音楽的傾向から考える、次に流行るバンド
音楽的傾向だなんて、仰々しく書いたが身構えないで欲しい。今回登場するのは拍の話と農民とディズニーランドだけだ。
まず今の流行について。ご存知、4つ打ちダンスビートだ。
2013頃から現在に至るまで、実質邦楽ロック全体をシメているサウンドであり、別名卑怯ドラムだ。これを取り入れるだけで卑怯なまでに踊れるサウンドに仕上がるのである。
KANA-BOONのないものねだりの大ヒットが決定打となり、ここ3年の邦楽ロックシーンは猫も杓子もダンスビートだった。
*実例
頭拍でキックを鳴らして裏拍でハイハットを叩いて3拍目でスネアのこのパターン。聴いた事あるよね。ここ数年は空前のダンスピートブーム。ファンたちが意識しようとしまいと、バンド側やA&Rの皆さんは「ダンスピートを使わなきゃ売れない!」とまで考えていたようだ。個人的には、たぶん聴いてる側はそんなことよくわからんまま聴いていたと思うんだけど、どうなんだろ。
思えばブームやムーブメントっていつも気がつかないうちに来ていて、気がついたらそれが当然のように世間様に居座っているというパターンで波及している。人類は一生流行に踊らされ続けるのだ。おそ松見てSNOWで自撮りしてポケモン捕まえて一生を終える運命にある。
で、今回の記事で主張したいのは「ダンスピートの次流行るのは、こんなサウンドなんじゃないか」ということ。
実はもう流行りつつある。実例を挙げて解説していきたい。
爆速ドリフ
人気爆発中のバンドsumikaから。
23秒時点から始まるイントロを聴いて欲しい。こういったメロディ、最近よく聴きやしませんか。
言葉で説明するとなると難しいが、表拍を必ず鳴らして数拍に一度裏拍を入れる長調のメロディ、といった所か。
これら、以前別の記事でも書いたがアイドルでは数年前から採用されていた手法である。
音がアホ。日本古来より伝承されし農民一揆メロディである。
このメロディ、本来はダサいものとして扱われており長らくの間邦楽では使用を忌避されていたメロディである。テンションがマジで年貢に堪え兼ねた農民のソレ。江戸いライスシャワーサウンド。金曜の夜、ふんどし一丁で踊るダンスフロアは田んぼ、そういうノリ。
たぶん、僕らの心に訴えかけるこの江戸感の正体はこれ。
ドリフのオチで舞台装置が回る時のアレです。これが多分知らぬ間にDNAに刻み込まれてんだ。
このドリフのオチのサウンドを爆速で奏でるのがアイドル界から波及し、ちょっとしたブームになっているようでホントそこいらで聴く。まだこのサウンドに名称はないようなので以降は便宜上"爆速ドリフ"という名称で呼ぼうと思う。流行れ。
爆速ディズニー
「あれ?でもさっきのsumikaの曲、ドリフっていうよりも…」
そう思われた方、正解です。別の例を見てみよう。
今年爆売れの新人ミセスの5人の代表作、StaRtだ。一耳聴いてノータイムで
「クソうるせえエレクトリカルパレードみてえなイントロだな」
と思った。多分みんな思ったよ。
前述のsumikaのグライダーグライダーもこっちに分類されると思う。これらを爆速ドリフの派生亜種、爆速ディズニーと名付けたい。
ドリフのディズニーの明確な違いはおそらくペンタトニックスケールで弾いてるか、メジャースケールで弾いているか、みたいな所だと思われる。3度7度抜きで弾くと農民、全部入りで弾くとネズミだ。数字の話はよくわからんというひとは「音がトンでてバカな方がドリフ」ぐらいに思っていただければオッケーだ。
この爆速ディズニーが邦楽ロック界の次なるトレンドになるんじゃないか、というのが今回の記事だ。たとえば。
ほら爆速ディズニー。クソカッコイイエレクトリカルパレードよ。ドリフからディズニーになるとメロディのIQがちょっと上がった感じがする。60から62くらいに。
ほらドリフ。僕の中の農民がクワを片手に騒ぎやがる。このチョイダサい感じをエッセンスとして取り入れるのがトレンドらしい。なるほど。
どうでしたでしょうか。みなさんドリフとディズニーはお好きでしょうか。
今回取り上げた2タイプのサウンドは耳障りとしては「ハッピーなバカ」みたいな感じ、大衆ウケとしてはハナマルだけれど、本来バンド音楽に傾倒する根の暗い人たちからの支持は得られないと思われるので、おそらく反動で硬派なサウンドのバンドも頭角を表すと思っている。個人的にはそっちを期待している。
これから街からこのスットコドッコイなリズムが聴こえてきたら「ドリフだ…」と思うが良い。
爆速ドリフ、爆速ディズニー、このキーワードを踏まえてこれからのシーンに注目だ。