キャッチーとはなんぞや 日村 勇紀
絶対いつかは斬ろうと思っていた。
バナナマン日村こと日村 勇紀(ひむら ゆうき)は日本のお笑い芸人である。
テレビ東京 「ゴッドタン」の企画である『芸人マジ歌選手権』で放送された彼の楽曲が私の脳を汚染してはや数年が経つ。
その映像を見た瞬間から、私の彼をアーティストだと思っている。
何かを思い出したように彼の楽曲を聴いてしまう。
キャッチーとはなんぞや。
キャッチー
楽曲を聴く前にちまたで言われているキャッチーという言葉の定義を確認しておきたい。
受けそうであるさま。人気になりやすいさま。旋律が覚えやすいさま。
さぁ、聴こうか。動画がこれしかないので我慢してくれ。
先に言っておくが、この曲プログレである。
ヒム子の恋する独裁国家/バナナマン日村
一発で印象に残るだろう。モンス モンモン モンスモン♪
間違いなくキャッチーである。
この企画、牛乳を口に含み、全員噴出したら演奏中断するというものである。
私は、この楽曲を聴いた瞬間から感心しきっていた。牛乳を吐き出すなんて考えられない。
作詞作曲が彼になっているが、編曲は相当な手練だろう。
楽曲について真剣に考えていきたい。
徹底解剖
まず最初のモンスモンモンに入る前のスネアの音の打撃音を強調し、それを見計らったように太いベースが入ってくる。
モンスモンモンに気をとられてはいけない。裏では細かいシンセが鳴っている。ベースが入ってきたことを強調するため、あくまで雰囲気を出す程度にうっすら鳴っている。
メロディのモンスモンモンも、キャッチーを生み出す繰り返しの手法が使われていることを見逃してはならない。
Uh~モンスターのあと、イントロ。ベースも動きを増し、シンセ2本のツインリードのイメージだろう。
一本のリードが切れるタイミングでもう一本が主張してくる。リードシンセの押したり引いたりが美しい。ベースとの絡みも絶妙である。
Aメロに入り、笛のように音が切れるシンセが消える。この時点でこちらがリードシンセだったであろうことが推測できる。
Bメロに入る前、一瞬ベースが消え、もう一度Bメロ頭のインパクトを出そうとしている。
Bメロは、我々地下室TIMESが卑怯ドラムと呼んでいるダンスビートをふんだんに使用している。
ベースは裏を強調し、Aメロと比べ疾走感を感じる。
そして問題のパートに入る前、歪んだギターのグリッサンドが左から聴こえないだろうか?
この楽曲の売りポイントである『モンスターの叫び』にナチュラルに入れるようにするための仕掛けだろう。凝っている。
ハーフに落ちたところのベース二回し目もBメロに戻りやすくするため、切り返しの要素が入っている。
Bメロ後半、ベース音がどんどん上がっていき、サビに入る勢いを作り出している。
そこで、裏切りである。
軍歌調になる。売りポイントである。
ボーカルの性質上、ここで思いっきり低音を出すため、ここまで前線を引っ張ってきたベースは影を潜めていることにも注目してほしい。
そこから無理やりのカウントで戻ってくる。編曲者は名前が出ていないので確認しようがないが、前山田 健一のやりそうな手法である。
本当のサビがここからしれっと登場する。カウントで仕切りなおしてサビなんて展開、聴いたことがない。
サビの疾走感を最大にまで上げるため聴覚上、上のほうで、そのすごく音の細かいシンセがなっている。
ドラムはもちろん卑怯ドラムだ。
ラッセラーに入る前も、右側からかわいい音のシンセが入る。かわいいパートを無意識に予測するようにするミスリード的存在であろう。
音楽的なフェイクという言葉と使い方は違うが、『フェイク』として考えたい。
ラッセラーの間等、こういうボーカルが映えるところはベースが引っ込んでいる。
ピーピーピーピーという笛もいい味を出している。
ラッセラーとええじゃないかのリズムには三連の中抜き、所謂シャッフルが使われている、タッカタッカというリズムだ。
リズムチェンジもキャッチーさを出すのに必要な要素であると私は思う。
そのまま、音楽的な『フェイク』的な要素が入っていき、ばしっと決め、締める。
恐ろしい楽曲である。たぶん私も気づいていない仕掛けがたくさん施されているのであろう。
これが本当のファッションモンスターだ。
怪物じみた楽曲だと思う。
私は夜中に何をしているのだろうか
本当に、何をしているんだろうか。
モンス モンモン モンスモン♪