元ネタがわかるともっと楽しめる!ディスコリバイバル Tuxedo
2014年のグラミー賞を獲得したDaft Punk、2015年のPharrell Williams、Mark RonsonとBruno MarsのUptown Funkを筆頭にEDMと呼ばれる音楽とは別のシーンでディスコリバイバルが起こっている。
70年代から80年代にかけて流行っていたディスコミュージックを現代風に蘇らせた音楽のことをディスコリバイバルと呼ぶわけだが、これに限らず今流行っている音楽のすべてが過去の焼き直しだ。EDMだって80年代後半から90年代にかけて流行ったトランスの焼き直しだ、新しく感じるのは音圧の違いぐらいで音楽性は大して変わらない。
「古い音楽を聴け!」とじじぃのようなことが言いたいわけではないが、古い音楽を知ると今の音楽を数倍楽しく聴くことができる。今回はディスコリバイバルブームを背負って立つであろうユニット、Tuxedoを例題にディスコリバイバルの楽しみ方を紹介したい。
80年代ファンクへのリスペクト
Tuxedo - Do It
TuxedoはシンガーソングライターのMayer HawthorneとトラックメイカーのJake Oneからなるディスコ・ブギーユニットだ、サマソニやビルボードなど来日する機会も多くなっていて、今後さらに知名度をあげていくことだろう。
Do Itを聴けば彼らがどんな音楽をやっているかわかったも同然だ。ゆったりと踊れるテンポ、繰り返されるメロディ、カッティングギターや太いシンセベースから80年代ディスコを感じることができる。リバイバルな箇所をあげるならボーカルのミックスぐらいなものだ、それ以外は非常に古臭い。
この1曲だけでも楽しめるのだが、元ネタを知ると何が古臭く新しいかが分かりより楽しめることだろう。
Roger Troutman - Do It Roger
ファンクバンドZappのフロントマンであったRoger Troutmanの楽曲である。元ネタが分かるように作られているところからTuxedoの2人がディスコに憧れ敬意を払っていることが伺える。このような楽曲制作はパクリではないかと近年裁判になったり多くの論争を生んでいるが、私は元ネタへのリスペクトがあれば良いのではと思っている。多くの音楽は温故知新という名のパクリだ、新しさは古さの組み合わせで生まれてくる。
90年代ヒップホップへのリスペクト
Tuxedo - Number One
2人ともテニス下手だな。
この曲の元ネタはなんだろう。サウンドは圧倒的に80年代ディスコだが、元ネタは90年のヒップホップである。
Snoop doggy dogg - aint no fun
この曲に関してはコードもメロディも丸使いだが決してパクリではない、元ネタだ。パクリかどうかの線引きは非常に難しいが、この曲に関してはセーフだ。MayerもJakeもSnoopと以前から交友関係にあり楽曲を制作しているし、そもそもAint No Fun自体がサンプリングでできている、安心して元ネタとの違いを楽しんでほしい。
さらに言えばSnoopは80年代ディスコソングをサンプリングして90年代ヒップホップを生み出しているが、Tuxedoはその曲を元ネタに80年代ディスコを再現しているディスコ→ヒップホップ→ディスコリバイバルの流れだ。どちらも過去の音楽に敬意を表して楽曲を制作しているわけで、それを感じ取れるとより今のディスコリバイバルを楽しめることだろう。
MVへのリスペクト
Tuxedo - So Good
ディスコリバイバルの楽しみ方は何も音楽だけではない、衣装やMVなど視覚情報でも元ネタを発見できることがある。
So Goodはわざわざ画面サイズを4:3にし解像度も落として撮影されている。Mayerも口パクだし他のメンバーは明らかに演奏をしていない、80年代のMVを模倣しているのだ。
Aaron Broomfield - I'M Gonna Miss ya
元ネタはこれだ。これはパクリじゃない、オマージュだ。ディスコ時代を駆け抜けた人たちに「あるよね〜!」と言わせるべくMVを模倣している。
私は実際にTuxedoを見に行ったが、このメンバーでしっかり生演奏をしていた。Jake OneだけはMV同様ほとんどが当て振りだったけどな、こいつはトラックメイカーだから生は苦手なのだろう。
ディスコリバイバルに限らず現代の音楽は過去の音楽の積み重ね組み合わせで生まれている、過去の音楽を掘り進めれば現代の音楽をより一層楽しめることだろう。
でもまぁ、そんなこと知らなくても音楽は楽しめる。むしろなまじ知っていると元ネタは何だサンプリングがどうだと無駄にしゃべってしまうためうざったがられることがほとんどだ、友達が減るぞ。
音楽は温故知新だ、それだけでも覚えて帰ってほしい。