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2017/06/06

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BPM15Qの「はくちゅーむ」はアイドルソングの最凶の形なのでは

 今日は珍しく、見ての通りのアイドルについてなんだけれども、正直な話、わたくしアイドルに詳しくないのである。いくらなんでも数が多すぎる。島根の人口よりアイドルの方が多いだろ。

 音楽としての良し悪しはマチマチなんてのはジャンルも同じことなので、アイドルの音楽は芸術として劣っている!なんてことを言う気は無いんだけど、好き嫌いで言えば、俺はそもそも女性ボーカルが苦手。特にアイドル的な歌い方っていうのはなんかちょっと未だに慣れない。媚びるんじゃねえ、俺に。人間に。世間に。もっと素でぶつかってこい女。

 いつか、ロック寄りの音楽を聴かない友人が
「ロックの人ってあんまりビブラートかけたりしないよね、あれが苦手」
 と言っていた。そう思えば、歌唱法なんてのはやっぱり好みでしかないらしい。ずっと聴き続ければもしかしたら慣れるのかもしれない。V系の歌い方だって、歌い手の歌い方だって、たぶんそう。

 苦手が少ない人は幅広い娯楽が楽しめるからうらやましいなあ。早くアイドルに全財産貢いで死んでくれねえかな。

 だがさっき書いた通り、アイドルは今爆発的な数で増え続けている。特有のコモンルールもあり、音楽ジャンルとして無視できない。面白いジャンルだ。だからこそ苦手でも聴いてみる必要があるな、と思ったのだ。

 で、そんな俺の目の前に流れ着いてきた一曲がこれ、BPM15Qの「はくちゅーむ」よ。

 上では一応建前としてリベラルっぽいこと言ってるけど、まあ、やっぱり苦手はもんは苦手で、心のどこかでは

「アイドルソングはバンドマン崩れのオッサンが曲つくってたりして古くっさいメロコアだったりするんだよな…」
「元気の押しつけが強烈すぎて耳からオロナミンC流し込まされてるみたいな受け入れがたさが…」
「ていうか"苺りなはむ"、って何だよ。どうせ本名は竹本洋子とかだろ」
 
 と聴く前からポジティブなポーズがとれない。俺は俺と交際も交遊もできない美少女なんか大嫌いだ。絵に描いた餅だ。どうせ食べられないなら見せるな。

 まさに"地下"アイドルな二人。俺と同じく苦手とする人ならばわかってくれると思う、ユニットのロゴからアートワークまでまるっきり全部地下。俺たちのアレルギー物質の詰め合わせのようなコンテンツだ。キッツイ。全身かゆい。聴いたらアナフィラキシーで死ぬかもしれん。が、しっかりアイドルを批判するには、しっかりアイドルを知らねば。もちろん彼女らも通らねばならん。と鉄の覚悟で聴いた。

 

 バカクソかっけえじゃん

 そこらへんのバンドよりも遥かにオルタナ。やり過ぎの向こう側。

 音楽なんてのはそもそも聴いた奴の耳をどれだけの衝撃で殴れるかの勝負なのである。特に、流通の行き渡りすぎた現代においてはそれが顕著。

 その点で言えばこのアイドル臭さ100%のトータルデザインに、バスとバカシンセとBPMの暴力のようなトランスサウンドはその方面の最凶。鼓膜への殺意がヤバい。

 

 ていうか、アクモンだろこれ。


〜0:50くらいから

 2000年代初頭、10代の彼らアークティックモンキーズが全世界を震撼させて以来、日本でもこのサウンドを我が物にしようと、プロアマ問わずあらゆるバンドマンたちがこぞって取り入れようとしてきたがどれも失敗に終わっていた。

 そんなアークティックモンキーズのアイドルソング解釈がこれ。リフの重さで踊らせる音楽。発想はそこにある。こんな可愛い女の子二人並べておいて後ろでは2000'sのリバイバル。めちゃくちゃロックンロール。曲作ってる奴あたまヤッバい。

 あとだ、アイドル音楽の肝要は「てんてれてんてんてん」ってやつにあると思っている。いや、文字で書いても無理だなこれ。ちょっとまってね、これこれ。

「マハリークマハーリヤ ヤンバラヤンヤンヤン

のところだ。わかるよね。

 はくちゅーむで言うところの「ぐるぐる まわるまわる」とかの部分とかわかりやすいと思う。

 

 8・16・16・8で回転するこのメロディ。どうやらこれが日本らしさを演出するらしい。めちゃくちゃダサい。

 しかし本来はこのダサさ故に国内では忌避されるこのメロディだが、アイドル業界はあえてこれを乱用。特にサブカル地下アイドルに顕著だ。電波ソング感という奴である。これを高速BPMの上に乗せてドギツイシンセでブン回すというのが、多分アイドルソングの強烈さに一役買っている。

 はくちゅーむのリフ回しはアクモン×電波ソング。黒人さんに相撲やらせるようなもんだよ。

 

 技術革新が真っ先に反映されるジャンルだからか、最近の打ち込み音楽は本当にプロアマの境界がなくなってきている。ボトムの音がクソ重い。今音楽業界で一番派手な音を鳴らしているのは、彼女たちのようなアイドルユニットだったりする。絶対海外にもウケる。

 これ、どんな人たちが聴いているんだろう。こんなの聴いてたらもう他の音楽に帰って来れない気がする。

 久々に心躍る一発に出くわしてしまった。もしかしたらこのままアイドル沼に飲み込まれてしまうかもしれない。

 そのときはお前らも道連れだ。一緒にピンクの苺ミルク沼に沈もう。

 

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