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2015/09/07

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日本でCDを売る前にQQIQを知るべき!

神聖かまってちゃんのようにネットを通して広まっていくバンドは現代において少なくはない。
そんな中、Twitterで拡散されていった「TWIMY」というバンドをあなたはご存知だろうか。

TWIMY・・・世界初のTwitter炎上バンド。女子中学生3人組で構成される。

そんなバンドが紆余曲折あり現在ではQQIQという名前で活動している。
彼らの注目すべき点は「音源の売り出しかた」だ。
彼らのネットならではの売り込み方に、音楽をやっている人もそうでない人も注目してみるべきではなかろうか。

まずTWIMYってなによ

QQIQの解説をするならまず前身バンド、TWIMYの解説をしなければなるまい。長くなるが許して欲しい。

TWIMYは突如Twitterに現れた女子中学生のスリーピースバンド。
クソ生意気で不登校な川井彩織(ボーカル)、無口で皮肉屋の橘香深(ベース)、委員長キャラの塩沢哲子(ドラム)の3人から成る。
彼女たちが一つのPVをYouTubeに公開したことから始まった。


TWIMY - People's Life

 
TwitterやYouTubeのコメント上では「これ女子中学生って人生何周してんの」「声がかわいい」「絶対おっさんだろ」など物議が交わされた。
さらにTwitterでは彩織が堂々とバンドマンに喧嘩を売って炎上したり、アジカンのゴッチに曲を褒められるツイートをされるなどの話題性を見せ、否定肯定問わず主にTwitter上で認知されるようになった。

週1で曲を発表していくというハイペースな活動も人気を集めるのに拍車をかけていた。
”謎の女子中学生3人組”としてメジャーデビューの話も挙がったらしい。

 


 
しかし活動を続けていくにあたって何か壁にぶち当たったのか、精神的に追い込まれたのか”謎の女子中学生3人組”というベールは突然剥がれてしまう。
いわゆる”中の人”が現れたのである。

その正体は橋爪裕と伊奈つばさの二人組。
橋爪がコンポーザーとして作詞作曲演奏を担当し、それを当時歌い手「いなまぐろ」としても活躍してた伊奈つばさが歌う、というのが本当のTWIMYだったのだ。

彩織、香深、哲子のツイートはすべて橋爪が担当していたことをネタばらし。
この事実に「嘘やろオイ・・・香深ちゃんは実在しなかったんかい・・・」ショックを受ける者もいれば「普通にキモい」と若干の引きで離れていった人もいた。

 
正体を表してからは開き直ったのか、路上ライブや自主企画を決行したり、橋爪がベースとして、さらにドラムとギターが加入。バンド形態として活動したりなどアンダーグラウンドなネットの世界から日の当たる地上へとどんどん飛び出していった。

バンド活動は順調と思われていたが、橋爪が突然脱退したい旨を発表。なぜかコンポーザーが脱退し、ドミノ倒しのようにそのままバンドも解散していった。そりゃそうなるって。
それがTWIMYである。

 

ここからがQQIQ

そして、TWIMY解散後、橋爪と伊奈が二人組として正式に始めたのがQQIQなのである。

ふぅ〜色々あった。筆者もファンとして見守っていたが終始ハラハラさせる展開であった。
だからこそ、そのハラハラさせる展開に目が離せなくなったファンもいるのだろうが。

 
QQIQの楽曲はTWIMYと比べてバンドサウンドに限らなくなった。
エレクトロだったり8bitだったり様々なジャンルの楽曲に挑戦している。
と、それに合わせて伊奈の歌唱力、表現力も磨きがかかっていっているように思う。


QQIQ006 - Neoteny
 

QQIQ屈指の名曲、Neoteny。PVでひょこひょこ踊る伊奈がとてもかわいい。絶対撮影は超恥ずかしかっただろう。

女性ウィスパーボイスといえば相対性理論がすぐ挙がるが、いなまぐろも「相対性理論のパクリ」と言われることは多かった。
しかし、この楽曲で新たな表現方法を見出している。
ポップでウキウキしているサウンドなのに、どこか憂いのある少女の声。これは伊奈にしか出せない表現だ。

 

QQIQのすげえとこは音源の売り方なんです!

