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2017/04/15

レビュー 記事

媚びる気一切なし ロックな歌詞のハルカトミユキが好き

 ひと昔前は大人たちが何かあるたびに口をそろえて「キレる若者」なんて言っていたが、最近では逆に「キレない若者」というのが通説になってきた。役所の職員にキレてる若者をみたことがないし、コンビニのバイトにキレてるヤツは大体オッサン。若者はというとせいぜいムカついてもSNSで愚痴る程度。個人的には今の若者たちはキレる余力がないほどに疲れてるんじゃないかなと思う。

 とにかく若者がキレなくなったのは喜ばしいことだと思う。古今東西のヒーローが「争いじゃ何も解決しない」と言っておりますし、キレてる暇があるなら家でゲームしてたほうがマシでございます。

 ただ若者がキレなくなった弊害とでもいうのだろうか、一つだけちょっと残念なことがある。最近のロックバンドだ。特にいえば2010年以降の世代のバンド、個々で見る分にはあんまり気にならないが、全体を通して見ると非常にトゲが少ない。

排水溝に詰まった羽の折れた天使の死体に精液をぶちまける

THE BACK HORN - ミスターワールドより引用

 例えばこんなんとか。バチ100回当たれ。

 こちらは今回の記事のハルカトミユキも大好きだというTHE BACK HORNの2001年の曲からのワンフレーズ。このころのバックホーンは攻撃的な歌詞が多くてとても良い。「神様俺達は悲しい歌が気が狂うほど好きです」とかさ。

 上の例はちょっと極端だとは思うけど、最近のバンドはこういったちょっと「ウッ…!」ってなる歌詞が減ってしまったように感じる。

 今のロックも、もちろんそれはそれでアリだとは思う。だが時代が変わったとはいえ世界が楽しいことだけしかないこともなく、なんだかんだ嫌なことばっかりなワケであります。きれいごとだけじゃ生きていけないというか。若者がキレなくなったとしてもロックの需要は変わらずだということ。

 今回の記事はそんな腑抜け気味のロックシーンの中でハルカトミユキがめちゃくちゃロックしていて好きだ、というお話。僕が”ロック”に求めるギラつきを満たしてくれる。

 彼女らは女性二人組フォークロックユニットという、一見おとなしそうな音楽やってそうな編成にみえるけど、中身はガチガチのアツいロック。なんか元々バンド組もうと思っていたけど、人づきあいが苦手でこの編成に落ち着いたそう。馴れ初めがもうロック。

 というわけで今回は彼女らの魅力について。

スタンスがロック


ハルカトミユキ - 絶望ごっこ

 彼女らは歌詞が印象的な曲が多いが、その中でも特にパンチが効いてるのがこの曲。

どこかで聴いたような
美しく薄っぺらい言葉を並べて
陶酔してる 気持ちいいだろう

ハルカトミユキ - 絶望ごっこ 歌詞より引用

 広末涼子似の可愛らしいルックスからは想像もできないようなファッションメンヘラやその他諸々全否定の反骨精神溢れるクソロックな歌詞。

 この曲、誰それを否定するものというよりは、この曲を好きで聴いてる人まで含めて全ての人間そのものが持っている弱さみたいなのに向き合わさせる曲だと思う。僕みたいにひねくれた人間にはなまやさしい共感や傷の舐めあいよりも、こうやって真っ向から向き合われた方が伝わる。

 こういうスタンスこそがロックだと思うんですよね。ギター弾いてバンドで演奏すれば形の上ではロックだけど、やっぱりロックというのはこうでなくちゃ。

 

立体的な歌詞


ハルカトミユキ - ニュートンの林檎

 印象に残る歌詞のことを指して「言葉が刺さる」と表現があるが、僕がここ最近で一番「刺さった」歌詞がこの曲。

「勝てないお前が悪い」
「勝てない私が悪い」
勝てないお前が悪いから

ハルカトミユキ - ニュートンの林檎 歌詞より引用

 彼女らの歌詞、単純に触れて欲しくないようなところに踏み込んでくるロック的なところもすごく良いんだけど、それ以上に歌詞の存在感が半端ないところが凄い。

 どんな歌詞だろうと、しょせん歌詞は歌詞。どうしても画面の向こうの世界というかフィクション的なものとしてとらえてしまうものだ。だが彼女らの言葉はその壁を越えてコチラ側までくるように感じる。

