とうとう"憧れのあの人たち"になった。Bruno Mars 最新アルバム「24K Magic」レビュー
そもそも私はBruno Marsのことが好きではなかった。
というのも出てきた当初は「ま〜た結婚生活に夢見すぎ理想高すぎ現実見てない人ジョン・レノン系クラスの女子喜ばし"洋楽"が出てきたか」あるいは「白馬の王子様が迎えに来てくれるからアタイいつまでも待ってるといいながら気がつけばアラフォーおばさんの妄想手助け"洋楽"か」ぐらいにしか思ってなかった。いや、ほんと各所に謝りたい。ほんとごめん、Bruno先輩。
聞いてくれ、それには理由があるのだ。Bruno Marsという名前が日本で初めてパワープッシュされたとき、曲は確かこれだったはず。
Bruno Mars - Just The Way You Are
なにが「'Cause girl you're amazing,just the way you are.(だって君は驚くほどに美しい、そのままでいて欲しいんだ)」だよと。
バレンタインの日も、卒業式の日も、移動は常にスローモーションに動いて"話しかける隙"を十分に作りながらも、何もなく泣きながら帰宅しPC画面を見ながら別の場所からも涙を流した少年には何も響かんのだよ。そんなんプレイヤーに触れた時点で腹蹴られて終わりだわ。
そして次に、Bruno Marsという名前とは別に耳に入ってきたのがこの曲。
Bruno Mars - Marry You
フラッシュモブ? っていうなんか、あ、心が痛い。なんかこう、ウェイウェイしてる感じがして心が痛い。
愛の告白=フラッシュモブ=Bruno Marsみたいな流れがあって、ニュースとかワイドショーで何回もこの曲を聴いた。
あぁBruno Marsとはそっちサイド向けの人なのねと、ダークサイドの人間としては無限のパワーを喰らえ〜と吹っ飛ばしたくなっていたんだよ。ごめんね、マスター・ウィンドゥ。
今回はBruno Marsの新しいアルバム「24K Magic」についての記事です
そんなこんなで、Bruno Marsは聴かないように暮らしてきたんだけど、なんか古臭い音楽が流れてくるな〜って。これです。
Bruno Mars - Treasure
いやいや上記の2曲と全然違うじゃないっすか。どうなってんのこのディスコ感! 70年代後半から80年代前半にかけての音楽性!
そしてMVは思いっきりEarth,Wind & Fireね。
Earth,Wind & Fire - Let's Groove
違いはBruno Marsの頭髪が立派だってことぐらい。(モーリス・ホワイトは2016年2月に亡くなった。素晴らしい音楽をありがとう)
このTreasureを皮切りにBruno Marsは若い世代だけでなく大人も虜になるような楽曲を出してきた。メインストリームとはまた別の、ディスコリバイバルと言われる流れに乗ることとなる。
この時点で私は反省した。Bruno Marsは全て作戦としてJust The Way You Areを歌い始めたのだ、本当の狙いは別のところにあったのだと。
2014年にはディスコサウンドからより現代に近づいたサウンドを持ってきた。
Mark Ronson - Uptown Funk ft. Bruno Mars
初めて聴いた時に爆笑したのを覚えてる。だってこんなの現代でやるなんてボケとしか思えないもの! 爆笑して涙を流した、今これが売れるなんてなんて嬉しいんだと。
ディスコリバイバルの流れからその後のP-Funkの流れをも最注目させるきっかけを作った名曲なのに、なぜか訴えられクレジットを入れる始末になったしまったのは悲しい話です。リスペクトでありオマージュだろう、しかもThe Gap Bandに似てるだなんて。
The Gap Band - Oops Upside Your Head
言わんとすることはわかるが、そこをアウトにしたら今後訴えられることを恐れて誰も曲なんて作らないぞと言いたくなるね。Mark Ronsonも参考にしたのだろうが、この曲だけでないんだから認めなくても。
というかサウンドアプローチはThe Gap BandよりZappだろ。
Zapp & Roger - So Ruff So Tuff
Treasureによって古くさディスコサウンドを現代に甦らせ、続いてディスコサウンドの次に流行ったポストP-Funkを若者には新鮮さを、大人には懐かしさを与えた。
こうやって言うとBruno Marsは神のよう、いやむしろ世界の終焉を目論む悪人なのかもしれない。私たちは地球の走馬灯を見ているのか、触れない恐竜は見ていないけれども……。
なら次にBruno Marsが新曲を出す時には世界は核爆弾の光に包まれ、光の中にPC画面を眺めながら涙と涙を流す自分を見るはずなのだが、どうやらまだ現代まで来ていないらしい。
本題です。Bruno Marsの新しいアルバム「24K Magic」について
アルバムリリース前に、先行して表題曲である「24K Magic」が公開されていた。
Bruno Mars - 24K Magic
Electro FunkからG-Funkの流れ、Bruno Mars今度は90年代あたりを攻めだしたようです。
内容は金さえあれば何でもできるからネーチャン寄って来なよってチャラいもの。Treasureで君は宝物って口説いたりUptown Funkじゃ俺のモノ見てよ超ホットって言ってたり。一途にMarry you言ってたBrunoはどこにもいないね、チキチキBruno Mas七変化ですよ。千円札が足りません。
彼はまさに七変化。表題曲から察するにアルバム通して90年代周辺を漁るのだろうと思っていたのだが、蓋を開けたら全然違った。
G-Funkに加え70年代泥臭Funkやエレピ推しのシンガーソングライター期、New Jack Swingにその後の90年代R&Bなどごちゃ混ぜ。爆笑です。Bruno Marsは時を繰り返しているのか、9部のボスのスタンド名はブルーノマーズで決まりでしょ荒木先生。
アルバム「24K Magic」内の楽曲はyoutube公式チャンネルにて"ジョジョ"に公開されている模様。現時点で公開しているものを紹介したいと思って記事を書き始めたんだよね。ここからはポンポンいきます、聴きくらべしてね。
Bruno Mars - Versace on The Floor
2016年11月にリリースの出来立てホヤホヤです! でこれ。もうなんか笑っちゃいません?
