年上のバンドマンと会話を成り立たせる為の 2000年代前半の邦楽ロック part2
part1に続いて2000年代前半を代表する邦楽ロックバンドpart2。
この時代から現在に至るまで、10年以上の年月が経っているわけだけれど、意外なことに根本的な部分はそう大して変わっていないように思われる。せいぜい録音環境やミックスの流行り、リードギターの役割などが変化を見せたくらいだろうか。そこらへんは全部滝とか山田亮一とかナカタヤスタカのせいだと思う。
そういう音楽的な部分にはなだらかな、順当な変化しか感じないが、時代ごとに並べて今の流行と聴き比べたときに、精神性みたいなものには大きな違いが見受けられる。なんかここらへんのバンド全般的にシリアスで暗い。日本のバンド文化は概ね「不良→陰キャラ→サブカル→ウェイ」みたいな感じで時代変化を起こしてる気がします。どうも、陰キャラです。いまバンドやってる人も全員陰キャラ上がりです。ウェイのみなさんよろしくお願いいたします。
この時代は陰気とサブカルの中間地点くらいだろうか。今回も5バンドほど紹介したい。それでは。
Syrup16g
彼らに憧れてバンドを始めて、彼らになれなくて死んでいった人間は1ダース2ダースでは利かない。
難しいことをやっているわけではないのに誰も真似はできないし、メジャーキーの曲が多いのに全ての曲が陰惨に聴こえるし、長い間解散していたのに再結成後人気は減るどころか増す一方。
暗い暗いといわれがちな彼らの音楽性だけど、実際のところ「つらい」だの「悲しい」だの、そういう直接的な感情表現は少なく。やや明るい曲調で淡々と死の方向に向いてるような楽曲が多く、その押しつけのなさとか、作り物っぽくなさが硬派にダウナーな人間を惹きつけている。アルバムの最後に希望に満ちた清々しい曲調で「じゃ、いっちょ死にますか」みたいなテンションでモノを言い出す。それが五十嵐16g。
本当に根強いファンが多く、結果的に再始動一発目のライブとなったNHKホールの生還ライブでは一音目から会場全体が号泣だった。隣の席のギャル風のお姉さんも泣いてた。何の涙かわからんけど俺も泣いてた。
ART-SCHOOL、THE NOVEMBERS、Syrup16g、これらを三つ並べてメンヘラ大三元と呼んでる。今名付けたのでみなさん使ってください。冗談のような呼び名だが、この3セットでアツくバンドを信仰し、SNS上で共同体を作っている人たちが結構数いる。ここらへんも新規から旧来のファンまで幅広く普及している要因になっていると思う。行きつく先はここしかない、そんな感じもある。
好きな人はとことん好きなバンドになることだろう。覚悟してアルバムを買ってほしい。
THE BACK HORN
人類が平等だとか
愛してるとか
やらせろよアバズレ
バックホーンみたいなバンドって、いつから見なくなったんだろう。なぜか最近ではこの温度感のバンドをまったく見かけない。日本が平和になったのか。なにかに怒りをぶつけるのはツイッターで十分になったのか。
今の20代30代がなんとなく胸に抱く「最近のバンドなんか、違うな」はこういうところに集約されているんじゃなかろうか。上の16gの彼らもそうだけれど「この人たちバンドやってなかったら死んでるな」みたいなアブなさがこの年代にはあった。最近のバンドマンは良くも悪くも人間がちゃんとしている。ちゃんと働けそう。
ぬるいフォークソング撒き散らしてる奴ら
金を募金しろとうるさくせがむババア
-孤独な戦場
若さか根本的人間性か、こう無暗に人を敵視したり差し伸べられた手をなぜか振り払ってしまうような屈折した人間の卑屈の代弁のような役割がバンドにはあって、ポップミュージックにはなかった。少なくともTHE BACK HORNは、そういうところに救いを感じる人たちから支持を集めた。
こういうバンドが好きだったら、この年代以前を漁るしかない。もしくはハードコアに潜る。それか、またこういう音楽が流行る時代が来るのを待つかだ。
