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2016/07/16

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アメリカのスクールカーストと音楽事情

タッチの浅倉南、容姿端麗で野球部のアイドル…女らしさが細胞の一つ一つからにじみ出ている。男性は知る由もないだろうが、女子マネージャー系の女は腹黒くあざとい。運動部を健気にサポートしている様に見えるその裏では、自分の手を汚さずに地味ブスを引き立て役に使い、孤立させながら運動部男子のハートを鷲掴みにするのだ。 廊下で擦れ違う時に後ろ指をされ笑われ、教室の片隅で90年代ロックをヘッドフォンで聴きながら暗い青春を過ごした一因は全て運動部とその取り巻きが影響しているはずだ。言うまでもないが、音楽オタ=スクールカースト底辺と運動部の間には暗黙のヒエラルキーが存在しており、悲しい事に社会に出たあともそのヒエラルキーは変わらない。

運動部に虐げられた根暗達がインディーズロックに目覚め、ギターを始める。モテたいだけのファッション・バンド連中は女子の注目を集めて文化祭などで活躍し、ひとしきりモテを堪能した後、キリの良いとこで見切りをつけて大手に内定を貰い、可愛い若い嫁と結婚して家庭を持つ。ブスを苛め抜いた女子マネ共は、2〜3年OLとして会社でチヤホヤされて適当に働いた後に寿退社。高年収イケメンと結婚し、優雅に専業主婦になり、ブランドバッグを肩から提げて趣味でホットヨガに通い出す。残されたのは本気で音楽に目覚めてしまった、スクール・カーストの根暗ども。運動部に虐め抜かれた恨みを音楽に乗せてギターを弾きまくり、全てのキャリアを投げ打ってバンドを組む。そうだ、これがロックだ、お前ら!!!

前置きが長くなったが、この基本的なスクール・カーストのヒエラルキーは、不思議な事に日米共通である。この世の果てに突き落とし、人生を狂わせ、地獄の黙示録真っ只中になるファクター与えてくれた運動部達への恨みは、日本もアメリカも変わらないという訳だ。ってことで、そんなアメリカのスクールカーストと、それにまつわる音楽事情を説明しよう。

アメリカの高校ヒエラルキー

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地下室読者は、ほぼ間違いなく「ルーザー」枠であろう。そうじゃないとこのサイトに辿り着かないし、この記事を読んでないはず。面白い事に、アメリカの私達、つまりルーザー達も音楽の趣味や生活観や価値観が基本的に似ている。

一般的に、アメフト選手とチアリーダー、見た目が可愛い・カッコいい連中がスクールカーストのトップとなる。日本で言うとこの、野球部を始めとする運動部と女子マネといった所か。運動神経・見た目・自己主張の強さに加えて、実家がお金持ちであるか否かもカースト上位に食い込める一因となる。親がお金持ちなら良い車に乗れたり、ブランド品が買えたりするから当然と言えば当然か。また、学校に多額の寄付をしていたり、PTAなど、親が権力を持っている場合もあるので教師も頭が上がず、いじめも見てみぬふり。日本の様にクラス分けがなく、担任の先生がいないので日本に比べれば生徒への責任はそこまで重くない。良くも悪くもドライな国である。学校のカフェテリア(食堂)で座る席が決まっており、クイーンビーやジョックを始めとするスクールカースト上位連中とアメリカのお前ら(ルーザー)は同じテーブルに座らせて貰えないのが有名な話。

各スクールカーストが大人になった後

元ジョック男性

ジョック学生時代

ジョック学生時代(イメージ)

ジョックが大人になった後

ジョック成長後(イメージ)

アメフトやらメジャーリーグ、ホッケーとオバマの政治にについて位しか話すネタがない。田舎者出身の癖に、自称ニューヨーカーのヤンキースファン(にわか)。ビジネススーツを着こなして、取り敢えずルーフトップ・バーに連れて行けば女は落ちると考えている安易で愚鈍な連中。普段着はラルフローレンのポロシャツを着ている。日本人駐在員もこの枠。何から何までミーハーで上辺だけなので、取りあえずダサくて話に深みがない上に差別的。全体的に上から目線で態度がデカい。

元クイーンビーと取り巻き女性

クイーンビー学生時代

クイーンビー学生時代(イメージ)

クイーンビー成長後(イメージ)

クイーンビー成長後(イメージ)

ヒールを履きこなせない、SAIC気取りの着飾った勘違いビッチ共。週末はTop40が鳴ってるダサいDJがいるダサいクラブで踊ってる。個性がない割にはうるさい自己主張の塊。しかし、彼女らは基本的に頭が悪いので、褒め殺しておけば気に入られるので案外付き合い易い。要は2〜3回デートしてお姫様扱いしたら結構簡単に落とせる。結婚して40代位になったら、年中無休ダイエット中のデブいおばちゃんになるのが90%の割合を占める。

スクールカースト上位が好む音楽
-One Direction
-Justin Bieber
-Ariana Grande
-Taylor Swift
-Beyonce
-Rihanna
-Maroon 5 etc.

