プロのレコーディングエンジニアに有名バンドの音源は本当に”いい音”なのか聞いてもらった。
良い音楽って何でしょう。物差しはいろいろあると思います。
その中でも最も普段注目されない部分、"音質"。今回はそこに迫ってみようと思います。
音質といってもハイレゾ音源だとかmp3だとかwavだとか、そういう話ではなく。今日はレコーディング及びその音をいかに上手く加工したか、つまりミックスと呼ばれる部分の話です。
バンドの音源というのは、バンドメンバーの自力のみで録られることはまずなくてですね、スタジオを抑え、レコーディングエンジニアと呼ばれる人に音を録ってもらい、それを各々加工し混ぜ合わせバランスを整えたものとなってます。インディーズバンドの音源で、だいたい5曲で40万円前後かけて録られるものなんです。
というわけで今回は「普段僕らが当たり前に聴いている有名バンドの音源は、レコーディングエンジニアの人から聴いて本当に良い音なのか」検証してきました。
当然の話なのですが、先に断っておくと、これは曲やバンドの良し悪しの話ではないです。決して。
あくまで録れ音、ミックスが良いか悪いか。というだけ。
かなりショッキングな内容になっていますのでご容赦ください。
それでは。
レコーディングエンジニア浅部太さん37歳(仮名)以下:ア
My Hair is Bad
ア:1回聴いて言えばいいの?
―そうですね。1曲目、キートークにします?
ア:なんでもいいよ!ほんとに。
―(笑)マイヘアからいきますか。マイヘア聴いたことあります?
ア:あの、有名な曲しか聴いたことないなあ…
―ブラジャ〜のホックを〜〜♪
ア:そうそうそう。真赤、だったっけ。
My Hair is Bad - 真赤
―はい。どうなんですか。
ア:はい。そうね、全体的な所からいこうか、じゃあ。
―はや。
ア:全然ダメっすね。まず、トータルのコンプが強すぎて。日本的なんだけど、全部が前にペターってなっていて、奥行きが全くないと。
あと、全体的にレンジが狭いね。上から下まで出ているわけじゃなくて、かなりミッドに寄った音になっていて。ギターロックのバンドだからギター推しなのはいいんだけど、メロディックな感じだから、もう少しハイファイに聴かせてもいいんじゃないかなぁと思いますね。
ギターとかも音良いんだけど、オーディオ的に聞くと艶っぽい抜けてくる所が聴こえない。カサカサした感じの音になっちゃってるよね。あとはやっぱバンドだから、もうちょっとキックとベースのどーんってくる所が欲しいなって。
―確かにキックがペタペタしてるような。かわいいキックしてるなぁって思いました。
ア:爆音で聴いてればまあうるさい感じだからいいんだけど、やっぱ洋楽の方が全然音が良くて。全ての音がちゃんと「ここにいるな」「ここにいるな」って見えてくる音ではないよね。マスタリングのせいもあると思うんだけど、そもそも作り方がそういう感じだよね。
歌がちゃんと聴こえてるのは良い。リヴァーブも綺麗だし。ただ綺麗なんだけど、綺麗だなって聴こえるのが歌だけになったところとかイントロだけで、曲に入ると全然聴こえなくなっちゃってるよね。そういう艶っぽさがちゃんと出てくるように整理してあげないと…多分良くなんないよね
―面白。マイヘアに言いたいことはそれくらいですか?
ア:うん。すごい良い声してるね、やっぱりね(笑)天才的な声質だと思う。
―ベース細くないですか?
ア:細い細い。ベース、キックが全然見えてこないの。ベースの聴こえてくる所はジャリジャリしたところだけで。いわゆるベースの役を成しているわけではないっていうか。「春、恋に落ちて」って、絶対キメる所じゃん?そこでドンってこないじゃん。
―はいはいはい。DJ向きの曲ではないってことですね?
ア:そうね、フロアだったらだいぶ厳しいよね、相当EQやらないと。
まあギターロックだからいいんじゃないの、とも思うけどね(笑)
―マイヘアみたいなバンドはこういう音が多いんですかね。
ア:多いけど、日本人的で良くないと思う。で、洋楽とかだと…とりあえず僕が教科書としてるのがOK Goなんだけど…
―あぁ、OK Go。
ア:OK Goってちゃんと整理されてるんだよね。
OK Go - Don't Ask Me
―あーほんとだ!スネアとかもすごいっすね!