 例えば映像が凄い映画なんかが画面から飛び出してくるような印象を受けることがあるが、そんな感じ。目の前にきて直接自分のことが歌われているような気分になる。

 

 作詞のハルカ氏は短歌が好きらしく、アルバムのタイトルも「真夜中の言葉は青い毒になり、鈍る世界にヒヤリと刺さる。」のように短歌の形になっている。

31文字に無理やり収めてる感じでしょうか。31文字なんですけど、31文字だけじゃないんですよね。何も説明していないのに、書かれている言葉以上のことが書いてあるように読めたんですよ。「これは私にとって小説や散文詩を読むよりも面白い」と思って、そこからいろんな歌集を読むようになりました。

CINRA - 驚異を生む言葉の作り方 ハルカ(ハルカトミユキ)×穂村弘

 彼女らの画面から飛び出してくる立体的な歌詞は、短い文字数の中で読む側の想像力を使って作品を完成させるという、短歌の影響があってこその歌詞なのだと思う。

 

表情が多い


ハルカトミユキ - 奇跡を祈ることはもうしない

 彼女らの魅力の一つは表情が多いところだと思う。単純にカラっとしたロックからちょっとひねくれてるけどラブソングバラード的なのがあったりと曲のバリエーションが豊富。

 だが、それ以上に歌の表情が多いところがグッド。今まであまり歌になってこなかった感情の曲が多いのだ。

 例えば上の曲。歌詞の内容としてはネガティブとポジティブが入り混じる複雑な感情になっているが、それに加えてサウンド的にサビの過剰なまでに壮大。

 この曲をどんな表情で聴くべきなのか、イマイチぴったりの言葉がみつからないのだが、一つ言えるのはハルカトミユキ以外では聴くことができない音楽ということだ。

 この曲に限らず、こういった替えの効かない独特の表情を持った曲があるのもハルカトミユキの魅力だと思う。

 

個人的にアツいポイント

 ハルカトミユキ、歌詞も良いし曲もカッコいいしでこの時点でもう完璧なんだけど、最後に個人的にこれだけはハズせないポイントがあって、ハルカ氏のスタイルの良さ。これ。

 いや、敢えて触れる必要もない気がするけどハルカ氏、顔はもう最高にカワイイ。だがそこじゃない。顔がカワイイミュージシャンは山ほどいるし替えが効く。

 是非ともこちらのライブ映像を見ていただきたい。注目すべきは本人じゃなくてライトアップで背景に映った影。45秒くらいのところがベストポジション。これが素晴らしい。

 シルエットフェチの僕から言わせてもらうと、もうね、最高以外の感想がありません。首から肩にかけての曲線と、ギターを構えた時のアンバランスな美しさ。とても良いです。この場を借りて照明担当の人に感謝を伝えたい。ありがとうございます。

 

 こうやって色々書いてみた思ったけど、ハルカトミユキ超いいなあ。

 曲がカッコよくて歌詞も面白くて、その上スタイルが良くて最高。あとバックバンドがハイレベルな人が沢山集まっていて、楽器演奏的な観点で聴いても大満足。

 ただ、一つだけケチつけるところがあるとすれば、ユニット名ですかね。今更なんだけど、彼女らのこと知ったの割と遅めのタイミングなんです僕。存在自体は結構前からは知ってたんだけど、名前からなんとなくシャバい音楽をやってそうな印象があって、なんとなく聴く気にならなかったんですね。

 最近になってTHE BACK HORNのボーカルと対バンしてるのを知って、聴いてみて、このザマでございます。クソハマりました。もっと早く聴いてりゃよかったなというやつです。

 というわけで、今回はハルカトミユキについてコッテリ魅力を語る記事でした。

 それでは!

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