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2016/09/27

記事 邦楽ロック

年上のバンドマンと会話を成り立たせる為の 2000年代前半の邦楽ロック part1

 こんにちは、この世に生を受けて四半世紀、25歳です。

 突然自分の話で悪いんだけど、最近とても年をとったんだなと自覚させられることが多い。

 このサイトで記事を書くにあたって、今の学生は何を考えていてどのバンドが好きなんだろうとか、そういったことを日々調べているのだけれど、僕が中学生高校生のときに聴いていたバンドたちとは丸っきり違うバンドが立ち並んでたりで、知らぬ間に違う国にでも来たのかと毎日ビックリしっぱなしなのである。

 前の記事で書いたけど逆にKEYTALKとかオーラルとかに並んでBUMPとかRADが未だに10代に聴かれてることに驚くくらいだ。あそこだけ完全に老化が停止してる。

 最近話なんだけれど、居酒屋にて若いお母さんに連れられてつまらなそうに3DSいじってる小学生ぐらいの男の子がいたので
「それ妖怪ウォッチだよね。2?」
と話しかけたら
「2じゃなくて元祖&本家だし、これ3。スシ&テンプラ」
と言われました。既視感がある。こういうくだり、小学生の時に親戚のジジイとポケモンで僕もまるっきり同じのやった覚えがある。

 当たり前なんだけど、僕はどうやら年を取ったらしい。

 しかし今みなさんが熱狂しているバンドのみなさんだって、おおよそ25歳前後だ。いくら才能に溢れているとはいえ、みな人の子。一番好きな音楽は彼らが10代の時に我を忘れて聴いていたバンドたちだ。

 彼らが今の流行りものを聴くとしても、それはもちろんどこかに仕事として意識もあるわけで、今がまさに青春である10代が聴くKANA-BOONと、20を過ぎた人たちが聴くKANA-BOONには何らかしら聴こえに違いがあるはずだ。

 そんなバンドマン諸兄に「私ミセスとか超好きで!!」という風に話を振っても「あ、そうなんだ~、いいよね~」ぐらいの反応がギリ。だが逆に「私MSNメッセンジャー超好きで!!」「myspaceでハヌマーンの音源聴いてます!!」みたいな話を振るとメチャメチャ食いつくと思うよ。人の子だもん。

 というわけで、25歳前後のバンドマンたち、音楽好きっぽいお兄さんお姉さんたちが10代のとき熱狂していた、2000年代前半のバンドたちを紹介したい。

ASIAN KUNG-FU GENERATION

 10年タイムスリップしたような錯覚に陥る。BUMP OF CHICKENがおもしろフラッシュ倉庫の匂いなら、これは中忍試験とオートメイルの匂いか。

 アジカンって、今の学生にはどんな風に映っているんだろう。僕らのイメージは「一番普通のバンド」だ。もちろん良い意味で。

 わかる範囲で過去を振り返ってみると、90年代からの邦楽ロックの流れを一回全部良いとこどりしてまとめてしまったような音楽だ。先人の試行錯誤を踏まえてアジカンが一回正解を出してしまった。「答えはこれっすよ」みたいな感じで。スクールオブロックでゴッチ先生とかやってたけど、そういう地平を越えて今のバンドの良い先生のようなイメージだ。

 かといって特徴がないわけでもない。歌メロなんか誰が歌っても「ゴッチやんけ」となってしまう説明不能の後藤正文感があり、リードギターとバッキングの絡み方なんかは20年に及ぶキャリアを越えて彼らの専売特許となっている。真似できてるバンドが未だ出現しない。

 年代的にBUMPと並べられることも多いが、バンプの方が良い意味でラフで愚直。アジカンの方が緻密でインテリなサウンドをしている。まあメガネかけてるし。

 BUMPとアジカンを聴いておくだけでこの年代の空気が随分理解できると思う。未だページの増え続ける教科書みたいなもの。絶対聴いてほしい。

 

ELLEGARDEN

BUMPとアジカンを聴いておくだけでこの年代の空気が随分理解できると思う。

 嘘つきました。エルレを忘れるな。

 キュウソネコカミのサブカル女子で「ほーそみーたけーし好きー!」ってあるじゃん。これです。ELLEGARDENのボーカリスト細美武士のことです。このバンド名、アジア一かっこよくない?

