現役高校生『シンリズム』が卒業するけど、この先やっていけるのか。
最近若い世代の台頭が凄い。
The fin.とかYkiki Beatが平均年齢22歳ですよ!21歳なんですよ!って持て囃されてワーすごいなーって思ってたら先日ぼくのりりっくのぼうよみがやってきて17歳とか言い出した。
17て、17ってお前な。先に並べてた2バンドがオッサンの集まりに見えてしまうくらい若い。早摘みが過ぎる。一儲けしたい大人たちの影がチラつく。そのうち中学生とっ捕まえてきてデビューさせたりするんじゃないだろうか。もはや音楽的児童ポルノ。
現役高校生アーティストってだけで注目が集まるもんな。仕方ない。同世代のティーンなリスナー達からは共感と尊敬の眼差しを集めるだろう。20歳を超えたオッサン達からは粗探しと嫉妬の目線で睨まれることだろう。
だがしかし別に高校生ってだけで担ぎあげられているわけではない。ぼくのりりっくのぼうよみ(これなんて略すの?)にしても、これから紹介するシンリズムにしても、メジャーの世界で充分に戦えるだけの実力を備えて、自らそこまで上り詰めている。
粗探しは諦めて、俺たちオッサンは鳥貴族に帰ろうぜ。
高校3年生、シンリズム
キリンジじゃん。キリンジが転生したの?ってくらいキリンジ。
そんなシンリズムは神戸在住の高校3年生。公式HPではこう紹介されている。
ニューウェイヴやインディロック、ルーツロック、ソウル、ファンク、R&Bにポップスまで
時代も国境も越えた様々な音楽のエッセンスを吸収した上で生み出される楽曲・サウンドは
10代ならではの自由な感性と10代とは思えない洗練された完成度が同居し
新世代のポップ・マエストロとして注目を集めている。
なんかもうあちらこちらで目にしてきたような紹介文だ。面倒くさいからシティ・ポップって言っとけばいいじゃん。キリンジも自称してるし、みんな食いつくよ。
昨年春ごろから上記の曲「心理の森」が全国のラジオでゴリ押しパワープッシュされているので、ラジオリスナーの方々はきっと耳にしたことがあるだろう。ラジオで流れたこの曲を聴いてあなたはどう思っただろうか。「耳障りだから消した」という方はほとんど居ないと思うが、「聴いた瞬間にiTunesで探し始めた」という方もあまり居ないのではないだろうか。「ふーんいいじゃんなるほどね~」とフラットな反応を示す人間が大多数だろう。いい。音楽としては時々聴きたくなる類のあれだ。断捨離しても手元に残す側の音楽だ。しかし、聴く人を遠ざける刺々しさも無ければ、一発で聴衆を中毒にする魔力も無い。それがこの手のポップスの弱点だ。
ラジオにしろ雑誌にしろ、彼を紹介するそこにはいつも「現役高校生の」「18歳の」「若き天才」などといった肩書が並ぶ。そうしないとインパクトが弱いからだ。同じ音楽を25歳の新人がやったら、そこまで大々的なPRは組んでもらえないだろう。
キラーチューンの不在
この眼鏡、ごはんですよを思い出すからコンタクトとか試してみたらどうだろう。
アルバムを全編通して聴いてみると、仕事ぶりは本当に丁寧だ。もうちょっと自由にやっちゃって良いんじゃないのって老婆心しちゃうくらい淡々とポップスしてる。管楽器をふんだんに使って、「superfine」ではグロッケンやマリンバもトッピングしている。「処方箋」では山下達郎かよってくらい昭和めいたパーカッションとカッティングが印象に残る。
アルバムのリードトラックである「心理の森」にしても、シングル曲のこの「Music Life」にしても、弱い。「僕がシンリズムでーーーーーーーす」って自己紹介をするには、いささか弱い。こういうジャンルの音楽では仕方のない事なのかもしれないが、彼を彼たらしめる存在感を持つ曲が欲しい。メジャーの荒波を乗りこなすだけの武器を持って欲しい。
生き残って欲しい。
来る3月20日、大阪は梅田のShangri-Laでシンリズムのワンマンライブが行われる。「高校生の」シンリズムとしては最後のライブ、いわば卒業ライブだろうか。
そこから先、現役高校生という肩書の外れた彼は大人の世界でどう立ち回るのだろうか。ここまで彼の手を引いてきた大人たちに突然プイッと振られたりしないだろうか。オッサンは心配だ。
シンリズムの曲は日常のどんな場面にもマッチする。家の中でも、ドライブのお供にも、オシャレなカフェにも。それが朝であれ夜であれ、そこに違和感は全く生まれない。
そういう音楽は我々大衆にとって必要だ。世の中が音圧メキメキの脂っこい音楽で征服されてしまうと、我々の鼓膜はメタボリックシンドロームで死ぬ。シンリズムのようなヘルシーな逃げ場所を無くしてはいけない。
彼の音楽が鳥貴族で流れる日を待っている。