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谷澤 千尋

2017/04/15

コラム 記事

人工知能の発展で音楽はどうなるのか:後編 クリエイティブじゃないものが淘汰される

人工知能の発展で音楽はどうなるのか:前編

 

人工知能が音楽を作るようになっても、今とさほど変わらない可能性

 先ほど紹介したミックス・マスタリングの自動化マシン、以前から似たような感じでオートで編集してくれるものはあったのだが、当時ではまだまだコツを掴んでないと上手いこと使えないようなものが多かったのだが、ここ数年でほとんど実用レベルにまでクオリティが上がってきた。音楽機材の世界の発展の速度は想像以上に早い。

 人工知能の発達の速度については、専門家の間でも意見が分かれているようだが、音楽においてこれらの経験則からいえば、あくまで僕の予測だが、早くて3~5年、遅くても10年程の間に人工知能による作曲が実用レベルになるのではないだろうか。

 ということでここからは、人工知能が作曲する未来はどんなものになるのか考えていきたいと思う。

人とのふれあいや、高度なコミュニケーションが求められる介護福祉、秘書、医療、学校の先生などは人工知能に仕事が奪われる可能性が低いでしょう。このように考えていくと繊細なコミュニケーションが必要とされる領域は、人工知能が凌駕しにくい分野と言えます。

東洋経済オンライン - 簡単にAIに奪われない仕事に共通する特徴より引用

 

 上の引用でも語られているように、コミュニケーション事態が目的の職業は人工知能に置き換えられにくいと考えられている。いくら酒が美味かろうとバーテンがロボットのバーとか嫌だしな。いや、逆にロボットと酒が飲めるバーってのは面白いかもしれないけど、間違いなくキワモノ扱いだろう。

 どちらかというとミュージシャンというのはコミュニケーション的な側面が強いので、人工知能に仕事を奪われにくいタイプの仕事といえる。

 ファッション的な側面や人間性、雰囲気、思想とか、後は顔面とか、そういった諸々のものは音楽と切っても切れないものだし、その辺りは完全に機械の苦手分野だ。言い方を変えれば誰が作ったのかが重要ということ。

 あと単純に「人工知能が作った音楽はなんか味気ない」と思われる可能性もある。「冷凍食品は人の暖かみがないからダメだ、自炊せよ」という人は少なくないし、機械が作った音楽に抵抗がある人も多いはず。

 また、ライブでのパフォーマンスが重要となるバンド形態の音楽も同じ理由で生き残るだろう。オリンピックに生身の人間に混じって人造人間がいたら興ざめするしな。

 

無名の作曲家が危うい

 バンドやシンガーソングライターなどの形態は”その人が書いた”という価値によって生き残る可能性が高いが、逆の見方をすると誰が書いたかがあまり重要ではないタイプの作曲家たちが危ういとも考えられる。

 具体的にいえばマイナーなソシャゲのBGMとかマイナーアイドルやらの曲を作曲する人たち。音楽そのものが商品ではないけど音楽は必要ってシーン、結構ある。個人的にはスキルはあるのにイマイチ売れないバンドマンが食い扶持としてやってるパターンが多いイメージ。

 こういう音楽の多くはコンペか発注という形で制作されて、クライアントから「こういう感じのアイドルで、雰囲気はこんな感じで」と何曲か参考音源を渡されて制作にかかるといった感じだ。

 完全に人工知能が得意とする分野である。先ほどのビートルズ風の音楽を作った人工知能とかがかなり近い。アレに作成された譜面をオートでアレンジ、打ち込みとミックス、マスタリングする機能がつけばそれでもう完成だ。どの作業も現在自動化が進んでいるので、遅かれ早かれ実現するだろう。

 人間よりも早く安く、何回リテイク出しても嫌な顔しない作曲家。もちろんその出来栄えによってシェアが変動するとは思われるが、クライアントが人工知能の方に流れていくのが容易に想像できる。

