2017年にブレイクしたバンド1組もいない説
バンド音楽が衰退してるみたいな話はもうされるだけされ尽くして草も生えない枯れた話題になってますけれども、今日はもっと具体的で切実な話。本当に2017年にブレイクしたバンドが1組もいない。ほら想像してみて。ちなみに前前前世・星野源/恋は去年です。
バンド単位どころかヒットチューンさえ怪しい状況。レコチョクの2017年上半期ランキングを見てみても、そのほとんどが2016年リリースの楽曲。2017年は、2016年の劣化コピー品です。
レコチョクを物差しにするのもどうかと思うけれども、上半期チャートがこの調子だと下半期(残り3か月)のチャートも判を押したようにそっくりこのまま、あとはCMソングやドラマ主題歌が追加されるだけっていうのが目に見える。見えるぞ。
流行がない
去年はシティポップっていうSuchmosを頭役に置いた明確なブーム・流行りがあって、そこに属される数バンドがまとめて脚光を浴びていた。他にも星野源とか、WANIMAとか、2016年は明らかに色があった。
その前はKEYTALK、フォーリミ、オーラルあたりがグッと人気を伸ばしていたし。時系列で追うとKANA-BOONが2014年。今現在もバンド音楽の中心はここいらにあって、THE NINTH APOLLOのバンド。マイヘアとかyonigeが去年から参画し始めたというのが今のバンドシーンの概状だと思われる。
こうやって名前を出していくと尚一層2017年の虚無が際立つ。空白の二文字がふさわしい。なにもない。
じゃあ約3/4が既に過ぎ去った2017年。強いて言うなら誰が売れたのか。残り1/4で伸びそうなバンドは誰か?ちょっと思い出してみよう。
おいしくるメロンパン
ミニアルバムリリースは去年だけれど、火が付いたのは間違いなく今年。うちのサイトでムチャクチャ書いたときも反応がすごかった。
バンドの売れ度合を数値化するのは難しいけれど、単純に再生回数や動員セールスの伸びもさることながら、Voナカシマに心酔している女性ファンの多さ。他のバンドと比べて圧倒的。「売れるバンドマン」に必要な素質を十二分にもっている。Earth Music & Ecologyとロウリーズファームを人工授精させてバンドにしたようなバンド。女子大生の生理周期に共鳴する声質。マジでメス臭い。売れます。
既に「売れている」に分類されそうだけれど、名前を見る頻度なんかを鑑みても第一線のバンドにはまだなっていない。けどこれからなる。絶対に行くところまで行くバンドだ。憎い。女性支持で売れるバンドが憎い。おいしくるメロンパンが憎い。絶対売れるから。
来るとしたら2018年頃にガンと来るんじゃないかな。売れてるし、もっと絶対売れます。
King Gnu
おいしくるメロンパンを、今の女性ファンを中心としたバンドシーンの寵児だとしたら、その双璧が彼ら。捻くれた音楽ファンたちも唸らせ黙らせるセンスの塊。
前身バンドSrv.Vinciから注目されていたけれども、そこから思い切ってのバンド改名&新譜リリースでますます勢い付いた印象。米津玄師の楽曲にギター&アレンジで参加するなど若い音楽ファンの目に触れる機会もありここからどこまで火がつくか楽しみなバンド。
「バンドマン然としたルックス」「恋愛詞」「歌謡曲」という若年層のバンドファンたちが軽薄に求める要素を一切排して音楽とセンスで勝負。流行ガン無視。これが流行れば国内の音楽シーンの何かが変わる。そう思わせてくれる4人だ。
ポルカドットスティングレイ
25~30歳付近の残響・時雨を聴いて育ってきた男性音楽ファンにぶっ刺さりの音楽性。ルックス。そういう人たちにウケそうなバンドだなあと出始めに思っていたら、想像以上の支持を集めメジャーデビュー。いたんですね、こういうの好きな人こんなにも。川べりの岩ひっくりかえしたらなんかよくわからん小さい虫がいっぱいいた時の「ゾッ」っという感じに似ている。
デューセンバーグ持ってこの歌い方。椎名林檎すぎるだろ… バラクオバマに憧れる人間がいても、のっちには憧れないのと同じで、ルーツ・影響元が明らかすぎるものに誰も憧れやしないだろう。と高をくくっていたんだけれど世間は意外とそういうところ気にしない様子。オバマを知らないでのっちのイエスウィーキャンを笑うような状態。驚いてます。
ネガティブにここまで書いたけれどバンド自体は面白いバンドだと思います。色も強くある。差別化という意味では完璧。最近は問題だったライブのライブ感なさも克服したともっぱらの評判。もう一度観に行きたい。
数字は出てるんだけど2017年きってのブームか?と言われるとウーン。という印象。だって
「今一番好きなバンドは?」
と訊かれて一番に彼女たちを挙げる若者は少ないと思うんですよね。誰かの「一番好きなバンド!」然としてない感じ。「知ってるし聴いたことあるし結構好き~」という人は多いと思うんだけどね。
teto
支持層にフォーカスしてここまで書いてきたけれど、tetoの全レンジ対応感。すごい。
このバンドの場合さっきと逆で、メジャーデビュー前のドインディーなので「知ってる~」という人こそ少ないけれども「一番好き」と狂信するファンの率が異常に高い。故に再生数に比例せず動員も多い。
1stEPに関しては現役のバンドにもかかわらず現在プレミアがついて7000円前後で取引されている。この間も物販付近で「1stってもう売ってないんですか?」と口惜し気に訊く女の子を見かけた。
スターの資質って、いかに「まともじゃない奴か」っていうところにあると思うんだけれどVo小池の歌詞や言動、質量のズンと重いライブから見いだされる狂人ぷり。人間を魅了するのに十分すぎる。
過ぎ去った夏が作り出した あの透き通ったあなたを思い出した
焦げたチョコマフィン、溶けた銃口、モノクロのリタ・ヘイワース
詩人で食っていけるセンス。そこにグッドメロディとちょっと寂し気なコーラスギターのバランスが絶妙。好きか嫌いかの物差しで言えば、今一番好きなバンド。歌と歌詞と真実味。俺がバンドに求めるものが全部揃ってる。
反響に対して全国知名度がまだまだ。でも10人に聴かせれば2人を恋に落とす凶悪なファン回収率から考えて、これから宣伝を受ければガンガン人気を伸ばすバンドだと思います。
今年は大ジャンプの為に膝を曲げてる印象。飛んだ時が怖すぎる。おすすめです。
他にもいっぱいいますよね
うちのサイト上での反応だとSUNNY CAR WASHとか、あと最近ラジオで激プッシュされてるPAELLASとか、流行りというよりはもう文化になりつつあるTHE NINTH APOLLO系のバンド、最近だとFOMAREとか、まだまだ思い当たるバンドはいますけれども今回はこの辺で。きっと人によって「いやこのバンドだろ!」という名前は違ってくると思うので残りはみなさんで楽しく議論してください。
玉座に誰も座らぬまま、残り僅かとなった2017年。誰の年になるんでしょうね。
それでは。