごい。「僕が総理大臣になったら」という歌い出しの時点で、すでに恋愛というアルコールが入っている感じはする。こいつ妙なこと言い出したぞ、という雰囲気がぷんぷんしている。

そして具体的に「僕が総理大臣になったら何をするか」が語られるんだが、

・君の誕生日を祝日にする
・君の家まで電車を走らせる(終点は僕の家)
・君を作ったパパとママに国民栄誉賞をおくる
・僕らにまつわるすべてのことを世界の歴史として教科書にのせる

あっ、この人ベロンベロンに酔ってる、と思える。すごくリアリティがある。そしてとうとう、

・国旗を君のあの形にする

という歌詞が出てきて、これはやっぱりすごいと思うわけです。いつもここで感動する。絶対にしらふじゃ言えない。そうとう酔っぱらってないと思いつかない。恋人の性器を見て、「あっ、国旗にしたい!」

酔ってないと思いつかないです。

『ふたりごと 〜一生に一度のワープver.』もすごい。とくに後半の歌詞がすごい。まずは状況を説明させてほしい。彼女のほうが二人のことを占っているらしい。そして相性が悪いんじゃないかと言っている。それに対して、

「六星占術だろうと大殺界だろうと、俺が木星人で君が火星人だろうと」

そんなふうに言って、

「俺は地球人だよ」

ここでは、「あれ、冷静だな」と驚かされる。ツッコんでますからね。恋愛に酔っぱらっておかしくなった女に、真顔でツッコんでいる。もしかして今回は男のほうはマトモなんだろうかと、そう思ったのも束の間、

「いやでも仮に木星人でも」

やっぱり受け入れてしまう。やっぱり酔っている。しらふかと思ったら酔っている。相手は火星人でこちらは木星人だ。これは大変だ。しかし、

「たかが隣の星だろ?」

ここがすごい。受け入れたうえで一蹴している。ついつい、昔学校で習った惑星の並びを頭のなかで確認してしまう。水金地火木土天海冥。たしかに隣の星だ、と納得していたらさらに、

「一生で一度のワープを、ここで使うよ」

ものすごい暴走ぶりだろう。

そもそも、「俺が木星人で君が火星人」というのは二人で勝手に生み出した問題ですよ。「一生に一度のワープ」というのも二人の勝手なルール。二人で勝手に問題を生み出して、二人で勝手に悩んだあげく、二人で勝手に作ったルールにもとづいて、二人で勝手に解決している。まさに恋愛の狂気! 最高!

ただ、これは拒絶反応が出るのもわかる。

十年ほど前、RADWIMPSが売れはじめていたころ、知り合いの女子三人からそれぞれ別々の場で、「ラジオでキモイ曲流れてたんだけど!」と言われた。バンド名をきいてみたら、三人ともRADWIMPSのことを言っていた。どの女子も「どえらいバンドが出てきてしまった」みたいな反応だった。「なんなんだあのボーカルは、なんなんだあの歌詞は」と騒いでいた。

女目線で聴いたときに、あのRADWIMPSの浮かれぶりが気持ち悪いというのはわかるんですね。絶妙に「相手不在」の感じがあるというか。

恋をして馬鹿になった状態というのは、じつは相手不在のことも多い。「自分の頭のなかの理想の女を相手に投影して、勝手に興奮している」というパターン。

先に出した『マニフェスト』でも、やはり、「国旗を君のあの形にする」というアイデアの「相手不在」っぽさはすごい。そりゃ私だって女心がわかるとはとても言えないが、それでも、「君の性器の形を国旗にする」と言われて、女は「うれしい!」とならないんじゃないか?

このへんは女性陣の意見を聞きたいんですが、性器の形を国旗にされて、「あたし愛されてるなあ」ってなります? じんわり感動します? 女子会でさりげなく自慢します?

「彼氏がさぁ、あたしの性器を国旗にしてさぁ」

なんてふうに、他の女子をマウンティングできますか? 自虐風自慢でグワッと上からいけますか? 他の女子もそれでマウンティングされますか? その場ではすごいねーとか言いつつ、その女がトイレ行ってるあいだに陰口叩きますか?

「ちょっと性器が国旗になったからってさぁ、完全に調子のってるよね」

そんなこと言います? 女性陣の意見をききたいんですが。

まあ、それはいいとして、『いいんですか?』という曲もすごい。冒頭からボーカルが早口でまくしたてていて、かなり不穏なムードというか、叙述トリックを疑いたくなるかんじがプンプンしてくる。

次の歌詞を、ものすごい速度で喋っているのだ。

「大好物はね、鳥の唐揚げ、さらに言えばうちのおかんが作る鳥のアンかけ、でもどれも勝てないお前にゃ敵わない、お前がおかずならば俺はどんぶりで50杯は軽くご飯おかわりできるよ、だけどもんなこと言うとじゃあやってみてとかってお前は言いだすけどそれはあくまでも例えの話でありまして、だどもやれと言われりゃおいどんも男なわけで富良野は寒いわけでお前が好きなわけでちょびっとでも分かってもらいたいわけでちなみにオカズって変な意味じゃないんで嫌いにならないでね~!」

大丈夫かな、とハラハラしてくる。

ほんとに付き合ってるんだよな、相手も同意してるんだよな、この人が勝手に思い込んでるだけじゃないよな、とすごく不安になる。実は相手の女には別の恋人がいたりしないよなって。

サビでは、「いいんですか、いいんですか、こんなに人を好きになっていいんですか」と歌っていて、私はこういう男は大好きだから、「もちろんいいよ!」と断言してやりたいところなんだが、実際は、

「うーん……いい…のかなあ…?」

ちょっと腰が引けてしまう。一応、相手の女の意見だけは聞いておきたい。最近は法律も厳しくなってきていることだし。

『五月の蝿』では、恋人との別れを歌ってるんだが、恋愛で馬鹿になった反動で、今度は真逆におかしくなっている。「君の腸で縄跳びしたい」みたいなことを言いだしている。「君に出した僕の精液がかわいそうだから返してほしい」とか。

ちょっと正直、これはマジでわからないというか、私はあまり自分の精液の所有権を意識したことがないので、どういう思考回路の結果なのかわからない。しかしそれだけ憎めるのも、たぶん、それだけ愛していたからなんだろう。「国旗を君のあの形にしたい」の裏面が、「僕の精液を返してほしい」なんだと思います。とにかく両極端な人です。すごいです。

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