WANIMAが売れてる。メロコアなのにWANIMAが売れてる。
WANIMAが売れてるのが面白い。
何が面白いってまずこの風貌が今の邦ロック界に受け入れられていることが面白い。
第一印象は完全にイカツイお兄さん。駅前でエンカウントしたら最低5メートルは距離をとりたくなるレベル。
どっちかっていうとロックじゃなくてフリースタイルダンジョンに居るほうがしっくりくる。下北沢じゃなくて渋谷の住人。
そんな「怖そうなお兄さん」がこの時代に「メロコア」をやって、しかもそれが売れてるという事実。何でだよっていろんな部分に突っ込みたくなる。
だから突っ込む。
だってメロコアだよ?
ドラムドカドカギターズンズンオクターブ。直情的な歌詞とメロディアスなボーカル。しかもベースボーカル。2分~4分でキッチリ終わる短い曲。そんでスリーピースバンド。どっからどうみてもメロコア。
「WANIMAってどんなバンド?」と聴かれたら、あれこれ説明する前にとりあえず「メロコアだよ」って返しておけば伝えたいことの8割くらいは伝わるはず。それくらいメロコア。
いやもうホントにこれ以上言い様がない。ハイスタやハスキン、モンパチがやってきたサウンドそのまんま。
ここまで書いたら尚更売れてる理由が分からなくなってきた。メロコアブームが起こったのはもう15年以上も前のことだ。
「じゃあその売れてるってのは、リバイバルに喜んでる世代にウケてるだけでしょ?」と思ったあなた。残念ながらそれは間違い。
若いリスナーに人気
懐かしいってだけで評価されるのであれば、支持する世代はメロコア全盛期に青春を送った元パンクキッズ、20代後半から40手前の方々がメインとなるはずだ。
メロコア界のリトマス試験紙Stay Gold。これ聴いて真っ赤になったらあなたは元キッズ。
確かにその世代にもウケてる。「最近いいバンド全然いねーなー」ってボヤいてた上司35歳が昨夏頃からWANIMA!WANIMA!ってやかましい。
メロコアキッズ魂が再燃してしまい、子育てを半ば放り出してライブ遠征に繰り出して奥さんが実家に帰る始末。「いい歳して何やってんだ」ってこういう時こそ使う言葉だね。
そんな感じで僕の周りの元キッズは例外なくWANIMAに夢中になっている。が、WANIMAを支持しているのは決してその世代だけではない。
WANIMAの公式Twitterをフォローしている人のプロフィールを流し見するとそれが良く分かる。若者が多い。それも青春ど真ん中の10代、高校生や中学生が結構な割合でいる。
試しに数百人分を集計してみると約30%が未成年。さらに年齢を出していない人の30%も未成年だと仮定するとフォロワーの約半数が未成年となる計算だ。
「オッサンはTwitterやってないんじゃね?」という意見もあるだろうけどそれはまた別の話。ここで言いたいのはフォロワーの半数である3万6000人の未成年がWANIMAに関心を持っているというところ。
3万6000人がどれだけの数かと言うとこんな感じ。
(ついでに鳥取県で例えると8人中1人がWANIMAフォロワーとなる。)
この数が示すように、WANIMAはメロコアを懐かしむ世代だけではなく新しい世代にもウケている。それはなぜなのか。
逆に新しい
元ロックキッズの話はここで終わり。ここからは若い世代の話をする。
かつてのメロコアブームが終わった時期には諸説あるが、ここではハイスタおよびAIR JAMが休止した2000年を終わりの年とする。となると今年20歳を迎える子でも当時4歳。4歳のヒーローはギターヒーローではなくアンパンマン。
つまり今の若い世代にとって以前のメロコアブームは全く縁のないものであり、良くてモンパチの歌をカラオケで聴いたりテレビのBGMでちょろっと耳にするぐらいのものだろう。
前回の記事でも少し触れているように、今の若い人達はメロコア味の薄い音楽を聴きながら育っている。そこへこのWANIMAや04 limited sazabysなどの新世代メロコアがやってくると、彼らの目にはどう映るだろうか。
きっと斬新でギラついた音楽に見えるはず。だから惹かれる。ギラギラしてるものにとりあえず触りたくなる年頃でしょ。10代って。
そして斬新なのはメロコアチックなサウンドだけの話ではない。
メッセージそのままの歌詞
上の方で04 limited sazabysの名前を出したけど、同じメロコアルーツの音楽でもWANIMAと04 limited sazabysには大きな違いがある。歌詞の中身だ。WANIMAの歌詞を一部抜粋してみる。
ありがとうを込めて歌った この気持ちに嘘はないと
さよならが教えてくれた 離れるのは距離だけと
ありがとうを込めて歌った この気持ちに嘘はないと
嗄れた声は嗄れたままに さよならが教えてくれた
離れるのは距離だけと
あなたがいれば それだけで いつだって思い出す声
何度振り返ってみても 呼び続ける声が 届いたら
泣かないで涙拭き笑みで また逢えたらあの頃のまま
分かりやすい。言いたいことをそのまま歌ってる。
伝えたいことをありのままの日本語で歌うバンドが大いに受け入れられてたのって、最後はいつ頃だろうか。ロードオブメジャーや175R、FLOWあたりが最後かな。
それがもう10年前のことになる。この10年は抽象的、比喩的な言い回しを用いるバンドが多かった。区切りをつけるとしたらRADWIMPSの有心論あたりからだろうか。
「12 11552 21」とかその極地。
鶏が先か卵が先か、ここ最近は思っていることをそのまま言うのはダサいという風潮すらあるのかも知れない。
言いたいことを言って、それがちゃんと受け入れられる世の中になれば良いけど、残念ながらそう簡単にはいかない。だから代わりにWANIMAが歌ってくれる。
好きな子に好きって言えない少年はWANIMAを聴いて勇気を出そう。もしフラれたら泣きながらまたWANIMAを聴けばいいよ。
ついでに言うとエロい歌詞の曲も多い。そういう面でもウケてるのかな?ムッツリかよ。
〆
支持される世代が幅広ければ広いほど、その分だけファンの絶対数が増えるのは自明の理。
WANIMAの音楽は、久方ぶりのメロコアに喜ぶ大人達と新体験に震える子供達の両者のハートを鷲掴みにしている。
昨年の夏に各地のフェスで見事にその名を知らしめたWANIMAは、勢いを増しながらまた今年の夏フェスにやってくる。
ファン層の幅広さで言えば彼らと肩を並べるバンドはそうそうないだろう。つまり今年のWANIMAのステージは群を抜いて盛り上がる可能性が高い。
あなたが観に行く夏フェスのタイムテーブルにWANIMAの名前があったら、真っ先に蛍光ペン引いといた方が良い。