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2016/07/16

記事 邦楽ロック

フレデリックのことオドループさんって呼ぶな

 憶えがある。大昔、僕がまだ小学生になるからないかぐらいの時にもこの現象はあったのだ。

 たしかその時はポルノグラフィティが出始めの時で、メジャーデビュー一発目の「アポロ」が空前の場外ホームランを打ち上げ一躍大スターに上り詰めた、そんな世紀末ムード漂う90年代後半。当時、見慣れない横文字英単語のバンド名は世間にはまだ難しかったのか「アポロ」とか「アポロの人」とか、ひどいケースになると「アポログラフィティ」なんていう風に誤認している人が巷に溢れかえっていた。逆にそうやって覚えるほうが難しいだろ。

 先月15日、メジャー1stシングル「オンリーワンダー」をリリースしたこのバンド、フレデリックにも近しい現象が起こっている。

「そういえば新曲出してたね」
という切り出しで始まったある日の会話だったが、口を開き始めた当人がなかなか肝心のバンド名を思い出さない。しばらくうーんうーんと唸り出てきたヒントが
「あの、踊ってない夜が気に入らない人」
フレデリックです、それ。オイオイ、とんだお祭り野郎みたいになっちまったな。

 オドループは、ヒットソングという観点で見れば稀に見る傑作だった。フレデリックをスターにするには十分すぎる一発だった。

 ケチのつけようが、ない。聴いてると脳が溶ける感じがする。

 しかし彼らの本質は、オドループではない。今回の本題はこれである。

 オドループばっか聴いてフレデリックを知った気になるなんて、試食コーナーに白米持参してくようなもんだからな。育ち悪いんかお前は。

 今回は親の代わりに俺が説教してやるから座して訊け。フレデリックは、すげえバンドだぞ。

 実際、フレデリックと言えば、このイメージだった。

 コケティッシュな音で演奏はファンキー、歌詞は意味不明、柄シャツ、イケメン、双子。たぶんこれで合ってると思う。

 いつかこのサイトで、ニューヨーク在住音楽好きの美人のお姉さんに邦楽を聴かせるって企画をやった。たしかセカオワにドン引きして、ゆらゆら帝国を一番評価してた憶えがある。

 その観点で言うと、次回は是非フレデリックをメリケンどもに聴かせてやりたい。特にインディー盤。絶対ウケるはずだ。日本独自、というか彼ら独自の替えの効かない音楽だ。

 しかし、逆に言えば、この曲を聴いて「いいな!」ってなる中高生はとても少ない。事実オドループのリリースまで彼らの知名度は本当にまだまだであった。ファンも、これほどまで若くなかった。

 だからば彼らはオドループを作った。わざわざリード曲にし、アルバム名もoddloop。

 言うなればフレデリックのわかり易い部分を集結した一曲だった。コケティッシュ、語感重視、意味不明詩、謎シンセ。そういう部分を残して一番わかりやすくわかりやすく彼らの良さを凝縮した曲だったのだ。

 しかしなんだ、彼らの想定よりも、オドループに惹かれてやってきたファンは浅薄だったようで、オドループ以外の楽曲に対して「これじゃない」と突っぱねる人も少なくなかった。オドループに留まったっきり、そこからおりてこなかったのだ。アベノミクス。

 

 で、フレデリックがどうしたかと言うと、彼らはオドループから新しい"らしさ"を見いだしてその部分もバンドの根幹部として走り出した。インディーの妙ちくりんな彼ららしさも残しつつ、邦楽ダンスロックの中に自分たちのポジションを作った。そう思えばオワラセナイトはとっても良いアルバムだ。愛の迷惑なんかMV作らないのがもったいないくらいだよ。

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 具体的に言えば、ギターの役割が他のバンドからはちょっと違う部分にある。クリーントーンのリードにこだわって、足りない部分はシンセで補強をする。赤頭、本当に冴えたギタリストである。ピッキングのフォームが行儀良い。しっかりとした家庭環境に育った感じがある。最近のバンドのギタリストはみんなアホみたいに上手いが、ギターを弾く人ならば是非彼のギターなんかを真似したらきっとすぐに上手になれるだろう。歌を邪魔せず欲しいところに欲しい分きっかり入れてくれるポップソングに於いて理想のギターよ。
 
 

 で、先日リリースのオンリーワンダー。なんか、顔若返ったなこの人。サウンドクルージングの時に横すれ違ったんだけど全く誰だかわからなかった。

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 文句をつけるとしたら、ダンスが覚えづらい。もっかいアリスムカイデ呼べ。あの子にはもう一生踊らせとこう。

 フレデリックの名前を知ってやって来たお客さんを、しっかりちゃんと逃さない為にキャッチーという部分に特化したナイスな曲を提供してくれる。本当に優れたバンドだ。こんな手のかからないバンドを抱えてる所属事務所がうらやましい。

 冒頭の話に戻れば、ポルノグラフィティはアポロの後もヒトリノ夜、ミュージックアワー、サウダージ、アゲハ蝶、とバカスカホームランを打ち続けた。

 フレデリックは今後もホームランを打ち続けられるのか。いや、打ちそうだよな。これまでの挙動全部頭いいもんな。

 良さが伝わったなら是非チケット買って、意外にアツすぎるMCを聴きに行ってくれ。「かっこいい!」はYouTubeのコメント欄じゃなくて、本人に言えよ。

 それではまた次の記事で。

参考:フレデリックのオドループの中毒性がもうほとんど電子ドラッグの域。

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