ボカロPの本格派バンド ヒトリエ
石左、地下室TIMESの運営者の一人である。彼もギタリストでなかなかいいギターを弾く男だ。
そんな彼がヒトリエを『バンドの真似事』などと批評している。
許さん。
ボカロPという激戦区から這い上がった『ヒトリエ』を私目線で考えていきたい。
ブラウザを二画面にして、石左の記事と二画面で読んでほしい。
ヒトリエとは
ヒトリエとは日本のロックバンドだ。
ボーカルギターのwowakaはボーカロイドを使用し音楽を制作するボカロP(プロデューサー)でもある。
wowakaはニコニコ動画で"現実逃避P"と呼ばれ、ボカロ好きの間なら彼の曲を知らない者はいないだろう。
確かにwowakaのカリスマ性はすごいが、他のメンバーをないがしろにしてはいけない。
ベースを担当するイガラシは、東方アレンジバンド「石鹸屋」や、岸田教団のボーカルichigoらとのユニット「JUDGEMENT」での活動経歴がある。
ドラムを担当するゆーまおは、自身でも動画を投稿し、もはや国民的アーティストであるカゲロウデイズ、じん(自然の敵P)の作品にも参加している。
それをワンマンバンドなどと形容するのはいかがなものだろうか。
ニコニコ動画界隈でメンバーを集めていて、ボカロPという激戦区から這い上がった意地を私は感じる。
2次元から3次元へ
ヒトリエ『センスレス・ワンダー』
そしてボカロPとして活動している楽曲だ。
ボカロP名義の楽曲は非人間的な高速ドラムと、ボカロの利点の一つでもある早口を多用している。
センスレス・ワンダーを聴いてもわかる通り、人間が歌うように楽曲が作られている。
他の楽器も生演奏らしさを前面に押し出しているだけでなく、演奏力も高い。
歌も、起伏、フックを出すためにサビ頭で裏声を使っている。面白い。
ボカロP名義の楽曲とは違い、生演奏を前面に押し出しているため、今までにはなかった勢いがある。
彼らの楽曲の特徴でもあるシングルコイルギターの絡みも健在だ。
ツインリードばりのギター絡みがこのバンドのウリのひとつだ。
ベースにも注目して聴いてほしい。シングルコイルのツインなので薄くなりがちなところをそうならないよう埋めてきている。
これをオリジナリティと言わずして何がオリジナリティだ。
致命的な欠点であり長所
ASIAN KUNG-FU GENERATIONと被る
ボーカルの顔面はバンド、特にキャッチー戦争真っ只中の若手邦楽ロックバンドにおいては大変重要な問題だ。
彼の顔、いかがだろうか。
モッサリだ。
そこがいい。ボカロPとしてパソコンの画面と格闘している姿が顔から想像できるだろう。
そんな彼が、髪を振り乱しながらバンドの前線を張っている。
センスレス・ワンダーの歌詞で『そちらの世界に行きたいんだ』という部分がある。
部屋で黙々と作業している自分から一歩踏み出して、バンドとして戦うことについてだと私は思う。
それもあってか、『ヒトリエ』名義の曲からはすごい気迫が伝わってくる。
裏声が少々オネエっぽく聴こえてまう部分もあるだろう。
それがいいんだ。筋骨隆々の骨太ロックじゃないところがいいんだ。
ボカロが主役の裏方のような活動から前に出て、自ら歌ったこと自体が尊くかっこいいと私は思う。
本格派バンド
wowakaだけでなく、他メンバーも持ち味を発揮している。
有名どころでメンバーを集めてこないところにも好感が持てる。本当にビジネスとしてやりたいなら、9mmの滝を連れてくるだろう。西川進を連れてくるだろう。
ニコニコ出身で集めてきたところが、戦えるんだぞ。という拘りなんじゃないだろうか。
ギターもここまでジャズマスを楽曲中で鳴かせられる人間は少ないだろうし、ベースのフレーズも楽曲に引っ張られてかは知らないが、個性的だ。
センスレス・ワンダーのギターリフはシノダが担当しているそうだ。
wowakaを主軸としながらも個が立っている。
楽曲の雰囲気は似ているが、ボカロPとしての活動とバンド『ヒトリエ』としての活動は似て非なるものだと私は思う。
ボカロPとしてボーカロイドに歌わせることによる無機質さ
自身が歌うことによる勢い、他メンバーとの有機的な絡み
両方とも彼の持ち味であり、良さだ。
どちらに重きを置いて活動していくのかは彼らのみぞ知ることだが、平行してやってこそ双方が映えてくると私は思う。
頑張れ、wowaka、ヒトリエ。