シンガーソングライター期というと70年代初期ような楽曲を指すけど、これはBoz ScaggsやBobby Caldwellを代表とするBlue Eyed Soulなアプローチ。シンガーソングライター期、幅広いよね。
Boz Scaggs - Heart Of Mine
喉を狭め苦しそうに思える歌い方にはStevie Wonder、がなるような歌い方にMichael Jacksonを感じる。例えがすべてビッグネームだが、そこが実は重要になってくる。
Bruno Mars - Perm
はい、完全にJB。ソウル・ファンクの帝王James Brownにそっくりですね、爆笑。在日ファンクもびっくり
James Brown - Super Bad ( parts 1, 2, & 3 )
JBをオマージュしつつ、JBの楽曲をサンプリングして楽曲を生み出してきた90年代のHip Hopにも通づるものがあると感じた。今James Brownが生きてたら何というのか気になる、好むか拒むか?
Bruno Mars - That's What I Like
この曲は比較的今風な感じがしましたね。というか80年代後半から現代にかけてR&Bでくくられる音楽にずっと流れているような感じがする。
というのもBlue Eyed Soul系を取り入れたHip Hopが流行したのち、ラップではなく歌ものを更に乗っける、Soul→Hip Hop→Soulみたいな流れができているので楽曲面のみだと時代が幅広くなる。
Mary J. Blige - Be Without You
もっとも近いものが思いつかなかったので、とりあえずQueen of Hip Hop Soul、Mary J. Blige貼っときます。
Hip Hop系のトラックメイカーがプロデューサーで、シンガーが歌っていたらここに入る。
Bruno Mars - Chunky
ここに来てディスコリバイバルな流れに戻った楽曲。最近ではTuxedoがやっているディスコブギーなサウンドを今風にやり直したようなものだと考えていいだろう。
Cameo - Back And Forth
残響音多めでシンセメロも加え、ディスコなんだけど古すぎずややセクシャル。80年代のこの感じがプンプンだ。
Bruno Mars - Finesse
おぉ最高、24K Magic内でイチオシ! 80年代後半から90年初期にあったNew Jack Swingだ。聴いているだけで肩パットが膨れてきそう。もっとも爆笑した曲。
Bobby Brown - Every Little Step
New Jack Swingとなったら絶対に名前が出てくるのでBobby Brownを貼っておくが、こっちの方が近いかもって曲をもう1つ。
RUN-DMC - Pause
サウンドアプローチとしてはこっちの方が近いかと思う。結局やってることは一緒なんだけどね!
全9曲と少ないな大丈夫かBruno Mars疲れてるか? と心配しながら聴いてみたのだが、ボリューム満点お腹いっぱいです。大人から子供まで大爆笑、でもなぜか最後は大号泣なんて三谷幸喜映画の広告に使われそうな言葉を持ってきたくなるようなアルバムに仕上がっている。
Bruno Marsはやりたいことをやった
Bruno Marsは1985年生まれ現在31歳。Treasureから始まる古臭い音楽の焼き直しは彼にとってドンピシャではない。彼にとってドンピシャは2000年代のはず。
しかし彼は古臭を好んでやっている。Just The Way You Areを期待してアルバムを手に取ったファンはがっかりしているのかもしれないが、彼が本当にやりたかったのはこの24K Magicなのだと私は思う。
90年代2000年代と友達と共に通過しつつも親世代の音楽にドップリはまり、どうすれば現代の音楽に70年代からの流れを潜り込ませることができるのか考えたのだ。その結果がこのアルバムなんだよ。
過去・現在のビッグネームたちの歌い方をモノマネし続け、新しい何か(メインストリームにい続けること)ではなく"憧れのあの人"になることを選んだ。
多くのミュージシャンの理想形が今のBruno Marsだ、完璧に夢を叶えてくれた。
若者に新しさを、大人に懐かしさを、業界に金を。そして自分自身の欲求をも満たす完璧な存在。Bruno Marsはスター・チャイルドにでもなったのかな? それとも5次元にいってモールス信号を打ったのか?
時代を飛び越えて輝くBruno Marsのアルバム「24K Magic」を、ぜひ聴いてみてほしい。以上!