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邦楽闇の歴史。秘蔵の邦楽ロックバンド激ダサMV特集。

 昔は、ミュージックビデオなんてそんなに重要じゃなかったんですよ。

 僕が小学生の頃は、YouTubeはおろかインターネット環境のある家庭の方が稀で、音楽はTVや雑誌とか口コミなんかで広まっていたので、ミュージックビデオなんかファンが特典映像として見たり、メディア露出があったとしてもスポット映像で10秒ぐらいチラっと映るだけのもん。セールスに直接影響を及ぼすようなもんじゃなかったのです。

 そう思えば現代、一億総スマホ社会においては音楽の窓口と言えばYouTube。ミュージックビデオ。MVありきで音楽が広まる時代になったなと。

 バンド側もそれは重々理解しているようで、最近のMVはドラマ仕立てだったり、アイドルを起用したり、カメラを複数台用意した多角撮影だったり、制作費をかけた渾身の作品ばかり。良い時代になりましたね。クソくらえ。バンドにそんなもん求めてないんじゃこっちは。バンドなんて音楽業界における場末のスナックみたいなもんだと思っているので、高級フレンチみたいな音楽、ミュージックビデオなんか出されても困惑する。俺が求めるのは原産国のわからない甲類焼酎で作ったド底辺のウーロンハイ。俺たちは哺乳瓶で発泡酒を飲ってた生まれつきの底辺。バンド音楽が好き。そしてなにより低予算のカスみたいなミュージックビデオが好き。そうだろみんな。

 本当は秘密にしておきたいんですけどね。今回はインターネット足立区民の皆様の為に、珠玉のクソダサMV集を公開する運びとなりました。

 最高の音楽に添えられたのは信じられないクオリティのMVばかり。台無し。フェラーリを痛車に改造するような禁断の快感がそこにはある。刮目して観よ。

the pillows/バビロン天使の詩

 俺が麻薬取締官なら即尿検査要請の出来栄え。小学生が作ったパワーポイントのクソ煮込み。山中さわおへの信仰心が高まる逸作。

 第三期ピロウズらしいロックチューンでファン人気も高いこの曲。張り上げず伸ばさず、Bメロから落ちるサビのメロディがツボ。日本のロックバンドが何たるか、その本質の塊がピロウズであり、一生付き合えるいつでも聴きたくなる本当に素晴らしいバンドだ。是非ロック畑を耕すハメになった学生のみなさんにおすすめしたいロックバンド。

 だというのに映像が酷すぎる。美少女がサビでダンスカマすMVに慣れた若年層には過酷すぎる画づら。シャドウバースやってる小学生にメンコの楽しさなんか伝わるわけがない。でも伝えたい。この味わい深さ。

 これにとどまらず、ピロウズのMVは前衛的なものが多い。バビロン天使の詩に耐えられた諸兄は是非他も目を通していただければ。

 

the band apart/Eric. W

 2000年代初頭、バンド界の生ける伝説。元ラガーマンという異色の経歴を持つ荒井岳史率いるかっこよさの化身。the band apart渾身の台無しミュージックビデオ。

 和製ファンクネスなシャレオツなバンドサウンドに美女・童貞・ゴリラをぶっかけた台無し丼。大失敗したリップスライムの熱帯夜みたいなMVですよね。

 紹介しておいて難だが、本当に目を閉じて聴いてほしい。強制的にブチ上げられるサビ入り、バンアパの楽曲の中でも一二を争う人気曲であり、当然のかっこよさ。そして群を抜いた手抜きMV。

 他のMVは大抵演奏シーンのみで安心して観られます。なぜこの曲だけこうなってしまった。

 

SOUL'd OUT/COZMIC TRAVEL

 バンドじゃないけど、ダサMVを語る上でハズせないでしょ。SOUL'd OUTは。

 前述の2作品に関しては「俺たちは音楽で勝負してるから、これでいいんだ」というポーズが見受けられるが、SOUL'd OUTのCOSMIC TRAVEL関しては当時にしてはかなり凝ったフルCGであり、随分予算がかかっているはず。何故。何がしたいのか。止める奴はいなかったのか。というか発案時どういった形でこのMVを言語化したのか。そういった意味でダサMV界でも異色の立ち位置にある作品と言える。

 SOUL'd OUTに関しては、メタルミュージックと同じく「こういうものだ」と受け入れることで初めて良さがわかると共に、わかってしまえば最後、一生愛聴するハメになる即死トラップなわけだが、故にどんなに常軌を逸したセンスの映像が付属しても不思議と「台無しだ」と感じない。というか、こうでなくちゃ!とすら思わされる。

 他作品も一様に真剣にダサい。ダサいハズなのにDiggy-MOのまっすぐな目で射られると不思議と腑に落ちてしまう。冷静になれ。クソダサいぞ。好きだ。

 

NUMBER GIRL/透明少女

 ドボウ

 NUMBER GIRLだから許される。向井秀徳だから味になる。手書きMVの先駆け。この時代感の詰まった低予算ミュージックビデオ。同じ手書きMVでデビューを飾った米津玄師と見比べると落差のあまり視力が落ちそうになる。

 明らかに画力に大きなブレがあるが、下手な部分は向井秀徳自らの手書きらしい。何故。

 天才性とはやはり狂気であり、正気からの逸脱だ。透明少女のMVがもしも現代的な、ファン層を意識して作られたものであったら、そこに向井らしさNUMBER GIRLらしさはないし、逆にNUMBER GIRLのカリスマがなければただの意味不明映像と思われるだけだろう。この映像で、完璧に完成されているのだ。

 この時代だから成立した作品だし、このミュージックビデオには当時の空気感が箱詰めになっている。邦楽史においても重要なダサMVだ。

 

さいごに

 黒髪でマッシュヘアでMVに美少女を出して…と、ある程度市場に沿ったものを作らなければ淘汰されてしまう今のバンド業界じゃありえない映像ばかり。懐古するわけじゃないけれど、こういうのも許されていた当時のシーンの懐深さがちょっとうらやましい。

 売れる為にファン層を意識するのは仕方ないとは思うけれど、本音を言えばゴージャスでカッコイイMVなんかそんなに求めちゃいないから、MVくらいもっと遊んで欲しいなとおもいます。せっかく映像もつけてくれるなら、それも楽しみたい。

 そんなわけで、ダサMVは尽きませんが文字数の都合で今回はこの辺でお別れです。

 それでは。

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