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ひどく誤解されるバンド sumika

「ちょっと見てよ、星野源の偽物みたいなバンド見つけたんだ」

 そう言って女が差し出したiPhone6sの画面には知っているバンド名と知らない映像が映し出されていた。

 

 即座にゴリラガラスの画面を手刀で叩き割り俺は立ち上がり叫んだ。

 sumikaは、何かの偽物なんかじゃ、ましてや星野源の偽物扱いを受けるようなバンドじゃ、ない。お前らなあ、女はなあ、YouTubeの最新MVだけ見てなあ、バンドの100を語りやがる。

 なにが、星野源の偽物じゃ。クリープハイプの歌詞にもならねえような人生送りやがって女コラ。コラ女。

 前身バンド含め15年近くのキャリアのあるマジの実力派バンドぞ、sumikaと言えば。聴いたことない?これだ、見ろ。

 

 どうだ…! 完全に、星野源の偽物だろ…!

 ええーーーーーー

 

 これ、ちょっと前にやってたヲタクに恋は難しいっていうアニメの主題歌なんですけど

 

 アニメで恋ダンスまがいの振り付けを再現する徹底ぶり。確信犯。間違いなく狙ってやっている。

 いや違うんですよ。本当に。ここだけ切り取らないで!!テレ朝の偏向報道みたいに!!

 

 ということで今回はですねsumikaがどういうバンドでどうして売れて、何を経て星野源になったのか、勝手ながら解説したい。なぜか?いや酷く誤解されていると思うのだ、sumikaは。誤解は良くないし、それで聴いてもらえないなんていうのはバンドにとっても、リスナーにとっても、損だ。

 sumikaって言うと

 この曲のイメージで知ってる人が多いと思うんですけど、この曲ですら彼らの活動史の中でいえば最近の話で、sumikaになる前はbanbiという名義で10年近く活動していた大ベテラン。

 以降のリリースがメジャーっぽい曲が多いせいか誤解されがちだけれど、メジャーレーベルに組まされたポッと出のバンドなんかじゃなく、本当に硬派で地道に頑張ってきたバンドだ。第一の誤解はここにある。

 

 演奏力はもちろんのこと、ポップ路線の曲ばかり目立つけどバンドらしい曲もしっかりあるちゃんとしたライブバンドだ。

 アップルミュージックとかスポティファイとかだんだん普及してきたけど、それでも音楽ってなかなか、本当に気に入ったバンドしかアルバム丸ごと聴いてもらえやしないし、リード曲のイメージで語られがちなのは仕方ないとは思うんだけれど、それにしても

「あのドメジャーのバンドね」

 というイメージが先行しすぎだなと思う。

 

着実に売れた、珍しいバンド

 このsumikaというバンドの異質であり、偉大な点は、バンド稼業には珍しく、ヒットソング依存ではなく、着実に売れていったという所だ。

 多くのバンドは、名前をYouTubeで検索するとトップに新曲を抑えて代表曲が表示されるようになっている。

 その一曲がバンドの顔となり、その曲の跳ね方次第でその後のバンドライフの規模が決まりがちなのだけれど、sumikaの場合はリリースのたびに少しずつ、でも着実に規模を広げていった印象だ。

 

 そういう売れ方をしたバンドって本当に珍しいんですよね。他に例を挙げられない。強いて言うなら、レーベルメイトのSUPER BEAVERとかか。理想的な売れ方ではあるんだけれど、体現するのは本当に難しい。

 なんでこんな売れ方をできたんだろう?とこの間sumikaが好きな友人と話あったんですけど、昔からのファンが温かいんですよね、このバンド。

 

 当時、sumikaが「これからやってくぞ!」とすごい勢いがあったときに、ボーカルの片岡健太が喉を壊し、活動が頓挫。

 そのファンの友人が言うには

「今のファンって、その期間ずっとsumikaを待っていたファンだし、活動再開した時は本当にうれしかったし、ずっと支えていこうって気持ちがすごい強い」

 なんか、いいじゃんなにそれ…

 確かに、復帰後の勢いと言えばすさまじく、倍々ゲームでワンマンの会場がでかくなっていった。

 そういった観点からも、やっぱり世間でいう所のメジャーバンド!というイメージは違うと思うのだ。

 

音楽性も別に変ったりしてない

「メジャーに行って変わった」

 バンドが誹られるときによく言われる言葉なんだけれど、sumikaもよくこういう角度でモノを言われる。

 というか、自分もそう思ってたクチで

 

 このsumika像から

 

 このビジュアルに変貌したときは、世界観がウォルトディズニーすぎて年パス吐きそうになったんですけど、よくよく考えたら曲調は初期からそんなに変わっていない。

 バンドらしい曲と、こういうドポップソング。両方のバランスがまさにsumikaで、初期に評価されたのがバンド楽曲、売れてからメジャー層に刺さったのがポップ曲。といった風に元々あった二面性を上手く使い分けてsumikaは評価を得てきたのだ。

 そう思うと

「星野源の真似っこだ」

 という意見は非常にナンセンスで、冒頭の女の言葉を借りて言わせてもらうなら

「星野源がメジャーシーンに現れる前からずっと星野源の偽物」

 なんじゃないか。sumikaは、星野源が星野源になる前から星野源だったのだ。

 そう思えば星野源の偽物呼ばわりは非常に失礼。目指す音楽の指向性に共通点があるだけで、星野源も、sumikaも、まぎれもなくオリジナルだ。

 

 知名度のあるバンドなので「名前は知ってる!」「グライダースライダーとかふっかつのじゅもんとかのバンドでしょ」という認識の人も多いはず。

 そんな人がこの記事を読んで、誤解を改め、今一度sumikaを聴いてみてくれたら嬉しいです。

 それでは。

 

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