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上田啓太

2017/04/15

コラム 記事

90年代J-POPの歌詞の妙な迫力を見よ

 タイトルでやりたいことは説明してるんで、導入はスッ飛ばして本題にいきたいんですが、一応。

 この記事では、90年代のJ-POPに登場した印象深い歌詞を紹介していきます。

 同世代にはなつかしさを
 別世代には新鮮なおどろきを!

 2秒で考えたキャッチコピーも出たところではじめます。

 

SIAM SHADE『1/3の純情な感情』(1998)

  壊れるほど愛しても 1/3も伝わらない

 こういう歌詞について語りたい。ヒット曲の名フレーズには、「よく分からんがなんだか分かる」という要素があるんだが、これはその筆頭。冷静に考えれば「壊れるほど愛する」もわからないし、「1/3も伝わらない」はさらにわからない。どんなふうに計測した結果、1/3も伝わらなかったのか。1/4は伝わっていたのか。

 ヒット曲の名フレーズにあるのは、言葉の意外な結びつきが生み出す暴力的な迫力で、それは理屈をこえたところで、「なんか知らんが分かる」と思わせてしまう。迫力に押し倒されるのである。結果、「たしかに、壊れるほど愛しても1/3も伝わらないかも」と思ってしまう。うまくいけば、「俺も同じこと思ってた!」とまで感じてしまう。たしかに俺もあのとき、壊れるほど愛したのに1/3も伝わらなかったぞ! 

 これが音楽の魔法であり、ことばの魔法なのである。いやホントに。

 

 この動画は2011年のライブ版。このバージョンめちゃ良い。

 

反町隆史『POISON ~言いたい事も言えないこんな世の中は~』(1998)

  言いたい事も言えないこんな世の中じゃ POISON

 とにかく「ポイズン」への飛躍がすごいというか、「言いたい事も言えないこんな世の中」は誰もが思うことだとして、そこから「ポイズン」に飛んだところにヒット曲の魔法を感じる。何がどうなればポイズンに飛べるのか、20年近くたった今でもさっぱり分からない。

 反町隆史は「シット!」や「ファッキン!」みたいなベタなものを試したうえで、「ポイズン!」の四文字を思いついたのか。それとも、一発目でポイズンがスッと出てきたのか。しかも反町隆史は非常にハッキリと「ポイズン!」と歌っている。英語っぽく発音する気ゼロ。カタカナ全開のポイズン。これはすがすがしい。

 

 ヒット曲とはすこしちがうが、反町隆史には『ロイヤルミルクティー』という怪曲もある。名曲というか怪曲である。怪人みたいなもの。とくにサビの歌詞がものすごく変で、これがハマる。

  彼女はロイヤルミルクティーが好きだった
  俺にとって何の興味もなかったそれを俺は好きになった

 後半の異常なまどろっこしさがジワジワと癖になる。ロイヤルミルクティーのことを「俺にとって何の興味もなかったそれ」というのは何なのか。なぜサビにこんな一文がまぎれこんでしまうのか。関係代名詞で複雑につながった文章を無理やり翻訳したような日本語。結果的に大江健三郎の初期作品みたいな文章に近づいてるんですよ。反町隆史が。

 

Mr.Children『名もなき詩』(1996)

  成り行きまかせの恋におち時には誰かを傷つけたとしても
  その度心いためる様な時代じゃない

 このCDは230万枚売れたらしい(調べた)。シングルCDがこんなバカみたいな売れ方をしていることに時代を感じる。

 そもそもミスチルの『名もなき詩』自体がめちゃくちゃな名曲で、私なんかはイントロの「ジャカジャーン!」だけでパブロフの犬的に興奮してしまうが、引用したのは曲中でもとくにインパクトのある部分。この長い一文を桜井和寿は一息でまくしたてるように歌っている。その歌い方まで含めて最高。当時異常に聴いたので、今でも頭のなかで完全に再生できる。

 ちなみにこれをカラオケで歌うのは非常にむずかしい。当時、歌おうとした男の大半がぐだぐだに噛み倒していた。成り行きまかせの恋におちじぇgjだdhげabるighぽxxな~~~い! みたいに。

