serial TV dramaを勘違いしている人たちへ
人たちへ、というか今回の話はつい昨日の自分に向けてのものだ。
serial TV dramaっていうバンドを知っていますか。銀魂の主題歌を担当していたので、それで知っている人が結構いるんじゃないだろうか。
俺が彼らを知ったのは高校生の時で、ギターマガジンのニューリリースのコーナーか何かで見かけてそれをきっかけに初めて聴いたのを憶えている。
スペースオペラ、つって。
正直全然ピンと来なかった。スペースオペラ…?俺はスペースにもオペラにも行ったことがない。話が壮大すぎる。俺の部屋7畳だもん。
なんというか、前向きすぎる曲とかファンタジーすぎる世界観とか、そういうものが苦手だったのだ。ヘキサゴンファミリーとかセカオワみたいな。
「怖いものなんてない。僕らはもう一人じゃない」
全く、わからん。一人にしてもらえないことが怖いんだよ既にこっちは。
そういう尺度の人間なので、この曲を聴いた瞬間に俺の中で何かシャッターがピシャリと閉まってしまったのだ。ああ、こういう明るくて前向きなの好きな人いるよなあーみたいな他人事になってしまった。その閉じたシャッターの上に「俺と関係ない音楽」という札まで貼り付け、つい昨日まで開くことがなかったのだ。
昨日は家の近くまで友達が来てくれてお酒を飲んでいた。
彼はバンドをやっていて、やっているからこそ音楽とかバンドとかの話はしないし、こっちもそれはある程度察してあんまり積極的に音楽の話を振らないことにしている。昔不動産屋で働いている人に理想のマイホームの話をし続けたらキレられたこともある。
のだけれど昨日はたまたま昔聴いてた音楽の話になってその彼が
「serial TV dramaすごい好きなんだよね」
と言う。
はて?君ああいう明るいバンド好きなタイプじゃないじゃないか。一早くFacebookを退会したのは俺たちだったじゃないか。なあ。
それでそんな彼が言うならと、8年ぶりくらいに札を剥がしてシャッターを開けて聴いてみたんだけれど
一番好きなヤツじゃん。早く言え。
なんだか、8年の反動からか受けたショックが大きかった。
最近は家で聴くのもベタな洋楽ばかりになってしまったし、新しい邦楽を聴いても「売れそう」とか「ウケそう」とかそういう軸でやってるように見えるバンドが多くって、記事を書くにしても「売れそうだあ」「面白いなあ」と言いながら自分の好き嫌いのメーターがなかなか揺れ動かなかったんだけれど、なんだか久々に「そうこれ、俺こういうの好きだった」と思った。思い出さされた。
派手かどうかで言えば、地味だとおもう。特に今どきのバンドと比べると。なんかバンドってもう俺とか俺のような卑屈で根腐れた男子たちのものじゃなくなっている気がするのだ。いつも言ってるけどコレ。男が憧れられるような共感できるようなかっこよさみたいなものがバンド文化からずるりと抜け落ちていっているイメージだ。KANA-BOON以降特に。
これは「今の音楽なんかクソに違ない俺たちの時代が黄金期だ」なんて思いたいから言ってる妄言なんじゃなくて、傾向として本当に女性向きになっているのだ音楽商業が。バンド業界全体が頭がよろしくなっている。「女性相手の商売にした方が儲かる売れる男は金にならんしライブ来ない」ということをインディーズバンドすらも明確に理解しはじめている。これは良いとか悪いとかそういう一次元的な話じゃなくて市場から男が淘汰されていっているという自然現象だ。金払いの悪かった俺たちが悪いのだ。
比べてこの曲、このシリアルは、編曲も歌詞もルックスもまったく賢くないのだ。「こうしたら女が喜ぶからこういう要素入れてこうぜ」みたいな、客目線がない。もう自分の言いたいこと歌いたいことだけ歌ってるし人が良いと思うかどうかはそれこそ人任せだ。それは商売としては危険だけれど、モノとしてはとても美しい。俺はこういうのが好きだった。好きだ。
今日ずっとアルバムを並べて聴いてみているけど、3枚目ちょうどSPACE OPERAあたりからクラシカルスケールの速弾きポップみたいになっている。
2ndもこの曲の間奏ように要所でその要素が見え隠れしてるんだけど、昨日から聴き始めた俺でもわかるくらいに3枚目で急ハンドルを切っている。
聴くに3rdリリース後にボーカルの伊藤さんは抜けてしまったらしい。
こんなに早いうちに曲調がぐるり変わるバンドも珍しい。
もしも昨日の俺と同じく、3rd以降の曲でシャッターを閉めてしまった人がいたら、もしくは3rd以降の曲で好きになった人がいれば、どちらもきっといい意味で裏切ってもらえるので是非聴いてみてください。
それでは