ア:ちゃんとこう、空間があってさ。
―ありますね!奥行きがすごい!
ア:ドーンドーンドーンドーンってベースが。これもけっこうギターロックだけどさ、こっちの方が絶対いいじゃん。
―そうですね、聴きたくなる。聴いててめっちゃ気持ちいい。
KEYTALK
―KEYTALKは2曲聴こう。最新と昔。昔の方から!
KEYTALK - トラベリング
―やっぱ小野武正って天才なんだな… すごくないですか、ギター? でもOK Go聴いちゃうとしょっぱいですね(笑)
ア:まず、音がペラペラだよね。要は、全体としてハイが出過ぎだよね。
各々がどうとかじゃなくて、ツーミックス(ステレオ全体の音)全体で見て、ハイが出過ぎていて、全然ガッツがない曲になっている。
シンバルがめっちゃうるさくて耳障りだよね。で、そのハイの出し方も、シンバルの「シャンシャン」が全体でグッと上がってる感じがしていて。
シンバルの中の抜けてる部分だけ出てればいいんだけど、全体がガッて出ちゃってうるさくなってる感じがしますね。
各々分離は良くて、ベースもキックも聴こえる。ただ、スネアの上に寄っている所が、歌の高域とシンバルの高域と混ざっちゃって、あんまり良い音に聴こえない。
―良い曲だけど、音はペラペラだなぁと思いました。
ア:すごいインディーズ感がする。これを聴いちゃうと、もっとドラムを重い音にしようよって思っちゃうよね。ミッド、ローが基本的に足りないのかな。音がペラペラにつきるのかなぁ、これは(笑)
―KEYTALKに関しては最新曲と比べてみて欲しいですね。
KEYTALK - ロトカ・ヴォルテラ
―曲、ヤベえな。誰だよこれ。聴いた瞬間に、もうインディーズ時代とは違うんだなぁって。
ア:まず、全然ダメだねこれ。
―ほぉぉ。メジャーの曲なのに、ですか。意外。
ア:もうごっちゃごっちゃしてて、何がどこで鳴っているのか全く分からないよね。
曲は、KEYTALKってギター、ギター、ドラム、ベース、歌で、ちょいちょい打ち込みっていうのは基本変わらないんだよね。だけど、一個一個の周波数の帯域を整理できてなくて。全部がミッドローで渋滞しちゃってて。
パッと聴いて圧力はあるんだけど、ただそれだけっていう。
―素人が聴くと、良いって思っちゃったんですよねー。圧があるから。でも、さっきのOK Goと比べると整理されてないなってのは凄いわかる。
ア:すごく…その…プロっぽくない(笑)周波数の整理ができないって、エンジニア的に初歩でつまづく所なんだよね。まぁ、あえてやってるのかもしれないけど…打ち込みも高いところだけ聴こえてて、耳障りだし。
―ボーカルが聴き取りづらいと思った。
ア:歌に関しては、ハイにすごい変なピークがあるの。周波数的に極端に出てる所があって、芯のないような音になってる。
あともう一個重大なやつがあって…歪んでる。特にドラムかな。ビリビリッて聴こえる所があるから。
マスタリングのせいじゃないのかな?それも周波数がちゃんと整理できてないから、渋滞している所はそこだけ大きくなって、そこでビリビリって歪んじゃってる所があって。
例えばオルタナのバンドで、たまにワッシャーってなって、ビリビリってなるのがカッコイイのは分かるけど、こういうバンドで歪ませちゃダメでしょって思う。
―全然関係ないですけど、ギターのテクはどうですか。
ア:クソ上手い。
―キートークを聴いてみて、総じて言うと?
ア:小野武正はヤバい。あと言い忘れたんだけど、ドラム、トリガーしまくってるのバレバレ。
―最近ライブとかでも使う人多いですよね。
ア:ライブで使っていいのはエモ系の人たちだけだよ。slipknotとか(笑)
まぁトリガーみたいなのはみんなやってて。それでもバンドはもっと生に近く聴こえるようにするもんだけど…
※トリガー:ドラムが叩かれたときに同時に別の音源が鳴るようになる装置。メタルなどで音を均一にするために使われることが多い。
クリープハイプ
―次行きますか!