 おまえ、最後の絶叫で無理やりツジツマあわせようとしただろ、と言いたくなる感じ。たいていの男は中盤のぐだぐだをごまかすために最後の「な~~~い!」を元気よくさけぶ。それが素人というもの。こんなもん普通はスッと歌えない。桜井和寿はすごい。

 

Dragon Ash『Grateful Days』(1999)

  俺は東京生まれHIP HOP育ち
  悪そうな奴は大体友達

 文句なしの名曲、そして文句なしの名フレーズ。当時、ありとあらゆるところで膨大なパロディを生んだ。とくに引用したZeebraパート、これはもう日常会話から何からで異常に使われていた。やはり、「すこしツッコミどころがある」ことがポイントなんだと思う。

 真正面からの文学的名文というよりは、どこか抜けたところがあるのがキモ。ちょっとイジリたくなる雰囲気。しかし一瞬で脳にこびりつく。これがヒット曲の条件。「なんなんだよ」と思いつつも無視できない。だからこそコミュニティを超える。ヒット曲はその迫力で壁を壊す。

 しかしこの曲、三人の声のバランスもたまらないし、マジで名曲ですね。えんえん聴ける。

 

T.M.Revolution 『HOT LIMIT』(1998)

  ダイスケ的にもオールオッケー!

 「誰やねん」という感じが良い。ちなみにプロデューサーである浅倉大介のことなんだが、当時中学生の自分が知るはずもない。「誰やねん」と思いながらも、西川貴教の圧倒的歌唱力とテンションで「オールオッケー!」と言われるもんだから、「よかったなあ」と思ってしまう。ダイスケの許可が出て本当によかった。ほんともう、ダイスケのNGが出たらどうしようもないんだから。

 T.M.Revolutionの歌詞だと以下も妙に覚えている。

  タランティーノぐらいレンタルしとかなきゃなんて
  殴られた記憶もロクにない癖に
 (『WHITE BREATH』)

 これ、中学生の自分はタランティーノのことを知らなかったからピンとこなかったんだが、いまさら理解した。タランティーノ映画の暴力描写に引っかけて、現代の人間を皮肉ってんですね。20年ごしに感心した。

 同じ曲だと、「敬語を無視する今時の強さください」という歌詞も印象的。ほとんど全裸の妙な衣装にだまされていたが、TMさん、意外と歌の内容は皮肉っぽい。油断していた。まさかあんな格好(※)してる人が皮肉っぽいとは思わないもん。


 ※「あんな格好」の一例

 

小沢健二『今夜はブギー・バック』(1994)

  ほんのちょっと困ってるジューシー・フルーツ
  一言で言えばね

 今でも言及されることの多い名曲。私もめちゃくちゃ好きだが、とくに「一言で言えばね」が良い。キザの極み。

 この一文に至る流れを説明しておく。「僕とベイビー・ブラザー」が「めかしこんで来たパーティ・タイム」で「最高のファンキー・ガール」と目が合う。その女の唇は、「誰だってロケットがlockする特別な唇」だという。

 もう、この時点で凄すぎてお腹いっぱいになるが、そこで女を評して出てくる言葉が「ほんのちょっと困ってるジューシー・フルーツ」なのである。やはり私はこの一文を推したい。魅力的な女を一言で表現した結果、「ほんのちょっと困ってるジューシー・フルーツ」になることありますか。どういう人生を送ってくれば、パーティで出会った女をほんのちょっと困ってるジューシー・フルーツだと思うことができるんですか。しかも「一言で言えばね」。

 逆に、一言で言わないとどうなるのか知りたい。この女を原稿用紙10枚で描写するとどうなるのか。みなさんも日常生活でぜひとも使ってみてほしい。この言葉を口にして違和感のない男は小沢健二になれます(そんな男が小沢健二以外にいるのか)。

 

以上

 以上、今回は6曲を紹介してみました。それぞれの歌詞の魅力がすこしでも伝われば幸いですが、まあ、こればっかりは分かりません。壊れるほど説明しても、1/3も伝わらないのが常なんで。

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