back numberの歌詞は、ヤンキーだ。
フラと入ったTSUTAYAの入り口にランキングボードが立っており、そのてっぺんに"back number"と書かれていた。
訊いてないぞ。いつの間にこんなことになっていたんですか。そんなに人気なんですかback numberって。ついこの間まで群馬の奥地、未開のライブハウスで槍片手にワンマンライブとかしてたじゃないですか。
いや人気なのはなんとなく知っていたんだけれど、何かおれが聴いちゃいけない音楽な気がしてずっと無意識のうちに遠ざけていたのだ。
でもランキングトップの音楽だと知ってしまった以上逃げられないなと思い、もうその場で借りて聴いてみたんだけど聴いてすぐにこの苦手意識の正体がわかった。
今回はそれを皆さんにお伝えできれば幸いです。よろしくお願いします。
歌詞
back numberって聴けば聴くほど良い曲ばかり、例えば
こういう。
30年前から全く変わらない教科書通りのJPOPの100点満点がこれです。超普通。
工夫や真新しさはゼロだけど、メロディーの良さだけで勝負するタイプの音楽。女子アナで言えばテレ朝、清楚で美人で実力派ですぐヤクルトの選手に抱かれるし朝はスムージー飲んでる。良く知らんけどたぶんそうです。正当派です。
いや、ただそれだけだったら聴けるんだけど、問題は音楽部分ではなくて歌詞。この歌詞がback numberの人気の理由であると同時に、おれたちのアレルゲンなんじゃないかと。
僕は何回だって何十回だって
君と抱き合って手を繋いでキスをして
思い出す度にニヤけてしまうような想い出を君と作るのさ花束
やめて顔赤くなっちゃう。この気持ち、ヤンキーが彼女できた時に彼女タグ付けしてツイートするポエムを見た時とおんなじ気持ちだ… 朱璃は俺がぜってー守る卍…
このベタベタに甘い歌詞。これがだめ。照れちゃう。おれがこんなの聴いてちゃだめだ!って気持ち。こう、幼少期にお母さんに連れられてデパートの女性下着売り場を通らされてるときの気持ちとおんなじやつ。すごい照れくさい。
ヤンキーの恋愛ポエムもそうなんだけど、サブカルとかオタク方面の方々と比べて、ヤンキーサイドの方々の方が意外と恋愛に対しては純だったりしませんか。浅野いにおとクジラックスと湘南乃風を横に並べれば一目瞭然。ヤンキーの方が恋愛には真剣なのだ。LDHってなんの略か知ってますか?LOVE DREAM HAPPYですよ。めっちゃ純粋。まあ、アイツらあともうSEXぐらいしか英単語知らないんでしょうね。
そう思えばサビの後半も
そりゃケンカもするだろうけど
それなら何回だって何十回だって
謝るし感謝の言葉もきっと忘れないから
ごめんごめんありがとうごめんくらいの
バランスになる危険性は少し高めだけど
許してよ
ヤンキーのポエムにしか見えなくなってくる。純恋歌の2番Bメロと内容同じだし。よく見るとMVのお姉さん眉毛の描き方が完全に元ヤンだし。プライベートの部屋着絶対ヒョウ柄入ったキティちゃんのスウェットだよ。彼氏絶対トビ職だもんヤダよ怖えーよ。
今までの僕は
曲がった事ばっかだった気がするんだよ
だからせめて君のとこには
まっすぐにまっすぐに走ってくよ
一体なにで走ってくるんだよワゴンRか?セダンか?DADのエンブレムを張った黒塗りのセルシオが高速道路の左車線を爆走してくる絵ズラしか想像できない。国道沿いのドンキ寄ってから来そう。嫌。車内にスティッチのぬいぐるみめっちゃ置いてありそう。嫌。
back number
アルバム2枚借りて今全部聴いてるんですけど、本当に純なラブソングばっかなんですよね。なんかもう聴いててずっと顔赤いですおれは。
ギターボーカルにベースとドラム、と間違いなくバンド編成なのにback numberがバンド音楽として語られないのは、そこらへんのJPOPより遥かにJPOPしてるからなんじゃないか。
歌詞一つ一つどこをとっても清涼感がすごい。こんなに綺麗に恋を歌えるミュージシャン、今他にいない。語感とメロディのかみ合わせも良いし、伴奏も展開もシンプルで歌メロの綺麗さを邪魔しない。
恋が報われない唄ですら、現実の恋愛みたいな泥臭さや生々しさを一切排して徹底的に清潔だ。
なんかこれ既視感あるな、と思っていたら思い出した。めちゃくちゃグレードが下がるけどツイッターの恋愛ポエムだ。
一生気持ちが変わらないなんていうのはありえないと思ってる
むしろ変わっていっても好きでいることが大切でそれが理想なんです— 0号室 (@0__room) 2016年9月1日
ごめんなさい。だめなんですおれたちは。人間性がグニャグニャなのでこういうものを見ると頭を掻きむしって灯油をかぶって火をつけたくなるのです。全身がかゆくなって、このリツイートの数が増えれば増えるほどに社会に自分の居場所がないと宣告されている気持ちになるのです。おとうさんおかあさんごめんなさい。
この記事ではヤンキーと表現したけれど、彼らの顧客はつまるところ一番素直な消費者たちなのだ。ゴールデンタイムの番組見て笑って、水溜まりボンドをチャンネル登録して、劇場版銀魂見に行って、そういう消費者属性。一番数が多い人たち。関係ないけど学力偏差値って47.5以下が最も多いらしいね。
一番幸福指数が高いのは彼ら。おれらみたいに何にでもかんにでも疑心暗鬼で他人様のことをカテゴライズして安心してる奴らが一番最悪。絶対ろくな死に方しないしまともな恋愛できないしバックナンバーの曲は聴けない。眩しすぎる。早くおれを殺してくれ。
どっかのだれかの曲でヤンキーになりたいと歌った歌があるけれど、おれたちはそうなれなかった出来損ないなんです。世の中は彼らを中心に回っているし、TSUTAYAのチャートのback numberの下は三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBE、さらにその下はGreeeenでした。
back numberの歌詞を目でなぞると世間との距離感を感じて心臓がバクバクします。
「みんなこんなゲロ甘い砂糖の塊みたいなケーキが好きなの…?え、おれって味覚障害なの…?」
みたいな。とても恐ろしいです。
おれたちはたぶん、back numberが嫌いなわけじゃないんです。back numberの世界観を直視できない自分と、自分が楽しめないものを素直に楽しめてる人たちの人数の多さが恐ろしいのです。
これからは社会の爪弾き者としての自覚をなお一層深め、より日陰を歩こう肝に銘じる所存です。
これを読んでいるあなたも例外ではありません。国道はもうヤンキーのものです。おれたちはちゃんと身の程を弁えて道路の隅の隅、雑草を踏み靴を汚して社会の皆様に道を譲っていきたいと思います。
それでは、さようなら。ごきげんよう。