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2015/09/07

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THE PINBALLSはブランキーでもミッシェルでもねえぞ

 THE PINBALLSをBlakey Jet Cityの再来だとか次世代のThee Michelle Gun Elephantだとか、そんな言葉で済ませてしまうような職業ライターはもう耳か頭かその間の神経かが老い腐ってしまっているに違いないからさっさと首を括って若い奴らに任せちまったほうがいい。ベンジーは二人もいらないしアベはもう十分ギターを弾いた。THE PINBALLSはブランキーでもミッシェルでもない、真似してできるような域はとっくに超えている。ガキもゾンビも神父も悪魔も、男ならTHE PINBALLSを聴こうぜ。

歌詞

 彼らの歌詞を真似して枕を書いてみたが、ただ品のないAmazonのレビューみたいになってしまった。

幽霊船のウィリーが片目を閉じている間に
二人は笑いながら
涙を流しながら
言葉を探していた
Baby Baby
全てが終わって良かった

 まったく状況がわからない。一朝一夕で真似できるような言葉選びではない。そもそも日本人は日常生活で幽霊船と関わる事があまりないだが、なぜこの単語を引っ張ってくることができたのか。
 ここでも「ブランキーの歌詞とおんなじじゃん」と言う冴えない意見が聞こえてきそうだが、彼らの詞はもっと中世・近代ヨーロッパのダークファンタジーのような匂いだ。ブランキーがライ麦畑でつかまえてならばPINBALLSはある貴婦人の肖像だ。他の後発ガレージバンドを鑑みればかなり異質、リボルバーって言っただけで同じだと切り捨てるのはやめてくれ。そこは様式美であり、J-POPが失恋を唄うように、V系が薔薇を噛むように、臭メタルがドラゴンを倒すように、タンバリンとリボルバーは外せない。そんなこと言えばブランキーとミッシェルだっておんなじになってしまう。

 先ほどの片目のウィリーの話に戻るが「幽霊船のウィリーが片目を閉じている間に 二人は~」とAメロを唄ったまま、同じ歌詞でBメロからサビに突っ込む歌詞構成は何を聴いて閃いたのだろう。かっこよすぎて失神しかけた。

 念押しだが、ビンボールズの歌詞をブランキーの焼き増しだと言うな、タンバリンでぶん殴ってバイクで轢くぞ。

「カッコイイ」がある

 

 なんだかんだいいつつミッシェルの大ファンの僕だが、THE PINBALLSの中屋のギターはアベのそれに負けず劣らずの良さがある。
 後発に正気を失ったカッティングギタリストを大量生産した、カッティングの鬼アベフトシの

「ミッシェルの曲は、曲が始まってから終わるまで俺のギターソロ」

とは違い、中屋は引くところは引きつつ思わず耳奪われるような工夫で飽きさせないギターを弾く。大半のギタリストは楽曲中に己が持てるすべてをぶつけてくるが、対して中屋は「落とす」カッコよさを知っている。自分が信じる「カッコイイ」を知っているギター、余裕がないと弾けないギターだ。あんなにも楽しそうなフレーズを弾けるギタリストはそうはいない。

 

 楽曲からも彼らにとっての「カッコイイ」を端々に感じる。

 ガレージロックの楽曲は、音楽理論なんかを引っ張り出せば「ペンタとブルーノート」で片づけられてしまうような簡単なもので、ブルーノートをパワーコードで弾いたリフを中心にカッティングを混ぜれば驚くほどそれらしくなってしまう。ここで引き合いに出すのは良心が痛むが、a flood of circleなんかがまさにそれだ、彼らには彼らの良さがあるのだろうけれども楽曲構成とギターの妙は完全にPINBALLSに軍配が上がる。a flood of circleの良さについては別の寄稿者が愛に溢れた記事を書いているのでそっちを読んでほしい。今回は悪いがPINBALLS絶賛の記事だ。

 2000年代終盤以降の邦楽ロック特有のジャッギジャギのギターと、一回の試聴で満足させない底の深いフレーズの嵐、しかも韻は踏み、安易に曲を高揚させ切らない。人の真似事で終わらず自分が信じるカッコ良さが溢れ出て仕方がないというような曲ばかりだ。邦ガレージロックだけで収まらない音楽ルーツの底しれなさが楽曲に現れてる。

劇場支配人のテーマ


(ニコニコ動画で申し訳ない)

 ぐだぐだ僕が垂れたことを凝縮してぶっ放したような気の狂った曲を、PINBALLSがアニメのエンディングに提供したのでこれを聴いてほしく今回の記事を書いている。なんなら読まなくていいからこれ聴いてくれ、どんなに面倒でも聴いてくれ頼む。二回目のサビを聴き終わったころには

アアアアアアイエエエエエエエエ!!!!!

と叫びながらタワーレコードに駆け込み、まだ音源が発売されていないことに逆上!怒りに囚われニンジャと化したあなたは従業員二名をカラテで殺害!ワザマエ!向かいのHMVを睨みつけネオサイタマの夜へと消えていった…、となるはずだ。

 まぁ、ならないにしろ「いつか書かねば、しかし文量がさかむなきっと、今日はやめておこう」としばらく地下室TIMESに載せることを敬遠していたTHE PINBALLSを、この一曲ワンコーラスの視聴で憑りつかれたかのように2時間ぶっ続けで2000字あまり書き連ねてしまうような衝撃がある。僕はニンジャになっていたのかもしれない。

 とにかくかっこいいから聴いてくれ。まだ売ってないからほかのCDを買ってくれ。ハマってくれ。

アアアアアアイエエエエエエエエ!!!!!

THE PINBALLS
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