LUNKHEAD、家になる?
一部加筆修正。
メジャーデビュー11年目。
ベストアルバムも2枚発売しているベテランと言ってもそん色ないキャリアのバンド。
しかし・・・誰にも知られてないバンド。
英訳”でくのぼう”
愛媛県出身の4ピースギターロックバンド、LUNKHEADだ。
そんな潜りに潜り続けた悩める才能が、2015年とんでもないことを言い始めました。
もしかしたら売れるの・・・諦めたのかもしれません。
ニューアルバム『家』リリース!
・・・どうした?
※4/1に発売されるニューアルバム「家」のジャケットであり、困り果てた顔のサンプルではございません。
家?
家になるの?
一戸建て?マンション?ペットは可ですか?
空いた口が塞がらないので、ちょっと経歴を振り返りながら心を落ち着かせよう。
アジカン、バンプに成り損ねた
バンド名:LUNKHEAD(ランクヘッド)
ボーカル小高芳太朗、ギター山下壮、ベース合田悟、ドラム桜井雄一の4ピースロックバンド。
桜井以外のメンバーが愛媛県出身で、愛媛県新居浜市の高校の同級生4人で1998年結成。
ちなみに当時のドラム、リーダーは現在ザ・チャレンジでドラムを叩く石川龍。
その後4人は大学進学で上京し、東京で、改めてLUNKHEADを再結成。
下北沢のライブハウスを中心に活動し、インディーズシーンでその人ありと次第に頭角を現す。
2004年、下北ギターロックブームの追い風に乗り、次世代のスター候補として華々しくメジャーデビュー。
ちなみにどれくらいの追い風だったかと言うと・・・当時の下北ギターロックブームの牽引者と言えば、BUMP OF CHICKENを筆頭に、ASIAN KUNG-FU GENERATION、LOST IN TIME、ACIDMAN、GOING UNDER GROUND、レミオロメン。
「第2のアジカン」
「バンプの後継者」
果てには「ギターロックの最終兵器」なんて。
そんな恥ずかしいキャッチフレーズをバンバンつけられてのデビューでした。
・・・え?そんな鳴り物入りでデビューなのに、名前すら聞いたことない?
そうなんです、売れなかったんですねえ。
夕暮れとか擦り傷が似合いそうな、少年の佇まいを残した青年たちの鳴らすギターロック。
みずみずしくも痛々しくて、カッコ良かった。
若かりし自分は、心の中汚く弱い部分を代弁してくれているような、そんなやり場のない気持ちを叫ぶ歌詞にズッポリ共感した記憶がある。
でも、万人が感動するほどキャッチーでポップかと言われれば・・・。
アジカンはソリッドだけど一本芯の通った歌メロが何しろキャッチーだった。
レミオロメンの描写力は聴く人の想像力を200%引き出すくらい奥深くて万人受けする歌だった。
ランクは・・・
ギターロックの一翼を担うんじゃないかってくらい期待されてたのは本当ですよ。
確かに、当時ランクほどのインパクトがあるバンドがまだそんなに育っていなかったし。
でも、同時期、先人の成功に触発され、劇的に進化したバンドが多かったんですね。
ランクの同期デビューのバンドを挙げるとこんな感じです。
同期:THE BACK HORN、フジファブリック、マキシマムザホルモン、サンボマスター、the band apart、ストレイテナーなど
どう?そうそうたる面々でしょ?