 例えばドラクエの作曲家すぎやまこういち氏のように、その人が作曲していることがセールスポイントになり得る作曲家だったり、その人でしか作れない音楽がある作曲家以外の作曲家は危ういんじゃないだろうか。

 

人工知能が可能にする新しい音楽

 ここまでは人間の仕事が奪われるという人工知能のネガティブな側面を考えてきたが、次はポジティブな側面を考えていきたいと思う。

 

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脳波に基づいて自動作曲を行う人工知能を開発

ヘッドホン型ワイヤレス脳波センサを新たに開発し、予め準備した曲に対するユーザの脳波反応に基づいて、自動で作曲を行う人工知能を開発した。
従来の自動作曲では、曲の特徴を細かく指定する必要があったが、本センサと人工知能により曲と脳波の関係を機械学習することが可能になり、指定なしで作曲が可能になった。
今後、音楽刺激を用いて個人のメンタル状態を活性化させ、潜在能力を常に発揮可能なシステムの開発に期待。

JST - 脳波に基づいて自動作曲を行う人工知能を開発より引用

 

 こちら音楽系人工知能の最新ニュース。人工知能が人間の脳波を測定しながら、それに合わせてメンタル状態を活性化させるのに最適な音楽をリアルタイムで作るらしい。ざっくり言えば脳波的に今一番テンション上がる曲を自動生成!みたいなイメージ。現段階では音楽療法やスポーツジムへの応用が想定されているそう。

 例えばこのマシンだけでも色々と今までになかった音楽の可能性が見えませんか?

 昔から音楽の進化というのはテクノロジーの進化と表裏一体だ。例えばエレキギターの誕生からロックが生まれたり、レコードに音楽を保存できるようになったことから、DJプレイが生まれたりヒップホップが生まれたり。

 そんな具合で、例えば上の脳波から音楽を自動生成する人工知能からは安易な想像ではあるが、脳波DJみたいなのが生まれる可能性もある。ターンテーブルではなく脳波測定装置を頭につけて、オーディエンスの盛り上がり具合を脳波でコントロールしながら音楽をならす。絵面がかなりアホっぽいけど。

 脳波DJはちょっとギャグっぽいが、人工知能という新しいテクノロジーによって今まで想像もしなかったような音楽が生まれる可能性は大いにあるはずだ。

 

クリエイティブなものが増えるのではないだろうか

 吉野家とかの牛丼チェーンとかの店って、もちろんそうじゃない時もあるが、大体の場合早く安くメシを済ませるためにいくものだと思う。おいしいものを食べに行きたいから、とかいったこだわりよりも栄養補給というかメシを食う必要があるから食べに行く感じだ。

 先ほど人工知能に仕事が奪われそうだと書いたBGMの作曲などって吉野家的なものだと思う。食べたいから聴きたいからといった欲求よりも、必要だから作られる音楽というか。

 人工知能の発達で吉野家的なものはマシンが作ることになって、人間は食べたいから行くような店、叙々苑とか木曽路みたいなそういうのを担当するようになるんじゃないだろうか。

 恐らく人工知能が作る吉野家はかなり美味いものになるだろうから、人間側のハードルも上がることになるとは思う。その分人間には人工知能が作るのを得意としない、新しい発想の音楽を作ることが求められるはずだ。

 

面白い音楽が増えるといいな

 さて、人工知能が吉と出るか凶と出るか蓋を開けてみないことにはどうなるかはわからないが、何にせよそういう時代はやってくるし、それに合わせて変化が起きるだろう。

 記事には書かなかったが、今まで以上に音楽を作る側への参入のハードルが低くなることで新規参入が増えたりとか、そういう変化も考えられる。完全に妄想だけどこのタイプの使われ方で、女子高生がAIに曲作らせて自分で歌ってみたいなので有名になるのが現れるんじゃないかと思う。

 結局現段階では何を書いても予想、妄想にしかならないが、個人的には人工知能によって面白い音楽が増えて欲しいなと思っている。

 では今回はこのあたりで!

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