クリープハイプ - バイト バイト バイト
ア:これは悪くない!レンジは狭いんだけど、今まで聴いた4つより良い。もうちょっと真ん中寄りの上あたり。歌の上の帯域が全体的に聴こえたらいいのかなぁとは思った。あと、ドラムが微妙だね。キックとベースの帯域が被りまくってて、キックがキックらしく聴こえないなって。
―なるほど。
ア:ドーン、ドーン、ドーンってローの部分がベースに掻き消されちゃっている割に、アタックのバチッバチッって所が出てないから、キックがふわふわしてる。
―分かんなかったー!
ア:っていうのと、スネアの位相が悪いかもね。
位相っていうのはこう、波があって…これと逆の波をぶつけると音が消えるのね。
―はいはい。
ア:スネアのオンマイクと、その他のマイクとの位相が悪くて、スネアの芯があるところが聴こえてこない。パスンパスンっていう胴が鳴ってる音は出てるけど、とにかくスネアの音が軽く聴こえる。ミックスのせいなのかどうなのか分からないけど。
―それを踏まえてもっかい聴きてぇ。
ア:まぁ、狙ってやってるんだったらごめんなさいって感じなんだけど。
あとは…クリックが漏れてる(笑)事故だね。
―えっ!?(笑)そんなことってあるんですか??
※クリック:演奏している人が聴いているメトロノームのような全体でテンポを合わせる為のもの。ヘッドフォンから「ポッポッポッポ」と一定に聞こえてくる。
ア:音って伸びるとどんどん小さくなっていくでしょ?シャーーンって。
でもクリックは一定の音で鳴り続けてて、それがヘッドホンから漏れてるわけ。曲の終わりの部分聴いてみて。
―あ、本当だ。曲の一番最後小さく「ピッピッピッピッピッピ」って言ってるコレ。事故ってる。
ア:で、コンプをかけてるから、スーってドラムが落ちるのに対して、全体の音は上がるの。だからクリックが聴こえてくる。
※コンプ:音の強弱の差を縮小する効果があるエフェクターの一種。
Suchmos
―なるほど。じゃあ、Suchmosいきます?人気の曲たくさんありますが…
ア:...............STAY TUNEでしょう。
―ですよね(笑)
Suchmos- STAY TUNE
―はい。どうですか...
ア:素晴らしい。
―アサべさんがこれはベタ褒めするから良く聴こえちゃうのか分かんないけど、やっぱり良く聴こえるんだよなぁ。
ア:いや、良い、これは。まず、ベースはデカいじゃん。ありえないくらいデカいんだけど、何も邪魔しないわけ。キックのアタックも胴鳴りも聴こえるし、シンセのキラキラも綺麗に聴こえるでしょ。それは、何も被ってないから。
音数少ないのもあるんだけど、それにしても分離がめちゃめちゃいい。ギターも音大きくないんだけど、ちゃんと聴こえるじゃん。
―デカいクラブとかでSTAY TUNEしちゃっても、良く聴こえちゃう?
ア:そう。聴こえちゃう。ベースもドラムもちゃんと聴こえているから、フロアでもドンドンドンって鳴らしやすいし。すごく洋楽的。
——ちなみに、最後のアウトロはまじでカッコ良すぎる。
ア:そこまで冷静に、どれも多くしすぎず分離して配置されてる中で、最後にバンってくるから、カッコイイじゃん。迫力を殺さないっていう。さっきのマイヘアとかは迫力が死んでる。その波を作るのはミックスの仕事でもあるから。
今の日本はだいぶコンプで潰しちゃうから、波が無くなっちゃう。マスタリングで潰されても波が出るようなミックスをするのが良いエンジニアだね。
ポルカドットスティングレイ
―あ、そうだ。ポルカドットスティングレイ聴いてみてくださいよ。音ペラッペラだから。
ポルカドットスティングレイ - テレキャスター・ストライプ
ア:うん、ミックスバランス悪くないよ!ノリもいいし。
―え、ギターの音がギャグみたいに聴こえるんですけど。
ア:俺の印象だと、安い機材を使って、良いミックスをしたのかなっていう印象。ギターとかも、JC120感がすごくて。ちょっとイナタい、枯れたような音。その割に、弾いてるフレーズはちゃんとパキッとしていたい、みたいな。
ドラムに関しても、キックの音が、ちゃんとしたキックのマイクで録ってないような印象があって。ちゃんとローが録れてない。その割に、ちゃんと分離して聴こえるから、ミックスは良いなって思った。
―俺この曲、ベースが何やってるのか全然聴こえないんですけど。埋もれちゃってるっていうか、潰れちゃってるっていうか。
ア:音色的に、抜けのいい音色ではないかもね。低いローはちゃんと出てる。ベースのすごい低い所、あんまりベースだって認識できない所は出てる。だから、全体としての迫力はちゃんと残ってるんだけど、確かにラインは見えづらいっていうのはある。単純にベースがちょっと小さいし。
―ミックスいいんですね、これ。
ア:うん。ただその…歌が。歌だけすごくデモ感がある。「やっすいマイクで録ってんな」っていう音になってしまっている。だから、「インディーズです、自主制作です」って聞いたら、すごいねって俺はたぶん思う。
―なるほど。
ア:歌をそういう音にしたのか、それとも、そうしかできなかったのか分かんないけど。
―じゃあちょっと、新しいの聴いてみましょう。あ!同じ曲ある!テレキャスター・ストライプ(全知全能ver.)!撮り直しかな。これなら予算が出たらどうなるのか比べられますね!