「HIATUSが…」「MONOEYESが…」と、細美武士が一挙手一投足するたびに一部の音楽ファンがザワつくのは、彼ら全員の血潮にどうしようもないほどELLEGARDENが刻み込まれているからだ。

 時代性も違うから、正確なたとえではないのは重々承知だが、今の学生がワンオクとカナブーンで、ラウド側かオルタナ側かその後の音楽嗜好に大きな影響を及ぼすように、僕の時はエルレか、アジカンバンプか、みたいな二分があった。僕は正直、アジカンだった。なんかエルレはかっこ良すぎて「僕みたいなナードが聴いたら誰かに怒られるのでは」と手を出せなかった覚えがある。

 パンク、ラウド、メロコア、これらを乱暴にまとめてラウド枠。この枠組みに組する人々は間違いなくエルレを一回通っている。

 その方面の心のアイドル。それがELLEGARDEN、そして細美武士。あと思ったんだけどたぶん今のサブカル女子って別にエルレ好きじゃないよね。くるり岸田繁とかじゃ。エルレ好きだったお姉さんとか社会に順応してクラブ遊びとかしてたりするよね。

 ラウド側を自負する10代には、マストだ。聴いてくれ。

 

GOING STEADY

 アジカンに、エルレに、人生を壊された。そういう報告は聞かないが、ゴイステ、銀杏Boyz、峯田には明確に「人生を台無しにされました」という証言を受けるケースがままある。コアファンの数で言えば上記のバンドに一切の引けを取らない奇跡のバンドだ。

 そろそろ絶滅しかかっているが、青春パンクというくくりのバンドだ。今で言うと、忘れらんねえよが後継になるのか。

 10代の、中高生時代の、ダサくて、栗の花くさくて、情けない劣情を赤裸々に等身大でぶつけにくるのが彼らのスタイルで、ゴイステ銀杏から「この感じ、アリなのか!!」と勘違いして、30近くなった今も未だライブハウスで「バンドやってるけど売れない俺たち」みたいなメタネタを平日のガラガラのブッキングで繰り返すバンド、マジで全国にパンダの総数よりいる。違うんだよ。峯田は何だかんだ突き抜けててめちゃくちゃカッコイイから成り立っているんだよ。

 パンクという意味ではブルーハーツの発展、という風にいる人もいるが、歌っている内容の向きが大きく違う。そしてそこがゴイステの核の部分だ。

 たぶん、今でもこの身も蓋もない全力な男子感に共感を受ける若者はいるはず、忘れらんねえよよりもずっとずっと青いこの感じ、好きな人は人生を破綻させる覚悟で聴いてみたらいかがだろう。

 

Art-School

 狂信者の多さは抜群、ゴイステとは違うベクトルで宗教状態にあるのがこのバンド。どちらかと言われれば僕は圧倒的に木下教の信徒。恥ずかしながらギターにはコーラスをかけたがる。そういう人間に育ったのは間違いなくArt-Schoolのせい。

「Art-Schoolなんか洋楽のパクりじゃん」

 そういう意見、散見されるが待ってほしい。パクって形になってるのがすごいのでは。あの時代日本にまだなかった洋楽オルタナの音像を、国内で再現できたのがArt-Schoolだけだったし、木下のアイコン性、歌詞性がバッチリハマったからこそ国内評を得たのだ。考えてみてほしい。今国内に流通していない音楽スタイルを海外から輸入してきたとして、君それで売れる…?無理くない…?

 アートスクールが呼び込んだオルタナの風は確実に後進に影響を及ぼしている。今のアンニュイなバンドでアートを参考にしてないバンド、いますか。

 そんなわけで愛されすぎるこのバンド。ファンの愛情というのは行き過ぎると当人たちをネタにしだしたりする傾向にある。五十嵐隆のギターソロを笑顔で見れるようになってからが真のファン、みたいな風潮まである。アートスクールも同じで、愛されすぎてるから故にファンからネタにされまくっている。木下のコラ画像を見るたびに深い慈愛を感じるのだ。

 今の根暗な学生にとってのアイコンとなるバンドって誰だろう。いない気がする。根が暗い、という自覚がある人はCDを手に取ってみてはいかがだろうか。

 

BEAT CRUSADERS

 わかりますでしょうか、このアホな感じ。これが当時バカウケ。ちょっと音楽が好きな子たちは口々にビークルを話題にしていた。

 元祖、というわけではないが多くの人々の記憶に「最古の覆面バンド」として記録されている彼ら。なぜか顔面に自分たちの顔のデジタルプリントを乗せて写真に写っていた。その姿も印象的でよかったのかもしれない。今はもう能面とかオオカミとかエビとか、行くところまで行ってしまったせいでこれでは逆にインパクトがないかもしれないが、当時の僕らの間には比類なき「なんだこれ」感があったのだ。

 顔を隠しているのになぜか音楽性はザ!ライブバンド!といった感じ。バカになって盛り上がろうぜ!というバンドの根の部分を地で行く音楽性だった。

 なんかこう、洋楽への憧れと、メンズ特有の垢ぬけない感じを表現して大成したのは彼らが最後だったんじゃないだろうか。今って別に、洋楽への憧れってないし。

 この匂い、今はどこに行っても嗅げない匂いだ。ちょっとこっちに来て嗅いでみてくれよ。

 

Part2に続く

 今回は有名どころの終始したので、次回はもうちょっと根深いところを5バンドほど紹介したいと思う。

 それではまた次の記事で!

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