マキシマムザホルモン
なんかここらへんの年代の人たち、一番盛り上がってた時代の楽曲がYouTubeに曲一切上がってないんだけど、もしかしてそういう意図とかあるのか。
当時恋のメガラバとかそこら中で死ぬほど流れていたんだけど、なにがどうなってどういう経緯でホルモンは流行ったのか、まったくわからん。ギタドラとかにROLLING1000tOONが収録されていた影響とかもあるのか。なんかゲーセンでみんな叩いてた気がする。ていうかギタドラヤバい。話してる傍から超なつい。ヤバい。まだあんのギタドラ。maimaiとかスクフェスとかやってる場合じゃねえ。
デブ以外入場禁止でライブやったり、客全員にヘルメット着用を義務付けたり、ジジイだけでライブやったり、何年たっても初動から一切失速を見せず最高速で悪ふざけしつづける彼ら。そんで音楽が普通にカッコイイから誰も文句をつけられない。
当人たちもファンたちも「イロモノ」という意識をもってメチャクチャやってたのに、気が付けば結構早い段階で公然のものとなっていた彼ら。若い時タンポンとか投げて回ってた椎名林檎が今や普通に紅白とかに出てるのと同じようなイリーガル感がある。
面白要素が目立つ彼らだけど、冷静に曲聴くと普通にカッコイイ。特に亮君のギターの音色とか、上ちゃんの異様に音の小さいベースとか。
POLYSICS
正直なことを言うと、全然聴いたことがない。当時高校生、友達からこのアルバム借りて、初めて「全然良さがわかんねえ」となった音楽だ。
10年近く経った今、改めて聴きなおして思うのは「やっぱり全然良さがわかんねえ」「ていうか映像怖え」10年経ってピーマンもシイタケも食べられるようになったけどポリシックスはなんかまだわからん。また10年後再チャレンジしてみようと思う。
いまいち理解に至っていないにもかかわらず、それでも彼らをここに並べるのは、当時POLYSICSには確かにアツい人気があったからだ。
思えば、ガロや大槻ケンヂのような古風なサブカルじゃなく、今風のポップなサブカルマインドの走りにポリシックスは事故的に含まれていた気がする。
ちなみにあのちゃんでお馴染みのゆるめるモ!と衣装がカブってるのは元ネタのバンドが同じだから。たしか楽曲提供とかもあった気がする。
メンバーチェンジはあれどバンドはバリバリの現役、ライブは音バキバキ。僕のように「なんか違う」ってなっちゃう人もいれば「なにこれ大好き!」となる人もいるはず。ピンときた人は是非ライブへ。
the band apart
黙ってても弾けないようなフレーズを歌いながら弾くラガーマンと、メタル出身のモズライトと、元ラッパーの天才ドラマーと、ベースが死ぬほど上手いデブの4人がやってる一番カッコイイバンド。
まさかの元メタルバンド。ギターを弾く人は是非この曲Eric.Wはコピーしてほしい。そしてBメロ2のスウィープで死んでくれ。
どのパートを切り取っても聴き所しかない。彼らのせいで後発のバンドがこっち方面を狙うにあたって、技術的にも楽曲的にも求められる敷居が爆上がりした。特にドラム。仏のような顔してるのにただの連打に一瞬も甘えないフレーズの修羅。
フロントマンのガタイ的にも彼らを超えるバンドはもう出てこないんじゃないか。ベースの原の顔が面白すぎてギターの川崎が背を向けて演奏するのは有名な話。原の逸話は掘れば掘るほど出てくる。こんなに目立って愛されるベーシストも珍しい。
セールスで言えば並べた他のバンドから一歩劣るが、他に勝るとも劣らず強烈な個性を持つバンドだ。歴史に埋もれるには惜しすぎる。ぜひとも聴いてほしい。
彼ら以外にも
年代を代表する有名バンドを並べたが、彼ら以外にもこの年代にはこの年代らしいロックバンドがたくさんいる。
この空気感が好き!という人は、是非ここからもっと奥へ奥へ掘っていってほしい。
それでは今回はこの辺で!