ポルカドットスティングレイ - テレキャスター・ストライプ(全知全能ver.)
―ミックス違いかな、これ。でもベースはよく聴こえる。
ア:なんとも言えないなこれは(笑)正直、上物の印象は変わんない。やっぱり、ギターと歌はペラい。JC感がすごい。撮り直したのなら、こういう音が好きなのかなーって感じ。
特に左のバッキングの芯がない。テレキャスターにしても、テレキャスターの部分でなく、JCのディストーション上げた時の、上のサラサラっていう歪みの部分が多くて。キーンっていう音じゃないなっていう。
―そこまでくるともう全く分からないわ。
ア:歌の音はやっぱり変。ミッドにすごく特徴があるというか、レンジが狭いっていうか。抜けてくる声じゃないっていうか。
―でも、良いミックスっちゃ良いミックスなんですか?
ア:悪くはないけど、普通って感じ。良くも悪くもない。(旧録と比べて)違うは違うんだけど、傾向は一緒って感じかな。それこそクリープのインディー版とメジャー版は全く違うけど。
―違うの聴いたほうがいいかな。
ポルカドットスティングレイ - レム
ア:ちょっとまって、歪んでるな。俺のせい?歪んでるの分かった?
※歪んでるというのは音量が規定デシベルを超えて割れている状態のこと。
―いや全然。
ア:すごい事故った感じで歪んでるの。機材のせいなのか、本当にこれ(楽曲)のせいなのか検証していい?
―お願いします。
ア:(再聴して)やっぱ歪んでるわ、これ自体が。良くないね(笑)
―クリッピングしてる?
ア:クリッピングしてる。ここ分かってほしいなぁ。サビ終わった後の間奏の部分とかわかりやすいと思う。両方のギターを聴いてみて。
―ギターの歪みではない?
ア:ではない。
明らかにオーディオ的な。
こういう、意図しない歪みはいいのかしら?と思ってしまうんだな。マスタリングかもしれないけどね、これに関しては。曲全体で言ったら、うーん…普通って感じ(笑)
―音は良くなったなって気はするんですけどね。安い機材で頑張ったって感じではなくなってますよね。
ア:うーん。逆にいい機材でこれだったらちょっとなって感じ。いい機材使ったんだったら、もっとそういう音にしないと、って思う…
―次は…おいしくるメロンパンで。
ちょっと耳がね、分かんなくなってきたかもしれないから、リセットしーよっ。
―OK Goで
OK Goで(笑)
OK Go - Don't Ask Me
―イヤー集中切れたね。
ア:なんか好きな洋楽流していいよ。洋楽の有名曲って、だいだいミックスいいから。
The Kooks - Sofa Song
―どうすか?
ア:素晴らしい。アコギもちゃんと聴こえるし。ドラムも、派手なドラムじゃないんだけど、ちゃんと汚れずに聴こえるし。
DYGL
―逆にこれ聴きたいっす。日本人で、海外で録音したっていう。DYGL。
DYGL - All I Want
ア:ああ、いいね。どこになにがあるかちゃんとわかる。リヴァーヴ感もわかる。一見レンジ狭そうな音だけど、レンジ広いね。全体の中で、ちゃんとバランスよく上から下まで出てる。ガレージだよね。リバティーンズもこんな感じ。
―—さて、おいしくるを聴きますか。
おいしくるメロンパン
おいしくるメロンパン - 色水
ア:うん。バランスは良いね。ただちょっとこぢんまり聴こえるのはあるかもね。それはコンプのせいだと思うんだけど。コンプ強めでペタって前にきてる感じがある。けど、音数少ないし、そんなに歪んでないから、空間は見える。ただドラムが…
―カラオケみたいな…?
