歌い手をバカにしているバンドマンがEveを聴いて死ぬ日
それが今日この日だ。
人は、自分の属するカテゴリーから外れた人間を理解しようとしないばかりか、バカにすることで自尊心を保つ。少なくとも卑しい俺はそう。生理痛を漫画にしてツイッターに載せてる女全員スパム報告してます。生理30日続けばいいのに。
何故か?それは他人を理解するのはとてつもない労力を要するから。特に深く知りもせず考えもせず馬鹿者だと自分の中で決定してしまうのが精神的に一番楽だからだ。人間が無意識のうちに行っている精神防衛術の一つである。
オタクはマイルドヤンキーをバカにするし、マイルドヤンキーはオタクをバカにする。そういう相関はどのジャンルでも見受けられる。みなさんも心当たりあるでしょう。
音楽においても明確にそういうマウント戦争みたいなものはあって、その中でも特にやり玉に挙げられやすいのが「歌い手」というジャンル。
これはもう仕方ない。人間、難癖をつけようと思えばどんな人間にだって文句はいくらでもつけられるが、それにしてもこの歌い手という存在は嘲笑される隙だらけ。「歌い手」というネーミングも絶妙。そもそもからして語源が「自分は歌手と言うのはおこがましい素人なので」というところから来ているわけなのにそれを自称して威風堂々している姿、シリアスなギャグ。高高度なボケ。だって、自分の息子娘に言えます?パパ歌い手なんだよ~って。息子サイドも「草」って感じでしょ。
そんな風に粗末な扱いを受けがちな歌い手だけれども、最近じゃアイドルや韓流に次ぐ市場規模を誇る一大ジャンルに発展しているのが事実で、正直商業としてはバンドは負けていると思う。
特にEve、彼には商業面どころか音楽性にすら後れを取っていると言える。バンドやってる奴、歌い手を聴かないみなさん、視座を増やすという意味で是非聴いてほしい。
音楽で商売をする、ということの本質の塊。Eveを聴いて死ね。
Eve
正直、ほかの歌い手なんか本当にYouTubeカラオケと呼ぶにふさわしいものばかりで、作曲家つけてオリジナル曲を披露している歌い手もJPOP崩れやアニソンのなりそこないみたいなものばかり。作曲者側の「こういう感じで作っとけば中学生は喜ぶんでしょ」っていう温度と、プロモーション側の「こいつが歌っておけばとりあえず売れるんでしょ」っていうあくまで仕事だという興味のなさがヒシヒシと伝わるんだけど。Eveの楽曲は他の歌い手と格が違う。他との差別化が徹底されている。スタッフの本気度が違う。
もちろんバンド音楽とはちょっと違うんだけれど、インターネット音楽の良い面、身も蓋もない言い方をすれば、初期の米津玄師的な凝り方をした音楽。米津みがある。
編曲も遊びまくってて良いんだけど、歌のメロディが独特かつ現代的。Balloonとかなんかもそうなんだけど、早口で起伏の激しいメロディが米津玄師以降の音楽で育った人たちにウケが良さそう。悪く言えば流行りのメロディだけれど、それを差し引いてもインパクトがあって曲として普通に面白い。
どこまで自分で作曲しているかは定かではないけれど、コード進行やサビの入り方なんかまで本人で作っているとしたら、相当音楽的に素養のある人なんだと思う。
ギターの音デカいしメインテーマにギターが使われることが多いし、編曲はたぶんこれギタリストがやってるんだけど、バンドと宅録のあいの子っていう感じのギターを弾いていて独特。バンドでもポップミュージックでも聴けないタイプの音楽性に仕上がっている。
映像スタッフも勝手にやりたいことやっている感じだし、ちゃんとそれがハマっている。無駄に予算を使った感じでもなく歌い手にありがちなビジュアル系のビジュアルを悲惨にした感じもない。目に良い。
トータルしてクオリティが高いんだけど、製品です!っていうポップミュージックないやらしさもなくて完璧なバランス。
と、ここまでだったら凝ってる、曲の良い歌い手、で終わるんだけれど。Eveは音楽だけじゃ飽き足らずharapeco商店なるアパレルブランドまでやっている。
CDが売れない!グッズで稼げ!と言われて久しい音楽業界ですけれども、ここまで本腰を入れて収益化を図るアーティストいままでいなかった。
本当に、賢いんだとおもいますこの人。嫌味なくらい。
歌い手はただ知名度を稼ぐ手段で、ちゃんとオリジナル曲とアパレルブランドっていうゴールフローを用意してここまで行動しているという心象。
バンドのみなさんは、ここから学ぶべくは多いはず。というか、このぐらい頭を使って動かなきゃ音楽で飯は食えないようで。
音楽には偶然でヒットを拾う人と必然でヒットを打つ人間がいると思うんだけど彼は完全に後者。
歌い手をバカにしがちなバンドの方、多いと思いますけど、一回敗北を認めてEveを認めてそこから学んで必然を引き出せるようになればと思います。
それでは。