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残響系?シティポップ?具体的に何を指しているのかわからない音楽系頻出単語 後編

「具体的に何を指しているのかわからない音楽系頻出単語」前編はこちら

オルタナ

 現役女子大生が選ぶ!実際にどんな音楽を指しているのかよくわからない音楽用語、堂々の1位がこちら、オルタナことオルタナティブロック。もう紛らわしいから誰も使わないでほしい。今ここに封印を宣言する。

 さて誰しもがどこかしらでこの言葉を聴いたことがあるこの単語、みなさんも薄々感づいてきてるとは思うが、マジで人によってあらわす範囲が違い過ぎて大変ややこしい言葉である。女子の言う「カワイイ~」と同じくらいよくわからない。

 元々の言葉の意味を辿っていくと、オルタナティブ、すなわち「もう一つの、代替の」という意味でwikipedia先生によると

現在の商業的な音楽や流行音楽とは一線を引き、時代の流れに捕われない普遍的なものを追い求める精神や、前衛的でアンダーグラウンドな精神を持つ音楽シーンのことである。

 マジで何言ってるかわかんない。ハヌマーンの「空間を切り裂くような緊張感を持つ演奏と、普遍的なメロディをハイレベルで融合させた楽曲、そして、瞬時にフロアを支配する存在感と高い演奏技術で構築されるライブパフォーマンスを武器に活動中」みたいなわかんなさがある。

 たぶん意訳すると「流行りもの嫌い」ぐらいの意味だろう。嘘じゃん。日本のバンドの大多数がオルタナだよ。

 じゃあ実際の使われ方はどうだろう、例を挙げよう。

 

 ・ナンバーガールとそのフォロワーバンド

 ・くるり、スーパーカー、ナンバガあたりのバンド

 ・ART-SCHOOL、Syrup16g、BURGER NUDS、THE NOVEMBERSあたりのバンド

 ・ほとんどロキノン系と同じ意味で使うパターン

 ―――洋楽邦楽の壁―――

 ・R.E.M.やソニック・ユースあたりのバンド(人によってはR.E.M.やソニック・ユースは最終的に売れたのでオルタナティブと認めない場合も)

 ・ニルヴァーナ、レディオヘッド、ベックあたりのバンド

 世界は広いようで、人によっては「90年代以降のメタル以外のロック」をすべてオルタナと呼ぶ場合もあるらしい。マジでオルタナティブ。

 あと敢えて”邦楽オルタナ”といった場合にはナンバガとそのフォロワーを指して言うことが多いように感じる。

 既に”オルタナ”の意味が様々に広がってしまった今、この期に及んで「元々のオルタナは~」なんていう議論は不毛だろう。話相手が言う”オルタナ”を、適宜相手に合わせて柔軟に解釈していくのが、この言葉とうまく付き合っていく方法なのではないだろうか。というか、人とうまく付き合っていく方法である。世の語源警察の皆さんには猛省を促したい。

 

残響系


 
 "残響系"、この言葉は今読んでるあなたが想像する残響系が9mmなのか、凛として時雨なのか、65daysofstaticなのか、それによって話がだいぶ変わってくる。

 実態としては大きく分けて2つの用法に分かれるものと思われる。

 

 ・残響レコード所属アーティスト

 ・残響レコード所属アーティストっぽいバンド

 上は簡単だ。所属実態があれば残響系。問題は下、"っぽいバンド"というやつだ。

 例えば凛として時雨とかHaKUとかtricotとか、残響レコードと関わりのないバンドも残響系と呼ぶことがある。そういえば友人に"ヨーロッパ"という言葉を知らないがためにEU圏周辺をひとまとめに"フランス系"と呼んでいたヤツがいた。「あの白人の人ばっかり住んでいるところな」ぐらいの認識だった風に思われる。そういうバイオレンスな言葉として"残響系"。

 むしろ残響レコードの所属アーティストを全部完璧に把握しているヤツなんかほとんど存在しないはずだ。たぶん社長すら把握してないよアレ。だから恐らく「残響レコードっぽいバンド」として使われるシチュエーションの方が多いのではないかと。

 「じゃあ"っぽい"のはどの辺から?」と考えたときに思いつくサウンド的な特徴と言えば「若干難解な傾向にある曲調」「クリーン・クランチくらいで金属的なギターサウンドで演奏するアルペジオ」「変拍子」などが挙げられる。が、言葉で説明されてもピンと来ないだろう。残響コンピレーションアルバムを聴くのが一番早い。買おう。

