フィッシュライフのどのへんがハヌマーンでどのへんがそうでないのか。
フィッシュライフはハヌマーンに似ている。
新しいバンドを先発のバンドで語るのは、なぜかあまり良いこととされてはいないが、新しいものについて考えるときに指針となるのは、どうやったって既存のものしかない。
どのバンドにもルーツはあり「なにもかも完全に独自の音楽」なんてものはいまだに聴いたことがないし、極論を言えば音階やリズムのルールに則っている以上そんなものは生まれ得ない。
大事なのはルーツからどれだけ新しい要素が加わったか。
「iPhone13には紛失時の為に遠隔自爆ボタンがついたらしいぜ!」
ワオすげえ!さすがアップル!発想がジョブズ!そんなアイデア今まで誰もマッキントッシュ!つまりそういうことだ。
くりかえすが、フィッシュライフはハヌマーンに似ている。
しかし問題はそこじゃない。次世代機にはどんな新機能がついて、どれだけの進化、または退化が見られたか。
今回は閃光ライオット2013グランプリを獲得したバンド フィッシュライフの、どのへんがハヌマーンでどのへんがそうでないのか。これについて考えたい。
パクり?
ちょっとやそっと似ているとすぐパクりと言われてしまう。ブルーノマーズも裁判に負けるこの時代だ、自由に曲もつくれたもんじゃない。
とりあえず件のフィッシュライフ・ハヌマーンを聴いてみよう。
まず聴いてことない人の為にハヌマーン
「空間を切り裂くような緊張感を持つ演奏と、普遍的なメロディをハイレベルで融合させた楽曲、そして、瞬時にフロアを支配する存在感と高い演奏技術で構築されるライブパフォーマンス」だ…
何回見てもこのコピー笑っちゃうんだけれど、嘘は書いてない。ナンバーガール以降の邦楽ロックに多く出てきたタイプのバンド、と言ってしまえばそれまでだが、後にも先にもこんなタイトな演奏とキャッチーなコーラスワークをしたバンドはいない。この方向を向いたバンドではもっとも完成されていた。
ハヌマーンのカッティング曲に、よく似ている。
「好きなんだね。ハヌマーン」
閃光ライオット2013の審査委員は全員がそう思ったこと請け合い。
だがまったく同じ構成、まったく同じメロディというわけでもなく、確かに彼らの楽曲だ。
どこがハヌマーンか
ギターボーカルのハヤシング(僕がふざけてるわけでなく、ほんとにこの名前で活動している)が、ハヌマーンだ。
よく聴けばドラムもベースもそんなにハヌマーンじゃない。ギターのリフワークに引っ張られて似通ってしまってる部分もあるが、フィッシュライフのドラムは一般的なリズムパターンを中心に叩いているのに対して、ハヌマーンは手数とキメを重視した前のめりのドラムとなっている。スネアの殴打回数がやたら多い。
話はもどってフィッシュライフのハヤシング。まずルックス、目が隠れきるほどに伸びたボサボサヘア。そして色以外全く同じギター。長袖の白シャツじゃないところだけが救いだ。
中でも特にマズいのがギターだ。
テレキャスター・シンラインというギターだが、これがあんまり多用されるような機種でなく、且つこのシンラインという種別の中でも全く同じピックアップ構成のギターを使っている。無意識にこのギターを選んだと言うのは
「新しくエクスペリアっていう携帯電話作りました。iPhone?知らないです参考にしてないです」
と言うようなものだ。無茶だ。
音作りも非常にマズい。シングルコイルにショートディレイをかけた田淵ひさこ直系サウンドだが、リフの似かたも相まってハヌマーンの色を強く出している。
あとは歌い方だが、まぁこれは声質が違うおかげであんまりだ。発声はかなり似てはいるが…
どこがハヌマーンじゃないか
作詞作曲を担うハヤシングのセンスの根底にハヌマーンが据えられているのは間違いないとして、どの辺が彼ららしさだろうか。
現在の流行に則ってダンスビートを起用したり、歌モノ感を出す為にか、ドラムはギターに左右されない一定のビートを刻んでいる。
どこまで行ってもバンドはチームプレイ。フロントマンがハヌマーンでも残り二人は彼らの解釈で楽曲を演奏する。
またこの楽曲にあるように、一瞬だけ曲中に異なるテンポをつっこんだり、180度違うサウンドに切り替わったりと、実験的な部分もフィッシュライフの武器だろう。
公言したらいいのに
ハヌマーンのフォロワーであることを公言したらいいのに。と思う。
そうでないとハヌマーンのファンはどうしても「応援しよう」という姿勢にはなれないだろう。掴むべきファン層を掴めないのは痛い。
インタビューでもフィッシュマンズやサカナクションといった名前ばかりあがりがちだが、ハヌマーンの名前が一切出てこないところがなんとも危うい。
両バンドのファンのみなさんは彼らの対比をどう見るだろうか。
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