2015年、ほぼ全員、今やフェスのメインステージクラスを掌握するバケもんですよ。
ランクはと言うと・・・出れるか出れないかのギリギリのラインで、出れたとしても若手と同じ小キャパのステージ。
デビュー時期が良かったと見せかけて、実は悪かったとも言える。
ホルモン、フジファブ、サンボは色物。
バンアパ、テナーは渋さを売りに。
そろそろシーンがギターロックに慣れ、そこから頭一個抜きんでる個性を求めていた時期だったことが、世間がランクの良さを十分に評価できなかった一番の要因だろう。
正統派が売れたから、次も正統派が売れる。
そんな二匹目のドジョウ話が甘かったのは紛れもない事実。
ランクが悪かったんじゃありません。
売り出し方を間違えた大人たちがイケないんです。
バンドもバンドなりに頑張ったんですが、今日まで一向にブレイクの兆しは見られず。
そんな状況に悩み苦しみ、2008年頃からリーダーであった石川がフェードアウト。
レーベルも危機感を覚えたのか、バンドの制止を振り切り強行的にベスト盤を発売。
そんな1時代を築いてもいないのに出されたベストはもちろんちっとも売れず・・・2010年にとうとう石川が脱退。
しかし、運よくART-SCHOOLを抜けた桜井が助け舟を出し、解散には至らずに済んだのだが、今日と言う日まで本当に地味に満身創痍で来たバンドなのだ。
それでも11年、やれてきた理由
売れなかったが、決してランクが悪いバンドなわけではない。
むしろ非常に強いロックバンドなのだ。
常に陽が当たる道を歩んできたわけではないが10年選手は伊達ではないということを知っていただきたい。
特にそのライブバンドっぷりは、冷めやらぬフェスブームによりまだまだ加熱する現代の音楽シーンの中でも群を抜く熱量を発し、多くのロックファンが彼らを愛している。
皆、腐らず直向きに精進してきた彼らの地力に惚れているのだ。
ひたすらな刹那と、確かに血が通った温かさを感じさせる歌詞。
声じゃなく魂で心に訴えかけてくるような小高の歌声。
これぞギターロックと言わんばかりの多様かつテクニカルなフレーズを奏でる山下のギター。
合田の歌っているかのようなベースラインも一聴の価値ありな妙技だ。
先代のドラムも今のドラムも素晴らしい巧者である。
4つ打ちのダンサブルでキャッチーなビートを得意とした石川のドラミングも、ジャパングランジの最高傑作とも言えるART-SCHOOLの最盛期をしっかり支えた桜井のドッシリしたドラミングもどちらも一級品である。
特に桜井の安定感は、アートの獣ような疾走感の手綱を引いていただけあり、彼の加入以後、ランクの音は飛躍的に締まった。
そして同時に太くもなった。
ド派手な色物バンドではないが故に、彼らの魅力はわかりにくく、セールス、人気に直結せずベテランの域へ。
だが、趣向に富んだサウンドアプローチや奇抜なパフォーマンスはできなくとも、その『演奏』と『歌』は今のギターロックバンド屈指だ。
もしも世界が真っ暗闇で なんにも見えなくなってしまっても
あなたのぬくもりが教えてくれる 目に映ることだけがそんなに大事な訳じゃない
”echo”
僕ら誰だって誰かにとって何かでありたい 故に生まれる弱い醜い心
だけどそんなのだって実はきっと誰かに繋がっていると思っていたんだ
”ハイライト”
彼らの歌は徹底的に優しい。
優しくてリアルで、ちょっと幻想的なのだ。
共感を狙うJ-POPのような歌じゃなく、誰かのために必死に鳴らすロックンロール、誰かのために全力で放つ救難信号、それがLUNKHEADのロックだ。
ロックンロールなんて、言っちゃえば初期衝動が一番尖がってて一番美しいもんで。
どんなロックバンドもその壁を超えるのに四苦八苦するもんなんです。
でもランクは違う。
作品を経るごと、歳をとるごとに良くなっていく不思議なロックバンドなんです。
初期衝動にはどうやったって勝てないジャンルで、円熟味なんて出てもプラスにならないのに。
かと言って実験的に斬新なスタイルチェンジを繰り返しているわけでもないのに。
それでも彼らは自分たちの全力を聴く者にアップロードし続けてくれる。
常に全力で、不器用過ぎるんじゃないかと心配になるくらい一切手を抜かずに。
「体温」「シンドローム」「シューゲイザー」のよう『これぞギターロック!』というようなキレッキレのナンバーから「ハイライト」「月光少年」「スモールワールド」と言ったわかりやすいストロングスタイルもできれば、KANA-BOON真っ青の4つ打ちダンスチューン「カナリヤボックス」「きらりいろ」「潮騒」らもあれば、「ぐるぐる」のような狂気溢れるチューンに、和太鼓のようなビートの「スターマイン」と言ったライブ中に違いを産む楽曲に、ライブではなかなか聴く機会がないが「夏の匂い」「ひとりごと」のようなバラードだってやれちゃうのだ。
そんな毎アルバムの度に出し切っちゃって大丈夫なの?って思うんですが、毎度毎度これでもかってくらい詰め込んでくるけれども、あの手この手で新鮮味を保つその楽曲作りにはいつも驚かされます。
どうしてそんなに全力なんだろう?
