とけた電球、で「自分は音楽が好きなのか」を再確認して欲しい。
そうやすやすと溶けちゃうような電球の下じゃオチオチ寝てらんねえ。
とけた電球、というバンドがいる。知人の紹介で知ったのだけれども何故今まで看過できていたのかわからないくらい、良い。ちょっと騙されてた。だってバンド名が「とけた電球」ですよ。サブカルチャーなメスたちが脊髄反射で飛びつきそうなサブカルキラキラネームよ。ほら、電球だし(うまい!)。
? とけた電球の話だ。このバンド、よくは知らなかったんだけども、僕の初聴きでは輪郭をなぞっただけで一端見送ってしまったバンド。でもなんだか数日後やっぱり気になってもう一回聴いてみたら「あれ、なんで一回通り過ぎたんだ自分よ」となるほど心の真ん中にストンと来るナイスな音楽していました。
たぶんその時探していた音楽と向きが大きく違ったのと、誤解されやすそうな音楽性。この二者が原因かと思われる。僕のせいではない。僕が悪かったことなんか一度もないし全部周囲が悪い。とけた電球側からも「いや、俺たちかっけえんすよ」とちゃんと連絡してほしかったよ。ちゃんとしろ。
電球ジョークはこの辺にして、改めて彼らの音楽を聴いて「あ、ちょっと自分は毒されていたな」と反省した。
話が進み過ぎた。とりあえず一旦聴いてみて。
細かいドラムパターン、クリーントーンのアルペジオ。これだけ聞くと
「あ、マスロック。残響」
そこそこ音楽が好きだった今の20代はこんなことを思うでしょう。僕は思いました。仕方ないでしょ。黒人の方が経営してるドラッグストアなんかあったら「あ、麻売ってるんだろうな」とか思うでしょ。いや、わかりづらいなこの喩え。とにかく2010年前後に流行ったマスロックの雛形で入口が始まるもんだから、それだと思っちゃったのだ。
しかし耳をそばだてて聴くうちにわかるはず、マスロックじゃねえこれ。むしろファンクだ。そしてポップ。
ギターの音なんかがまさにそうで、ジャズマスターっぽいギター弾いてるから騙されるけども同じクリーンはクリーンでも残響/マスロックの高音が尖ったクリーントーンじゃなくて、コンプの効いた優しいクリーン。よく見るとジャズマスじゃなくてP90乗ってるし。サビからのカッティングの音がマジでファンク。良い意味で邦楽っぽくない大人なギターサウンドだ。ペトロールズのカッティングサウンドなんか近いかも。
いろんな音楽が各パートぐちゃぐちゃに混ざっていて、聴きどころが多すぎる。なんだこのアタッククソ強いキーボード、アリかよ。メチャクチャ良いじゃん。これ誰思いついたの。メチャクチャ良いじゃん…
で、演奏にばっか気を取られるんだけど、ふと我に返って耳入ってくる歌よ。良いじゃん。
内装をすごいこだわってるオシャレなお店って、値段の割に料理がなんかイマイチだったりするでしょ、気取った味だったりさ。そういう感じでメシの味に期待せずに入った店が、ボリュームも味もストレートにウマい飯出してくる感じよ。歌いいじゃん。オイオイ言えよ早く。「あ、自分ら歌良いんすよ!」とか言え。歌う前に言え。困るだろ、こっちにも準備があるんだよ。
あ、ライブ行きたい。行きます。
いちいち歌メロが面白い。いいな。歌も良いのに後ろの演奏でも面白いことしてるもんだからどこ集中していいかわかんねえ。話の面白い美少女かよ。どっちかにしろ。うれしいな。
ギターソロまでおいしい。これあれな、ハンバーグについてるミックスベジタブルがウマいみたいなやつな。もうたとえ話やめたい。僕の文ばっかり読むな。自分で聴いてわかれ。
世の中には一定数、音楽性の好き嫌いを越えて「良いもんっすよね、これ」っていう音楽がある。とけた電球なんかがまさにそうだ。
みなさん新しいバンドを探したり、好きなバンドの新譜を待つうちに僕のように何かちょっとずつ毒されてきてはないでしょうか。大丈夫でしょうか。ライブで曲を聴くことよりもボーカルの顔見て手を振ったり、物販でメンバーとお喋りするのが目的になってきたりしてないでしょうか。大丈夫でしょうか。
一回素直な気持ちになってとけた電球を聴いてみてほしい。自分の音楽が好きな気持ちを再確認できるはずだ。よろしく。
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