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大学生にはギリわかって高校生にはギリわからない 2000年代後半の邦楽ロックを振り返るpart1

 大学生と高校生の間になんか南ベトナムと北ベトナムぐらいの差しかないのだけれど、そういった繊細な機微にこそ本質があり、当人たちには重要だったりする。だからベトナム戦争も起きるし、大学生は高校時代を黒歴史と呼んだりする。今もその歴史の真っ最中だというのに。

 前回の記事(2016年版 流行りものから押さえる まず聴くべき邦楽ロックバンド12組 part1)が2010年代前中盤であるまさに今をくくるものだったとして、今回は2005年から2010年にかけて、2000年代後半に活躍していたバンドたちを紹介したい。

 バンドとかをやっているハタチ前後の人ならばわかると思うんだけど、ちょっと年上のバンドの人たちと音楽の話になると必ず名前が出てくるバンドとかって、あるよね。しかし毎回名前を聞くんだけど結局よく知らないし、知ったかぶるのにも限界があるし、正直に「聴いたことないッス」って言うと「あの〇〇ってバンドのやつ、アレも知らないであんな音楽やってんだぜ」と言われたりする。追い込み式漁法か。最近僕はLOSTAGEを知らないって言ったらフリースタイルダンジョンかよってくらい罵られました。親の出身までバカにされた。

 人間、いくら好きだと言えどもその物事の全てを網羅しているわけもなく、意外なところに知不知の穴があったりする。「FF大好き!」『FF6めっちゃいいよね』「6と3だけやったことない…」『6も知らないでFF語ってんじゃねえよダボ』みたいな事態を避けるべく、今回は代表的なバンドを12組集めてみた。

 あと『』のヤツ絶対6と7しかやったことないからな。あまり真に受けるなよみんな。

9mm parabellum bullet

 2000年代後半の話になると絶対話に出てくるのがコレ、9mm parabellum bullet

歌謡曲、はたまたロシア民謡のようにも聞こえる無国籍なメロディーに乗って歌われるサビが強烈なインパクトを残す。アルバムはオリコン初登場2位とスマッシュヒットした。

 言われてみれば確かにロシア民謡っぽい。昨今では珍しくもなくなった"まったくダンスミュージックじゃないダンスビート"を2008年時点でやっている。天才。

 今でこそ聞き覚えのある音楽スタイルだけれど、この「邦楽ロック」という音楽性の現在を決定づけたのは間違いなくヤツらだ。今現在活躍しているバンドがリードギターを「こういうもんだ!」とカン違いしてしまっているのはほとんど滝善充のせい。

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*どういう精神状態だこれ

 冷静になった今聴くと、かなり変な音楽だ。これが大ブームを起こしていたのはなんだか集団催眠にでもかかっていたような気分だが、よくよく考えてみればそもそも流行りなんてものは集団催眠の一種である。あの時俺たちはどうかしてた。

 流行っていたし「必聴」と言われるのもわかる、が今の高校生とかが無理してまで聴くべきバンドでもない気もする。絶対に好き嫌いが分かれる音楽だ。

 ちなみに僕は大好き。ラウドは嫌だけどハードな邦楽が好き、という人は是非1st、2ndまとめて聴いてみてくれ。

  

チャットモンチー

 2000年代を代表するガールズバンド枠といえば、彼女たちになるんじゃないだろうか。

 たしかGO!GO!7188とかシャカラビとかいたけど紅一色ではなかったし、バンド音楽に傾倒する女子たちの憧れといえばチャットモンチーたちだった。

 SHISHAMOの宮崎朝子が「等身大の女子」「飾らない良さ」で人気を得たとしたらば、えっちゃんは「等身大」という部分に加えて「天才性」だった。「ギターって、こうでええんじゃろ」という一見したら雑ににも見えかねないジャストドンピシャのギターワークがあった。ベクトルは違えど女版の長岡亮介がバンドやっている状態だ。

 あと当時のドラム、高橋久美子もよかった。メンバーは3人しかいないし、ギターはペッペコ弾いてんだか弾いてないんだかくらいしか鳴ってないし、というスカスカになりかねないギリギリの構成を成り立たせていたのは謎に手数の多いこのドラムのせい。以降の女性ドラマーは確実の彼女の影響を受けている。

 チャットモンチーのライブが今までで一番かっこよかった、と言う人も少なくない。個人的にはベースのMCが受け付けるかどうかが分かれ目な気がする。

 ドラムは抜けちゃったけど今でも現役バリバリで活動している彼女たち、是非今の女子高生たちにも聴いてもらいたいバンドの一つだ。

 

THE NOVEMBERS

 当時高校生だったというバイアスを抜きにしても、音楽でこんなにショックを受けたことがないというくらい衝撃を受けた一曲。邦楽ロックの薄暗い部分の2000年代後半を担当したのが彼らTHE NOVEMBERS。

