フレデリックはオドループの一発屋なのか
成功を収めると何かと嫉妬される。
「あいつ会社起こして、今調子いいらしいよ。うらやましいよね」
『えー別にー。たまたま一発当てただけじゃん』
こういう奴に限って死ぬほど羨ましがってるし、現状なにも上手くいってないし、歯並び悪いし、最近ビットコイン買おうか本気で悩んでるし、寝る前には幼少期の良かった出来事を数えて泣きながら寝てます。
俺です。
「一発屋」という言葉にはそういう人間心理の浅ましさが集約されている。
大体の人間はその一発すら当てられずに、あるいは弾すら撃つことなく、一生を終えるというのに。
フレデリック、というバンドがいます。恐らくご存知かと思いますが
オドループという曲で2014年後半の邦楽ロックシーンを全部持って行った成功者です。
この一曲で即時渋谷WWWを埋め切り、メジャーデビューを決め、各種音楽フェスの常連席を獲得したといっても過言ではなく、2014年だけずっと海外にいたとかならともかくとして、バンド音楽を追いかけてる人間でこの曲を知らない人なんかいないんじゃないでしょうか。
そのくらい、彼らの周囲も環境も彼ら自身も180度変えてしまうほどのホームランソングだったわけなんですけど、そんな彼らフレデリックを捕まえて
「オドループの一発屋だよね」
と言われること、非常に多い。
人の心はバランスを取りたがる。人があんまりに褒められていると、ちょっと悪いことも言ってバランスを取りたくなる。その気持ちすごくわかる。
女の欠点を知ろうとする者は、彼女の女友だちの前で、彼女を褒めてやることだ。
100ドル札もこう言ってます。だけれどそれは本当に妥当なことでしょうか?嫉妬の炎に目が眩んでませんか。
というわけで、フレデリックのオドループ以降のリリースを追いかけてみようと思います。オドループは奇跡の一発だったのか?それとも。
非常に賢いと思うんですよね、この人たち。
「自分の作りたい曲を歌いたい歌を作ってるバンド」と
「聴く人を、お客を、意識して考えて曲を作ってるバンド」
の二種類がバンドにはあると思っていて。この人たちは完全に後者に当てはまるんじゃないかと。
このオワラセナイトなんか、悪く言えば完全にオドループで味を占めた作り。MVの構成なんかも徹底してオドループを踏襲。成功体験を模倣するのは商売の基本中の基本ですから。
そもそもオドループからして、その当時のシーンを的確に突いた一曲だと思うんです。
当時はKANA-BOONのないものねだりが爆当たりしていて、四つ打ちの上でメロディーを繰り返す音楽がアツい。みたいな風潮にあったんだけれど「繰り返し」「四つ打ち」「MVに美少女」「意味不明詞」と、必要な要素を全部ぶち込んだ一曲がオドループ。原宿で蛍光色のクレープ売るようなもんで、売れないわけがない、ぐらいの狙いすまされた一撃だと思うんです。
そんなフレデリック、賢いが故にオドループを意識した、オドループを軸にした楽曲を展開するきらいにはあると思います。
元は妖怪ッポイ世界観のもっと捻くれたバンドだったんですけど、オドループ以降はさっきの「繰り返し」「四つ打ち」「ダンス」みたいな所を意識して楽曲がリリースされている。
このオンリーワンダーも、とんでもない大当たりだったんですけど「フレデリック=オドループ」のイメージが離れないのはこういうことだと思います。フレデリックはオドループの一発屋というよりも、フレデリック自体が、オドループになったんだと。
でもやっぱり流行りものはいつか廃れていって、あんなに四つ打ちダンスビートだらけだった邦楽ロックシーン。今はひとバンドも見かけない。
フレデリックに対する各人の反応も変わってきたように思います。特にここ一年は。
これってフレデリックに飽きたというか、ダンスビートに飽きた。オドループに飽きた。オドループと化したフレデリックに飽きた。というお客たちの動きだと。
賢い
なんだけど、賢いので、センスも抜群なので、この人たちは。
ちゃんと時代の変化についていくというか、何なら先回りくらいの曲を作ってくる。
この曲や最近のリリースなんかはベースミュージックか?というぐらいベースラインにフォーカスを置いた曲ばかり。
リードギターの上にシンセをかぶせてくるところなんかは今までのフレデリックらしいんだけれど、最近の楽曲は明らかにオドループを捨てている。オドループとは別のかっこよさを提案しているように思えるのです。
最近の邦楽ロックの動向は「歌詞偏重」だと思ってるんですけど、フレデリックの歌詞も「踊ってない夜を知らない」的な意味不明詞から、こういった意味性メッセージ性を受け取りやすい歌詞にシフトしてきたなと。
3年に渡って目立った失速もなく、定期的にヒットソングを出している。こんなバンドそうそう他にいないと。ほかのバンドの方がよほど一発屋じゃないかと。
フレデリック=オドループの人っていう認識はそろそろ改める頃合いだと思います。確実に変化を遂げてきているので、ぜひ他の楽曲も聴いてみてください。イメージ変わると思います。
それでは。