あなたのピントに合うのか? Out Of Focus
眠れない夜。何度も瞼を閉じ、幾ら時を待っていても、朝は中々訪れず、夢の形は頭の中で成すこともないまま、目が覚めたらいつも、暗闇と部屋の天井がそこにある。
明日は学校、仕事、友達と遊ぶ等・・・予定があるのにこんな瞬間が来たら、厄介極まりない。何とかして「寝るんだ!寝るんだっ!!」と自分に言い聞かせて、ベッドの上で仰向けに・うつ伏せに体の向きを変えるが、余計・・・眠れない!もう、寝ることは諦めた方が楽だろう。逆に好きなことして時間をつぶすことにしよう。
そんな悶々とする深夜に、このような音楽はどうだろうか?
名は体を表す
Out Of Focusは、1970年代に活動していたドイツのバンド。バンド名を日本語に翻訳すると、「ピンボケ、焦点が合ってない」になる。それでは、彼らの音楽を耳にしてみよう。
1stアルバム『Wake Up !』より。始まりは「ベンベンベン♪」といった普通のグルーブなのに、フルートとオルガンが鳴り出した途端、一気に怪しくなる。そこから、乗り掛かってくるボーカルは、まるでカルト宗教の信者が祈りを唱えているかのようだ。中盤は今まで地味だったギターが活躍し、サックスの勢いも増して曲のカオス感が増していく。
聴いた後、「?」が頭に出てきたリスナーが多いだろう。まさにOut Of Focus「ピンボケ」、名は体を表すと言って良い音楽性だ。活動時にリリースしたフルアルバム三枚は約10分の曲が必ず複数入っており、中々とっつき辛さはある。しかし、このよう一聴・一見分からない音楽なのに、幾度か作品がリマスター及び再発されており、ある程度高い評価をもらっているのだ。それは何故だろうか?
というわけで、このバンドの魅力を見ていこう。
バンドの原形を確かめる
2ndアルバム『Out Of Focus』より。こちらは先程と違って、比較的アグレッシブな曲だ。疾走するオルガン、序盤で吐き捨てるように消えていくボーカルから繋いでいくサックス、3分11秒辺りから入るジャズ要素のあるインプロビゼーション。これぞ、Out Of Focus流のロックミュージックだ。
曲を通して伝わるおどろおどろしい奇妙な雰囲気は相変わらずだが、二曲続けて見れば、少しはこのバンドの輪郭やイメージが浮き彫りになってきたのではないか?
それでは、次に、Out Of Focusと比較的近いイメージのバンドを紹介しよう。
まずは邦ロックで、ゆらゆら帝国。Out Of Focusの曲に伝わるおどろおどろしさから、このバンドを思い浮かべた人は多いのではないだろうか?双方から見出せるウニョウニョ・ジワジワと来るグルーブを聴くと、どこか人を落ち着かせない感じだ。
続いて米国60年代ロックの寵児、The Doors。曲全体を彩る怪しげなオルガンの音や落ち着きながらも狂気を思わせるボーカル。上記のゆらゆら帝国よりはこちらの方が分かりやすいかもしれない。
Out Of Focus,ゆらゆら帝国,The Doors,この三組はロックバンドとして、いわゆる「サイケデリックロック」のジャンルに属している。麻薬の幻覚で見た光景を表現したような音楽と言われている。
麻薬を基にしている様に、最初はそれほどでなくても後から後から思わず聴きたくなる中毒性のある音楽だ。是非、興味を持ったら、手を出してみよう。大丈夫!麻薬と違って、音楽を聴く自体は、人に迷惑を掛けなければ、犯罪ではないっ!!(断言)
最後に
3rd及びラストアルバム『Four Letter Monday Afternoon』(二枚組仕様!)より。こちらは彼らのイメージと大分異なるカントリー調の曲だ。
彼らはこのアルバム以降、レコード会社にシングルでヒットになるような曲を出せと迫られ反発し、自分達からレコード会社を去った後は、活動が縮小し、やがて自然消滅してしまったとのことだ。
しかし、彼らが残した音楽は、年々評価が上がっており、今の時代では決して、Out Of Focus(ピンボケ)ではなく、むしろ、In Clear Focus(ピッタリ)なのだ。