 インディーズレーベル各位が

「もうTHE NOVEMBERSみたいなバンド送ってくんな」

 という共通認識を持つくらいに後続のバンドに強烈な影響を残し、今でもART-SCHOOL、Syrup16gと並んでその層に絶大な人気を誇るバンドだ。

 アートスクールから続いたこの系譜、現在後継者待ちの状況。こういうバンドが好きならUKProjectのバンドを聴き漁るときっとあなたの趣味に即したバンドも見つけやすいことだろう。

 初期の「邦楽オルタナ」といった雰囲気から、徐々にドリームポップからシューゲイザー、はたまたAlcest、Alice in Chainsのような「ダーク」としかくくれないような部分まで音楽性を伸ばし、いい意味で日本人離れした音楽を貪欲に作り続ける職人気質なバンドに成長した。

 絶対今の姿をライブで見てほしいバンドの一つだ。絶対何かしらのショックを受けるはず。オススメ。

 

凛として時雨

 今でこそヒゲも生えてバンドマンっぽいルックスになったTKと345だけども、この口下手で垢ぬけないボーカルとベースに陽気で明るいドラムの異質の組み合わせ。全然友達っぽくない。TK、345と来てピエール中野って何だ。hyde、GACKTと来てパンチ佐藤とかルー大柴ぐらいのノリだろ。

 9mmと同時期に彼らの人気が爆発したことで一時期日本は変な状態になっていたと思う。残響系(彼らは残響レコードじゃないのに)なるポストロック/マスロック集団が台頭し日本中のライブハウスが変拍子と高速アルペジオで溢れかえった。あの当時は楽器うまくないとバンドやっちゃいけないぐらいの雰囲気があった覚えがある。

 一つのバンドが流行ると、それに似たバンドがたくさん出てくるんだけれどやっぱり残るのはオリジナル一つだったりするもので、いまだに彼らを模倣しきれたバンドはいない。今の邦楽ロックに確実に影響は与えているのに、彼らと代わるバンドは現れない。

 音楽なんてものは基本的にやりつくされていて新しい発明なんか滅多に生まれない。大体は以前あったものの改善案であったり発展作品だったりするんだけど、これについては完全に突然変異で、無から突然生まれ、ジャンルに名前のつけようもなく、という状態だった。誰も参加してないレースでいきなり優勝してる。

 この当時の雰囲気を味わうのに、#4を残響コンピレーションアルバムと一緒に聴いてみてほしい。あの時この国はおかしかったよ。

 

椿屋四重奏

 顔がかっこよすぎる。この顔面だから許された音楽性、超メジャー志向で顔面◎、UKPという点ではアレキサンドロスと似ているのかもしれない。

 艶ロックなるものを自称し、ちょっと大人、だけど邦楽ロックバンド、みたいな絶妙な音楽を鳴らしていたバンドだ。ちなみに彼ら以外に艶ロックという言葉を使っていたバンドを僕は一つも知らない。

 日本歌謡っぽいちょっぴり和なテイストなメロディと、アプローチもジャンルも選ばない音楽性で、インディーズからの叩き上げにもかかわらず人気昼ドラの主題歌まで歌ったバンドだ。

 UKPっぽいオルタナな音からちょいジャズ調、それに和メロと要素が多すぎるバンドだったのだけれど見事に全部背負い込んで"椿屋四重奏"という独立ジャンルを成立させていた。キャリア終盤にはレゲエやラップにまで手を出していたのに「椿屋っぽいなあ」なんて納得させられてしまう平衡感覚のの高いバンドだった。これもいまだ後釜おらず。

 彼らに関してはもうアルバムどれ聴いても捨て曲がなく、なんだ、全部買えマジで。

 

DOPING PANDA

 マジでこのMV東京03角田に似てる。

 これが2006年、こんなもん今出てきても流行る。まったく古くない。

 KANA-BOON以降ダンスビートなるビートパターンが大ブームを起こし、最近の邦楽はサビで高打率でダンスビートブチ込んでくるんだけれどこの当時すでにダンスしまくってたのが彼ら。ダンスに飽き足らずアナログサンドを排してエレクトロまで肉薄していた。彼らもいまだに根強いファンが多い。たぶん今30才くらいの人たちがジャスト。

 今の邦楽ロックのルーツは絶対ここじゃないけれど、突っ走りすぎて約10年分のブームを先取りしてしまったバンドだ。

 この年代独特の雰囲気を持ちつつまったく古くないダンスロックバンド、メンバー全員ぶっ飛んでるのにまとまっている。今バンド頑張ってる高校生には絶対聴いてみてほしいバンドだ。

 

つづく

 そんなわけで次回はこれよりもうちょっと新しい、2008年から2010年初頭くらいのバンドを6つ紹介します。

 では!

次回:大学生にはギリわかって高校生にはギリわからない 2000年代後半の邦楽ロックを振り返るpart2

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