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マスロック入門講座 toe 時雨 People でマスロックの勉強

 個人的にこのマスロックと言うジャンル、苦手だ。とても難しい。みなさんにはどうだろうか。

 マスロックとは?ハテ?という人たちの為にまずここにtoeの音源を置いておこう。

 初めて聴いた人からしたらば
「何拍子だよ」
 と、どこで頭を揺らしていいかわからず困惑してしまうことだろう。俺もわからん。何が見えてるのこの人たちは。

 英語表記ではMath Rock、数学ロック。つまるところ数学みたいに理詰めで複雑に積みあがった音楽というワケだ。アホの文系の俺なんかは拍子展開についていけず数1Aに取り残された落第生気分。しかし世の中にはこういった複雑さにこそ惹かれる人もいるようで、いまだに一部のファンから熱烈な支持を受ける一大ジャンルだ。特に楽器をやっている人間なんかには人気があり、プレイヤー的な視点でこのジャンルを愛好している人が多い。

 いまだに、と書いたが、このマスロックと言うジャンル、一昔前に大流行したのである。イワユル9mm時雨世代というヤツだ。

 9mmも時雨もマスロックか?と言われれば怪しいところではあるが、凛として時雨の台頭がこのジャンルの一大ブームを決定づけたのは間違いない。

 

 このカミソリみたいな高音ギンギンのギターと16の裏から入ったり高速でアルペジオをカマしたりする複雑なギターが世間的に"新しいもの"としてウケはじめたのはちょうどこの頃。
 邦楽ロックのシングルコイル信仰みたいなのが定着したのは彼らのせいじゃなかろうか。これ以前だとナンバガやブッチャーズ、イースタンとかあたりのモノだったと思うんだけど、このカミソリサウンドがいつの間にか邦楽の真ん中になっていた。

 

 今の流行と見比べると想像つかないかもしれないけれど、すんごい流行ってたんだよ本当に。右見ても左見てもシングルコイルで高速アルペジオよ。そう考えれば4つ打ちダンスロックだらけの今の音楽シーンの方がまだ健全なのかもしれない。
 ただ、当時いっぱいいた変拍子マスロックバンドはほとんど全滅している。そう考えると今流行ってるジャンルに飛び乗っているバンドなんかはみんなテイの良い集団自殺と同じなんじゃ…?

 しかしめっきり見なくなってしまったマスロックの中でも、People in the boxなんかは新しい事を開拓しつつマスロックど真ん中で頑張っている数少ないバンドだ。

 

 People in the boxと言えば、マスロックブームの中でも特に変拍子色が強く、演奏も3ピースとは思えぬ複雑さ。ボーカル波多野のキャラクターと歌詞上の言葉選びのかわいさからこのジャンルには珍しく女性人気の根強いバンドだ。

 しかし最近のピープルなんかはマスロックしているんだけど現代的、かつ新規リスナーにも聴きやすい、いい意味でわかりやすく進化している。

 進化だよ。思えば当時のバンドはどれもここ数年でわかりやすく、ノリやすく、ポップミュージックとしてよりキャッチーに改まっている傾向だ。ほら、時雨なんか複雑なことやってるようでちゃんと拍子を整えイントロとサビに派手さを集中させるようにしているし、あと単純にTK歌上手くなったよね…

 

 最近だと雨のパレード、chouchou merged syrups. TOKYO GUMなどなど、新しく、より鮮麗されたバンドが様々現れている。なんなら一時の衰退期と比べれば、またジワジワ人気が出始めているくらいだ。

 当時の人間は今やもう20代中盤、ロックバンドを聴き漁る10代真っ只中の人間たちからしたらこのマスロックというジャンルが今や逆に新しいのかもしれない。

 当時残響系を聴き狂ってた人間には、今こそさらに極まったニューカマーたちの音楽を聴いてみて欲しい。そしてまだマスロックというジャンルに触れたことのない人たちにはバンド業界の一大ジャンルとして是非一度聴いてみてもほしい。

 

 ブームが去ったからと言って、この実に日本的なこのジャンルが消滅してしまうのは、あまりにも勿体ない。

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