音源作りも、ライブも?
そんなの答えは一つ。
何年経っても、真剣なんです。
真剣に、音楽で世界を変えようとしている
その感じ、デビュー当初の頃から全然変わってない。
むしろ、ドンドン聴く者を意識して、より真剣さを感じる。
我武者羅に聴く人すべてを、何とか救おうとしてる。
だから彼らの楽曲は音源でも、ライブでもであれだけの熱量が出るんだと思う。
聴く者に常に真摯であり、伝えることに一切手抜きをしていない。
でも年々演奏している側の楽しさが滲み出てきており、それに伴い歌詞も人間臭くなってきている。
それは手抜きじゃなく、ありのままになってきている証拠なのだと思う。
いつだって全身全霊。
そんな裸のロックを鳴らしているバンドなんです。
そんな不器用なバンドなんです、LUNKHEADって。
そして2015年・・・
そんなバンド、LUNKHEADがですよ・・・この度、『家』と言うアルバムを出すそうで。
そんなニューアルバムからのリードトラック。
『シチュー』とか言い始めちゃった。
うぅーん、シチューねえ、シチューかあ。
ちなみに歌詞の『シチュー』にかけて、わざわざ下北のライブハウスで、「シチューを食べる会」までするそうですね(笑)。
小高さん手作りなのかな?
そういえば彼らの初期の曲”体温”にこんな一節があった。
心の一番奥のやわらかいところに響く音
”体温”
そっか、もしかしたら・・・デビューから11年、バンドも、聴く人も大人になった。
結婚して、子供もできた人もいるだろう。
だからこの曲は、守るものができた彼らの音楽のリスナーへの応援歌なのかな?
『シチュー』という単語が、その世代に一番響く音なのかも・・・
どこぞのお笑い芸人が歌うネタにのっかってるワケじゃなく、温かいものの象徴として、ロックバンドがシチューを選んだってのはスゴイと思う。
一瞬トチ狂ったかと思ったけど、スゴイと思う。
そして今回のアルバムのタイトルが『家』という言葉になったなぞも何となく解けたかけそうだ。
そしてそれと同時に、ロックバンドが真顔で『家』って言っちゃうなんて、なんてロックなんだろう、と気付く。
他者をしっかりイメージした、なんて愛に満ち溢れたいつものランクのロックだ。
そこまで考えてようやく全てを理解できた。
このアルバムは、バンドから、ファンへのファンレターなんじゃないのかな、と。
これからも温かい歌を歌い続ける、バンドとして立ち続けることの意思表明と、感謝の気持ち。
ランクヘッドは聴く者を独りにさせない。
そんなメッセージがあるタイトルなんだろうな、きっと。
素敵な「家」じゃないですか。
年々、素敵なバンドになるじゃないですか、LUNKHEAD。
発売されたらしっかり確認しよう。
心して聴こうじゃないか。
みかんみかん。
素晴らしい音楽を、素晴らしい日常に。
Let’s sing A song 4 ever.