Sony Musicの社員にハイレゾ音源聴き分けテストをさせてみた
先日、当サイトのメールアドレス宛に一通のメールが届いた。
「突然のご連絡失礼いたします」
から始まるメールは、真っ先に当サイト名のスペルを間違えており、宣言通りの突然の失礼っぷり。さすが大企業と言ったところである。
内容を要約するに
「ハイレゾを売りたいのでプロモーション手伝ってください」
とのこと。
そう滅多にいないとは思うが、ハイレゾ自体を知らないアナタの為にハイレゾとは何ぞやをザックリ説明すれば「専用機器で聴く超高音質音源」だ。今めちゃくちゃプッシュされている。
話は戻ってハイレゾのプロモーション… いや、そんなこと言われても、である。
考えてみて欲しい、このサイト、あるいは別のインターネットで
「ハイレゾは最高、普通の音源聴いてる奴は素人、耳が童貞」
みたいなことを書いたとして、みなさん「あ、ハイレゾで聴こ!」ってなるんですか。ならないよね。なるっていうなら目標達成だよ。この記事終了。moraでハイレゾ買って寝ろ。
しかし、みなそうもアホではあるまい。このサイト見てる奴なんか全員精神病の人間不信みたいなのばっかなんだから普通に宣伝をしたところでむしろ逆効果なのは目に見えている。
そもそもである。僕自身ハイレゾに関しては圧倒的に懐疑派。ソニー嘘ついとると思ってる。上場企業は嘘ばっかつきよるでな。
冷静に考えて欲しい。普段みなさんが聴いているmp3音源の時点で人間の耳に判断つかないレベルで十分音質、wavから圧縮してあるのにも関わらずだ。これについて当サイトのオタク部門谷澤くんが詳しい解説を2年も前に執筆しているのでそちらを拝読なさってほしい。
mp3とwavの違いも、西野カナとJUJUの違いもわからない僕たちに、ハイレゾなんで不要の長物。というのが俺個人の見解である。絶対聴き分けられない。プラシーボ。ソニーはそれよりVRで見れるAV作れ。
というわけで、僕は個人的に、純粋に気になった。
「ハイレゾを売ってるソニーミュージックの社員さんはハイレゾ音源と普通の音源をブラインドで聴き分けられるのか」
身体で証明する。それが誠実さである。僕にも僕で嘘は書きたくないという一抹の矜持くらいはあるのだ。
「返信返ってこないだろうな〜ソニーだし」
と思っていたら翌日即「いいでしょう。やりましょう」と返信が来ていた。このスピード感、絶対上司を通してないスピード感だ。ワシャ知らんぞ。
そんなわけで招待されるがまま編集長谷澤と本社に向かったのが先日の話である。
ソニーミュージック本社にて、ブラインドテスト。
マジででけえ。乃木坂の一等地に何してくれてんだよ。引きで撮ったのに全く収まらねえよ。
案内されるがままビル内部に足を踏み入れる俺、そして谷澤。すごいね、バンドマンや地下アイドルの死体も積み上げればビルになるんだね。
これ見よがしに主張してくる。
そんなわけで、ご連絡いただいた担当者の斉藤さんに謁見。30代とのことだが実にフレッシュな印象のハンサム。しかしこの今回の顔出しは会社的かつ自主的にNGらしいのでので伏せてのご紹介。顔を出すと何がマズいんだろう。怖いんだけど。
もう一方、助手ということで普段から当サイトを愛読してくれてるという20代男性社員の中村さんにもご協力頂いた。お気に入りの記事はこれだそうです。もう一人「オイ!あそこの暇そうにしてるジジイにも聴かせようぜ!」と、お呼びしようとしたが、斉藤さんに「マジで偉い人だから本当にやめて」と怒られました。ので、今回はこのお二人で進行します。
まず、斉藤さん中村さんにテストして貰う前に、僕が聴き分けられるかちょっとテストしてみることに。
* 課題曲
曲のチョイスよ。
音質云々じゃなくて、なんだ。課題曲のせいで芸能人格付けチェック感が半端じゃねえ。
なんか、単純に音量自体も違ったような気がした。高音質というより、別物っぽい。
確かに差はあるな、とわかったところで早速斉藤さんにブラインドテストをしてもらうことに。ルールは簡単、僕がハイレゾとそうでない音源を交互に流し、前者後者どちらがハイレゾ音源かを言い当てるというもの。
mp3 : 128kbps
ハイレゾ Flac:24bit Khz数は曲にとってスペックが違う。そして再生時にはHRというハイレゾマークがでる。リッチ。
いざ試聴
まずヴィヴァルディの春から。
斉藤「ハイレゾは高音部に特徴があります。こういうクラシック音楽での楽器たちの生の響きは特に違いが顕著ですね」
中村「これ実際かなり売れてます」
〜試聴〜
斉藤「なるほどね…」
斉藤「アレ・・・おかしいな・・・今日は調子悪いかもしれん・・・」
中村「斉藤さん」