基本的にTop 40のダンスチックなもの。日本で言う所のイグザイル等のDQNアイドル系に近い。
EDM調の曲がここ数年人気を博しているアメリカであるが、取りあえずアップテンポで酔っ払った時に楽しく踊れそうな、深みのない音楽を好んで聴いている奴が多い。実際音楽をそこまで真剣に聴いてる奴なんてスクールカーストの上位にはあんまり存在しない。これは日本でも同じ事が言えるであろう。この類の音楽聴いてる奴らとデートしたいか否か。

元スクールカースト底辺ルーザー

ルーザー学生時代

ルーザー学生時代(イメージ)

ルーザー成長後(イメージ)

ルーザー成長後(イメージ)

バンドを組んだり、本格的に芸術に目覚めてアートスクールに進学したり、英文科に進んで小説家を目指す者などのネクラが多い。ViceとPitchforkがバイブルで、家にテレビを置かずにNPR (ラジオ)とNY Timesが主な情報収集源。ビンテージや古着など、個性的なファッションにこだわりを持つお洒落なヒップスターに進化し、やたらブルックリンのロフトに住みたがる。男性はやたらヒゲを伸ばしたがるので、イエス様のような見てくれになる。マスト・アイテムは黒縁眼鏡と共通しており、日本との決定的な違いは刺青率が多い事。基本的にレコードでしか音楽を聴かず、アンチスタバで、ローカル・コーヒーショップでMacを持ち込んでフリーランスの仕事を行う。無意味なベジタリアンが多い。男女共に、無名バンドのショーやテクノのイベントにはほぼ毎週顔を出す。自称アーティストが多いので基本的に低所得である。日本のサブカル民衆を少し上から目線にして、アメリカ特有の他人をイラっとさせる要素を足した感じ。要するにお前らの方が500倍謙虚だ。

日本のサブカル民衆の更に上を行くレベルで音楽にこだわりが強過ぎる奴が圧倒的。他人が知らないドマイナーな音楽を聴きたがるので細分化され過ぎていてリストアップが難しい。大まかなジャンルで許してくれ。

-オルタナティブ・ロック
-ポスト・ロック
-サイケデリック・ロック
-ポスト・パンク
-シューゲイザー
-テクノ
-エレクトロ etc.

とにかく、人とは違う音楽を聴いて流行の先取りしたい奴しかいない。”I am a music nerd.” 「俺、音楽オタクだからさ」とドヤ顔でレコードをかけて、バンドの知識をひけらかしバトル等が家会等でよく行われる。彼らを弄る有名なジョークが “I knew that band before they were famous." 「このバンド、売れる前から知ってた。」

スクールカースト底辺と関わりのある音楽

ニルヴァーナ

厳しい家庭環境で育ち、不良グループのパシリだった上に虐められっ子だったカート・コバーン。スクールカーストの底辺中の底辺にいた彼。そんなネガティブな中二病エネルギーがグランジロックの大元となり、ロックを語る上で歴史的な人物に下克上するという私達の思い描く理想のロックスターである。彼のリアルな生い立ちが、スクールカースト底辺に絶大な支持を受けている。

マリリン・マンソン

コロンバイン高校銃乱射事件の犯人に悪影響を及ぼしたバンドだと当時メディア(保守派のFOXニュースが率先して報道)に叩かれていたマリリン・マンソン。しかしながら、反キリスト教のバンド精神から、共和党や宗教的圧力からのでっち上げとの信憑性が極めて高い。アメリカの闇は深いぞ、坊やたち。マンソン先生が聖書を燃やしたくなる気持ちも分からないでもない。尚、アメリカ現地でも「マリリン・マンソンが好き」というと、世代を超えて高確立でドン引きされる。このコロンバイン事件、アメリカのスクールカーストそのものを反映したような根深いものである。スクールカーストの最底辺にいるような生徒がジョック達に虐められていたのが大量殺人の動機となった背景があり、問題は銃だけでない。社会の全体像を改めて考え直させられるものがある。事件から17年経った今も、スクールカーストもいじめも存在するし、銃乱射事件もいまだに歯止めが効かないまま。

Linkin Park “Numb"

アメリカ人に「青春のエモい曲」と質問すると、この曲が最初に挙げられる事が多い。人とは違う自分、周りと上手に溶け込めない疎外感を上手に現してくれている一曲だ。このMVも主人公の女の子が絵を書くのが好きというサブカル感が強調されていて、ルーザー達の共感をより多く得ている。
他の曲だと、メジャー所だが”Crawling”も、なかなかエモい。

Green Day "Boulevard Of Broken Dreams"

アメリカ代表のエモい曲、その2。リンキン同様、Green Dayは他の曲もエモいのが多い。ニューヨーク特有の、たくさん人がいるのに孤独になる感情をコンセプトに作られた曲らしいが、多くの若者の感じるそれと同じで共感を呼んだ。正統派イケメンではない、ちょいぽっちゃりのボーカルが最高にカッコいい音を鳴らすバンドのフロントマン…この事実もルーザー達に夢と希望を与えたのではないか、と勝手に分析している。

若干古いセレクションだが、音楽好きは一度は通るであろうバンドだと思う。
国境と時代を超えてスクールカースト底辺に愛されていると考えると、なかなか感慨深い。


言うまでもなく日本の中高でルーザーだった私は、社会人になった今でさえも、元運動部のエリート駐在員共に、合コンで完全無視された後に私だけ会計を多めに払わされるなどの扱いを受けて虐げられている。学校を出て、国を変えたってこのヒエラルキーは何一つ変わらない。
しかしだ、キレイ事の様に聞こえるかもしれないが、そんな辛い時でもいつも側にいて力をくれるのは大好きなバンドであり、音楽だ。
学生時代から十年以上経った今も、この事実だけは変わらないし、裏切らない。
私達には、リア充共のキラキラした生活はもう手に入らないかもしれない。しかし、奴らには分からない音楽の魅力に気付けて、心から音楽を愛せているというのは、ある意味リア充ウェイ共の何百倍も充実した人生を送ってるんだぜ!!…そう思わないと人生やってられない。

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