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残田 響一

2015/09/07

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いくらベースが好きでもスクエアプッシャーみたいになっちゃいけない

コーンウォール一派、というのをご存知だろうか。イギリスの片田舎で、ひっそりと実験的で攻撃的なテクノを追及している連中だ。その代表格が、あのエイフェックス・ツインである。
エイフェックス・ツインは、本人も大天才であるが、実に「他の天才」を発掘するのも得意である。今回紹介するSquarepusher(スクエアプッシャー)……トム・ジェンキンソンも、そのひとりである。ていうか単にエイフェックス・ツインの友達だっつう話なんだけど。

このスクエアプッシャー、非常に特異なスタイルでデビューした。テクノ・ハウス系ミュージシャンのくせして、最初は電子音楽をバカにしていた人間なのである。日がな、ベースの練習をしていた。

ところめが、ある時急にテクノ・ハウスに目覚め、以後、ドラムンベース/ドリルンベース/エレクトロニカの分野の大家になってしまった。

音楽スタイル

彼のスタイルは、緻密に編みこまれたビート……これが超緻密なんだ。簡単にいえば、最近の邦楽ロック四つ打ちリズムがレベル10だとしたら、スクエアプッシャーの打ち込みの細かさはレベル98ってくらい。すっげえ細かい。それも、初期、彼はチープな機材で偏執的に打ち込みをやっていたらしい。むしろチープな機材だからこそ、機材の可能性を最大限に活かして、追求できるとかなんとか。

そこに乗るのが、彼のバカテク生演奏ベースである(上記音源の3分あたりから参照)。なんといっても、あのレッチリのフリーが「世界最高のベーシスト」と賞賛するほどのベースだ。もともとジャズ……とくにジャコ・パストゥリアスをリスペクトしているトム・ジェンキンソン(スクエアプッシャーの本名)、緻密なシーケンス打ち込みリズムに、バッキバキなスラップや、ドゥルドゥルめくるめく生演奏ベースラインを導入し、果ては、ドラムンベースの進化系「ドリルンベース」というジャンルを形成してしまった。

緻密なビートと、生演奏バカテクベース。そして独特の透明感のあるシンセ。それがスクエアプッシャー節だ。

そんなスクエアプッシャーだから、玄人向けか、と思われがちだが、いやいや、彼は実にポエティックな曲を書く。これなんか聞いてみてくれ。最初はちょっと音を大きくしたほうがいいかも。

染み入るように美しい……優しい……これがベース音楽の極地である。もちろん彼の基本はテクノ・ハウス・ドラムンベースであるが、こういった美しい曲を書き、音詩人としての側面を見せる……!

 

新譜

さて、今年になって、新譜を出しました。スクエアプッシャー。これがすごかった。

なにしろ、独自のシステムを構築して、テクノ・ハウスのアルバムのくせして「一発録り」したってしろものだ!

この超ねばっこいビート、祝祭的なシンセ、しかし……どこまでもダークな鬼気を迫るこの音像、すげえかっこいい。ベテランが、攻めているぜ。いや、このような音響を自信をもってドロップする勢い、今の若手にどれだけあるというのか。このねばっこい音像、それだけで世界観がある。

 

本質とは

しかし……こういう天才なのだが、「極めた」人間である。昨今のロック系のひとが、ちょっとテクノにも手を伸ばしてみようかしらん、というのを、思いっきりぶっつぶすような音楽スタイルだ。

だが、彼のすごさっていうのは、バカテクではない。バカテクを「曲、トラックパフォーマンス」として、結実するところに意味がある。彼のアルバムを聞けばわかるが、バッキバキにドラムンベースをやるときも、ポエティックにベースを奏でるときも、つねに透徹された美しさがある。それこそが、スクエアプッシャーの才能なのだ。

彼は、心象風景、こころをそのまま表した音楽だ、という表現を好まないかもしれない。けど、音が美しいんだよ! スクエアプッシャーの過激さの裏には、常にこの美しさがある!

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