まずいですよ。水素水売ってる業者と同じ状態ですよ。
斉藤「いや!違いはありました!なんかこう、先に聴いた方は、包み込まれる感じが…」
斉藤「多分、さっき流れてた方です!いや、絶対!!」
ハズレです。おつかれさまでした。
取材終了。あとは家でソニーの悪口しこたま書いて終わりやで。と思ったが、斎藤さん「この体たらく、上司にバレでもしたら鳥取支部とかに飛ばされてしまう」「妻や子供はどうなるんだ」「2曲目だ。正解するまで返さんぞ」「お前らみたいなフリーランス殺して埋めればあとは会社が揉み消してくれる」など、よく憶えていないがそういった趣旨の事を32歳が真顔で言うので当たるまでやることにした。みなさん、SONYはこういう会社です。
2曲目 Nora Jones
斉藤「ノラは名曲ですからね、これは行けますよ」
中村「楽器数が少ないので音の住み分けがクリアに聴こえるはずです」
〜試聴〜
斉藤「これはもう間違いないですね。今流れてた方!」
おつかれさまでした。さっき流してたほうです。
斉藤「次行きましょう」
3曲目 ONE OK ROCK
斉藤「普段バンド音楽よく聴くんですよね。だからワンオクは大丈夫です」
中村「斉藤さんなんで恥かきたがるんですか」
〜試聴〜
斉藤「あー甲乙つけがたいなあ!バンドは差が出にくいのかな」
中村「そんなことはないですよ」
斉藤「後半のほうが若干音圧がガッ!としてたんですよね。うーん、前半かな?」
…
すみません。間違えて2回ともハイレゾじゃない音源流してました。
斉藤「殺す」
中村「斉藤さん」
自分の機材で聴いてみることに
3問連続で外すという快挙。耳のいい犬とかの方がよほど正答率高そうである。
しかしやっぱりこのままでは引き下がれない!と斉藤さん、自前のウォークマンを持ち出しそっちでテストをすることに。
斉藤「Aqua Timezでお願いします。個人的に思い入れがあるので外せません!」
斉藤「いやあ」
斉藤「アクアは音質じゃねえんだよ。歌詞なんだよ」
斉藤「でも音質が良かったのは明らかに後半です」
正解です!よかった。やっと正解した。これで帰れる…
斉藤「いやもう数曲だけやってみていいですか!普段聴いてる曲なら余裕でわかります!!」
というわけで最近ハマってるというNakamuraEmi、そして古馴染みのRHYMESTERから一曲づつ再テスト。
斉藤「余裕ですね。両方とも後半です」
急に当たりだしたので、追いつめられすぎてカンニングでもし始めたかと思ったが、氏も言う通り普段聴く曲ならば差は瞭然らしい。
中村「ちょっと僕もやってみてもいいですか」
曲何にします?
中村「ラブライブの、スノーハレーションで」
中村さんは、真っ直ぐな目をしていた。
中村さん「後半ですね。他の曲も聴いてみていいですか」
中村さん「上司があんまりに不甲斐ないんで、ちょっと頑張ろうと思います」
言うだけあり、ノラ、ワンオク、ヴィヴァルディ、全曲正解。斉藤は何だったの。
中村さん「よく言われることなんですけど、ハイレゾは気になる人には気になる部分の聞こえが変わるみたいで、人によって合う合わないがあるみたいです」
なるほど〜。
というわけで同行してくれた谷澤くんにも聴かせてみたところ、彼も5問中4問正解。斉藤は何だったの。
特に彼が試聴希望した宇多田ヒカルでは
「ハイレゾで聴くのを前提に作ってる感すらある」
そうで、ミックスからして違うらしい。
僕も5問中4問正解。斉藤よ…
個人的には「明確に差はあるが、どっちが良いかは人それぞれなのかな」という感想。ハイレゾでダイナソーとかニルヴァーナとか聴いても仕方ない気がする。明瞭なノイズって、何だ。
会議室の予約時間が終わってしまい追い出されたが休憩室でも日が傾くまでテストを続ける3人の図。楽しげ。
「こうやって聴き比べることなかったからなあ。こういう楽しみも宣伝していきたいね」
と締めた斉藤さん。そんなこと言いながら最終的にクラシックシリーズはやはり5割くらい外していた。全然聴き分けられてない。
しかし普段聴きの曲は違いにやっぱり感づくらしく、個人的にはPerfumeとかならハイレゾ音源で買いたいかも。
(と、思い調べてみたところ、Perfumeは今のところハイレゾ音源の販売はないらしい、おいおいヤスタカよ。頼むぜ)
ソニーミュージック社員ハイレゾ音源ブラインドテスト。結果は「好きな曲ならわかる」「人によってはその他はわからない」でした。
斉藤さん中村さんご協力ありがとうございました。またSpincoasterとかでハイレゾ試聴会やりましょう。
みなさんには違いがわかるかな。自信がある人は、是非試してみてはどうだろうか。
協力:mora