そうなんです!ここまでが前置きと言っても過言ではない。
TWIMY時代の「女子中学生の3人組というキャラクターで音源を出す」というのもなかなかパンチがあるが、QQIQの売り出しかたもこだわりが見られる。

1stアルバム「いなのUSB」

まずは1stアルバム「いなのUSB」

そう、USBなのだ。
USBで出す事自体最近はそこまで珍しくない。よく見るのはハイレゾ音源を一緒にUSBに入れて出している方式。
彼らの場合、音源とその他いっぱいを一緒くたにして販売した。
その他いっぱいとは、

  • 楽曲10曲のボーカルだけファイル
  • 歌詞カード
  • はしづめの苦悩メモ(この曲はここが難しかった、等)
  • いなの苦悩ダイアリー(けっこう暗くてびっくりした)
  • いなの苦悩フォト(橋爪に言われてイヤイヤ撮った自撮り)
  • 田中と村上とのメール(TWIMY時代の協力者とのメール)
  • TWIMYを振り返る逃走ムービー
  • 橋爪が書いたラノベ「暇人と音楽的な美少女」(TWIMYの元ネタらしい)
  • ゲストアーティスト12名の作品(ゆまれのんの音源やともちゃん9さいの朗読など)

多いな!!
これだけの量が入って1500円での販売だった。
USBだからこそなせる技。これだけ詰め込めば否応でもお得感を感じる。ゲストアーティストを入れるというのも画期的であった。

あと私の感想だが、ラノベは結構好きだった。音楽の知識プラスドタバタ学園コメディといった具合で、時々出てくるレディへの名前にニヤリとしてしまった。興味が有る方はぜひ一読してほしい。
 


2ndアルバム「011-020」

さて、続いては2ndアルバム

こちらはダウンロード形式だった。メールでアルバムを買いたい旨を伝えるとアップローダーのURLが送られてくる寸法だ。
この際、画期的であった部分は値段である。

2ndアルバムの値段は10円から上限なし、評価によって値段を視聴者が決める。
10円払う者も入れば1000円払う者もいる。8億4千万振り込む人もいるかもしれない。

この方式、初めてやったのはレディオヘッドだと思われる。
レディオヘッドの「イン・レインボウズ」というアルバムが2007年にダウンロード販売されたとき、同じように値段は一任性だった。
「どうせ違法DLされるくらいならこっちから出してやろう」「音楽の価値は利権や企業ではなく視聴者とバンド間で決めるべきだ」などという意気込みで出したらしい。この活動は賛否はどうあれ大きなプロモーション効果をもたらした。

橋爪は前からレディオヘッド好きを公言しており、TWIMYのキャラである彩織もレディへネタを多く呟いていた。
リスペクトを感じさせるこのリリース形態。これは日本の音楽になにか一石を投じるのではないかと考えさせられた。
 


 
現在の日本のCDリリースのシステムにはアーティストとリスナーの間に様々な利権が絡む。
時にはレコード会社が「これはイメージに合わない」といってリリースする内容を変えてしまうこともあるだろうし、時には著作権料などと言ってアーティストの望まない形で値段が釣り上がるかもしれない。

しかし、QQIQの音源には「アーティストの表現したいものをそのまま自由に出す」ということと「音楽の値段は消費者が決めるべき」という理想が実現されている。

TWIMY時代の「日本の音楽業界を変えてやる!」と豪語していた川井彩織は死んでしまったが、QQIQになってもその精神は続いている。
日本の音楽業界は間違っている!とQQIQは自らの音源を通して叫んでいるのだ。

彼ら、いやTWIMYのアイコンであった3人を含めて、彼女たちの音楽が腐った音楽業界をぶち壊す様をいつか見てみたいものだ。

 

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