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 類似語にポストロック/マスロックという言葉があるが、ポストロックと言うとシガーロスからte'までカバーするマジで範囲の広い言葉なので話がさらにややこしいことになる。都合よく解釈するならte'やmudy on the 昨晩みたいなサウンドのバンドが日本ではポストロックとして扱われる傾向にあり、「ポストロック」というと洋楽のそれらまでカバーしてしまうので、ジャパンポストロックの意味で「残響系」と呼ぶ場合もある。

 マスロックの方は数学的なロックというやつだ。

 こういう感じ、拍子やサウンドの絡みが複雑なバンドである。こっちは海外ではプログレに近い言葉として扱われてしまうため、それを避けるために「残響系」である。

 まとめると「邦楽マスロック/ポストロック」という意味で残響系、らしい。わかりにくいね、やっぱりCD聴いてあの時代の空気を肌で感じるしかない。

 

シティポップ

 シティポップとは文字通り、都会的で洗練されたサウンドと、都市生活者の葛藤などを歌ったポップス…と説明ができればラクなのだが、どうもそう簡単にはいかないのがこのシティポップというやつ。

 まずザックリ分けると、昔のシティポップと今のシティポップに分けることができる。ここで同じ名前の別ジャンルの音楽が二つあると思った方がわかりやすい。

 昔の方は、これまたフワっとしてるので厳密に定義するのが難しいが、簡単に言えば大瀧詠一とその仲間たちという認識がラク。大体こんな感じの音楽性。80年代初頭の都会っぽさってこんな感じよ。

 

 そしてもう一つの方、現在の方のシティポップ。こちらの方、先ほどの昔のシティポップから脈々と受け継がれてきたものかというとそうではない。昔の方のシティポップ第一弾は80年代半ばに一度消滅したのだ、そして時は平成になり2010年代になって突如シーンにシティポップと呼ばれる音楽が現れたという具合だ。

 もちろん厳密に言えば、空白の期間の間にシティポップを名乗って活動したミュージシャンもいるし、現在のシティポップの中には昔のシティポップから音楽的形質を受け継いだものもいないくはないのだが、まあ誤差の範囲だろう。ややこしくなるので割愛したい。

 

 現在のシティポップの音楽性としては、はっぴいえんどのリバイバルみたいな音楽から、昔のシティポップを引き継いだ音楽性のバンド、R&Bとかブラックミュージック寄りのもの、そこにインディーロック・ポップまでと非常に雑多な印象。

 しかし、みなさんもご存じの通りそんな音楽的な統一性のないバンド達が一連の大きなムーブメントを成しているのだ。おかしいでしょ?

 

 これと

 

 これ

 同じジャンルなわけないじゃん。なんにも同じじゃない。全部違う。ネバヤンなんか出だし昆布言うてたぞ。

 なのにもかかわらず巷で「シティポップ好きなんだよね~」とメンズノンノをモデルだけ最悪にしたみたいなやつが言ってたりするの、本当におかしいと思っている。流行りに飛びついて形だけでもオシャレでいたい、そういう姿勢を全否定しようとは思わないが「次男坊がボーカルやってるバンド好きなんだよね」みたいなこと言われたらそりゃもうおかしいと思っちゃうよ。僕だってね。

 共通点を無理やり上げるとしたら「オシャレな大人がやってる」という一点。もう正直音楽性よりもファッションで判断した方が早い、古着屋の店員みたいな服着てたらシティポップだ。考えてみてほしい、忘れらんねえよがSuchmosの音楽性だったらどうだろう。なんか全然意味わかんないけど、ちょっと腹が立つでしょ。

 

いかがだっただろうか

 昔からよく言われてきたが、日本の音楽シーンはジャンル分けがしづらい音楽が多いという特徴がある。

 思えば、今一般的に使われている音楽ジャンルの言葉たちは、海外にて海外の音楽を表すために生まれたものである。

 それらの言葉で日本の音楽を分類しようと思ってもどうしても無理が生じてしまう、しかし分類できないと不便。今回の言葉たちはそういった状況から生まれてきたのだろう。

 確かにあいまいな言葉ではあるのだが、自分の好きな音楽を発見するのに、それらを上手に活かすのが賢いと思う。

 ということで長くなってしまったが、今回はこのあたりで。

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