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日本人は置いてけぼり WONK

「俺売れる前から知ってたけどね!」

好きなバンド、新しく発見したバンドの話を始めると聞こえてくる言葉とドヤ顔。「だからなんやねん」の一言だが、生まれてから今までこの言葉をまったく発してこなかったかというとウソになる。むしろめっちゃ言ってきた気がする。なぜか言いたくなるんだよな。

「みんなに知ってもらえるのは嬉しいけど、ちょっと寂しくもあるんだよね…」

子供の成長を見守る母親のようだ。こちらも「知らんがな」で一蹴だが、確実に言ったことがある。バンドの飛躍を喜ぶ気持ちと自分の嗅覚を自慢したくなる気持ちが入り混じって変なことを言ってしまうのは仕方がない。

今回紹介するバンドについても、数年後には上記2つの言葉が飛び交うことになる。彼らの名は"逆輸入"という形で日本中に知れ渡るだろう。その時にドヤ顔でいられるよう、ぜひ皆さんにも聴いておいて欲しい。

日本人は置いてけぼり。WONK

しのごの言ってないでまずは聴いてみよう。なんだったらまず目を閉じて聴いてみてくれ。


【Teaser】WONK -1st Album “Sphere”

夜中に1人、間接照明を頼りにソファーに座って酒でも飲みながら聴いていたい音楽。もたるドラムにモコモコしたベース、一筋の光のように間を埋めるピアノ、重なるコーラス。聴いているだけで少し大人になったんじゃないか、深みある人間になれたんじゃないかと錯覚する。格闘技見た後に自分もケンカ強くなったような感覚あるよね、それみたいな感じ。

SuchmosRAMMELLSのようにブラックミュージックを色濃く反映させた若手バンドの1つとしてWONKも紹介したいところだったが、どうやらWONKは違う。

SuchmosやRAMMELLSはソウルやファンク、アシッドジャズなどの黒い部分と日本人が好む分かりやすい楽曲構成やノリやすさのバランスをうまくとっているが、彼らに関してはほぼほぼ黒、有罪。枠組みで言えばRobert GlasperHiatus Kaiyoteと一緒、フューチャーソウルだ。

フューチャーソウルとは、ソウル・ファンク・ジャズ・ヒップホップからドラムンベース・エレクトロなどなどジャンルの垣根を越えて"良いとこ取り"していった最新の音楽ジャンル。いろいろ混ざってるけど、主軸はソウルだよねってことでフューチャーソウルだ。

場所や時間に囚われていた音楽性というやつがインターネットの発達によりごちゃ混ぜになった結果がこれ。ちなみに本人たちはエクスペリメンタル(実験的)・ソウルと言っているが、私はWONKはフューチャーソウルだ、と言っちゃう。ごめん。

WONKはどうやらインターネットどっぷり世代、日本人でありながら日本人であらず。サウンド真っ黒、世界基準。

ちょっとは日本人のこと考えて欲しい


WONK - “Feelin’ You (Y.N.K.)” (Live @Architect Cafe, 2014)

真っ黒だ! 世界基準だ! と言ってきた。この曲も目をつぶって聴けば日本人とは思うまい。がしかし、本音を言うと、もうちょっと日本人のことも見て欲しい。サウンドが真っ黒なのは素敵だが、楽曲のほとんどが英語詩だ。中学2年生で「使わねぇよ」と英語を放棄した身にもなって欲しい。めっちゃ使うじゃん英語、なんで日本人に言葉の壁ぶち建てられなきゃいかんのよ。

WONKのサイトもそうだ。もうずっと英語! こうやって記事を書くためにバイオグラフィーも開くが、読めない。思わずグーグル翻訳にコピペしてぶち込んだ。

wonk2

カタカナで返される、困る。頼むから日本語でも書いていてくれ。日本人を置いていかないで。

どうやら"盛んに脈打ち躍動する力は野心と創造力を導き出した。だからジャンルの壁を越えて音楽好きにWONKを届けたい”ということらしい。あってる?

とはいえ、英語がその場で聴き取れなくても十分かっこいいのは確かだ。WONKには悪いが歌詞の内容に関わらず、電車のドアに寄りかかってビルを眺めるとき、寒空の下シャッター通りを歩くときなど日常を少しカッコつけて過ごしたいときの音楽として使わせてもらう。ありがとう、ボーカルのヒゲの人。

YMOやBOOM BOOM SATELLITESと並んで逆輸入扱いになる

wonk3

今の日本ではフューチャーソウルは大衆受けしていない。なんだか小難しいな〜どこで盛り上がったらいいかわからないな〜と避けて通る方がほとんどなのだろう。だからWONKは日本人向けに音楽を作っていない、最初から海外目当てだ。

どこでも言われているが日本の音楽シーンは欧米の数年遅れ、フューチャーソウルが馴染んだ5年後に"向こう"から彼らが手を振って歩いてくるだろう。そのとき「はじめまして」でなく「お帰りブラザー」と言えるように今からWONK聴いておくべきなのだ。

そして目をキラキラさせて「WONKって知ってる?」と言ってくる友人に言ってやろう。

「俺売れる前から知ってたけどね!」

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