ア:それは単純に、上手くないからだと思う。そもそもドラムの良い音を出せていない感じがすごくあるね。チューニングもそうだし。ドラムに関しては録り音っていうか、出音がだいぶ重要だから。
―でも全体的には良いと。
ア:うん。バランスは良い。良いです。
―少な、感想。でも良いミックスなんですねこれ。じゃあ最後、セカオワいきますか。
SEKAI NO OWARI
ア:はい。何いきましょうか。
―ドラゲナイでしょう。ちなみにドラゲナイ、外人が聴くと発音良いって思われるらしいよ。
SEKAI NO OWARI - Dragon Night(英詩)
ア:いいです!文句なし(笑)
―いいですよね。バンドじゃねえ、EDMだよ(笑)
ア:これは良いです!一応言うと、歌の音質が素晴らしいね。すごい艶っぽいし、バッ、バッとこう、刺さる声の音質ではある。で、ローは少ないんだけど…
―そんなに近所迷惑な感じはしないですね。
ア:ベースはもっと欲しいんだけど、上の帯域の整理がすごく素晴らしいから、リズム感もすごい分かるし。もっとEDM的にするんだったらキックをドンドン入れても良いかなとも思う。
―例えるなら何っぽいですか?
ア:パッと聴いて思ったのは、テイラー・スウィフトっぽいと思ったの。全体的にツヤっとした音にして…
―そうじゃなくてもっとこう…ラーメンかなんかに例えるなら…
ア:そういうことね(笑)料理で例えると…えっとね、日本の、ミシュラン一つ星のフランス料理って感じ。
―(笑)
ア:本場のものではないんだけど、評価されるような音にはなってるみたいな(笑)
―やっぱりドラゴンナイトすごいね。プロに聴かせるとドラゴンナイトは良いという。締まりましたね!
ア:良いと思っちゃった。けど、バンドではない(笑)
―最後の方のバンジョーみたいなのあるじゃないですか。あれ人間弾いてるんですかね。
ア:弾いてる、多分。あのバンジョーも、すごく良いバランスで出てきてくれたし。何も被ることなく、ちゃんと主役ですよって感じで聴こえるし。出るとこ出して、出さないとこ出さないっていうバランスも、すごい良いなって思った。さっき言ってた、のっぺりしたようには絶対ならないです。
―マイヘアとは全く違いますね。金かかってるんですかね、こういうのって。
ア:基本、録りはないでしょ、ほとんど。すごいアレンジャーに頼んで、アレンジしてもらってって感じじゃないの。シンセの音色選びも多分すごいし。生に比べて打ち込みって、ミックス的に難しくはないんだけどね。そもそも邪魔な帯域がないような音になってるから。
―面白かったわ、ドラゴンナイト。
ア:良かったねぇ。
―結果、日本人聴いた中で一番良かったのは何ですか?
ア:Suchmosでしょ。
―やっぱりドラゴンナイトVS Suchmosでも?
ア:Suchmosでしょ。サチモスは基本、全部生でやってる。生であれだけできるのは本当すごいと思います。
総括して、日本人で良いミックスする人ほんといないなっていう(笑)日本的な音がやっぱ多い。全体の傾向としてはペターっとしてるし。
―読者に対して、こういうところ聴いて欲しいなって所あります?エンジニア視点から。
ア:正直にいうと、ユーザーにエンジニア的な聴き方は求めていないです。
―なので気にせずに聴いてくださいと。
ア:気にせずに、音が良い曲を聴いて欲しいです。ミックス的なものは、無意識に良いなって思う、一つの要因になれば良いなって思うんですよね。
一つ言えるのはディレクターが頑張って欲しいなって思います。あなたは、弁当を頼む為にいるわけじゃないぞと。売れる為のテイクを精査していくのが仕事だって思ってるディレクターがもっと欲しいと思います。
おわりに
いかがでしたでしょうか。クリープのクリックが漏れてたり、サチモスはやっぱり良い音だったり、意外な発見がありましたね。
普段あまり気にされないミックス部分ですけれども、良いスピーカーやイヤホンでちょっと注意して聴いてみたらまた面白いんじゃないかと思います。
それでは。