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2016/03/02

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「青い衝動」root13.が歌うフィクションについて

青い衝動

「青い衝動」と謳われる大阪のバンドをご存じだろうか。
2009年に結成され、タワーレコード主催の新人発掘企画で店頭にCDが並ぶと、数日で完売。全国流通版もミニアルバム2枚とシングル1枚がリリースされ、これは併せて1万枚以上のセールスを記録した。
彼らの名前はroot13.(ルートジュウサン)。
昨今トレンドのハイトーンボイスとライトなギターサウンドで構成される、一見ありがちな3ピースバンドではあるが、そこには彼らにしか出せない鮮やかさが隠されている。その鮮やかさは、鬱屈な梅雨の雨音を、孤独な一人暮らしのワンルームを、綺麗に塗り替えてくれる。
現実に疲れたら、少しだけ視線をずらして、彼らの唄うフィクションの世界をのぞいてみてほしい。
息苦しい日常が少しは穏やかになるかもしれない。

視覚と輪郭で魅せる

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root13.メンバー
ボーカル、ギター オオタケンイチ
ベース、コーラス ナカジマサキ
(ドラムは2014年をもって脱退。現在はサポートメンバーを入れて活動。)

root13.といえば、ほとんどの音源のアートワークを音楽系イラストレーター「フクザワ」が手掛けていることで知っている方もいるかもしれない。
フクザワ氏といえば、クリープハイプやindigo la Endなど地上波でも最近よく目にする若手バンドのグッズデザインを手掛けているが、彼女のアートワークを最初に起用したのは実はこのroot13.だ。以下のジャケット、またそれ以外もフクザワ氏による作品である。

2011年リリース「水面下の出来事02」(廃盤)
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2012年リリース「窓際/少女/水槽/2月」
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2012年リリース「6月の花嫁」
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上の画像を見るだけではわかりにくいかもしれないが、彼らの音楽は視覚的な影響を含めて成り立っていると言える。もし彼らのCDジャケットがフクザワ氏の絵でなかったら、ありふれた3ピースバンドとしてあっという間に埋没していたかもしれない。
彼らのファンは曲を聴いてイメージした光景や空気を、アートワークを見て、ライブに行って、バンド側が用意したさらに明確な形のものとして受けとることになる。ボーカルの頭の中に存在する「日の当たらない部屋」や「地下室の花嫁」のイメージは、フクザワ氏の手によって形と色を与えられた。
アーティストは時として、その曲の解釈をリスナーに委ねる。しかしroot13.は何かを強制するわけでも、完全に委託するわけでもなく、バンドが作り上げた世界の中にファンを取り込んでしまう。それが、彼らがインディーズの中でも多くのファンを得ている最も大きな理由だと私は思う。

フィクションを楽しむ力

実は彼らは、昨年の9月13日をもって活動休止を発表していた。
理由はドラマーの脱退で、この日を境にroot13.は歩みを止め、ボーカルのソロ活動が中心となった。
大きなバックアップのないインディーズバンドは、活動休止を発表するとそのままなし崩し的に解散してしまうことも少なくない。
もしかしたらroot13.もそうやって遠くない将来に色あせてしまうのだろうか、と不安に思っていたのもつかの間、彼らはサポートドラマーを入れて1年でステージへ帰ってきた。
前の章で言ったように彼らはバンドとして確立したイメージを作り上げている。root13.の音楽は、その世界の内側へ入っていくことでより楽しみ、共感することができる。
フィクションを楽しむ力。フィクションとノンフィクションをないまぜにして、それを美しく魅せる力がroot13.にはある。だから彼らの音楽は、ライブは、現実の一歩外へリスナーを連れ出してくれる。
たった1年で復帰を決意したモチベーションの源も、彼らが持っている物語性の中にあるのだろう。

2015年9月13日。活動休止を宣言したきっかり1年後に同じライブハウスで行われた活動再開ワンマンで、彼らはより蒼く、みずみずしくなって帰ってきた。
「青さ」をもてはやされた刹那の勢いだけでなく、ドラマチックな再生がより彼らを輝かせたなら、きっとroot13.はこれからも続いていくに違いない。

どうか、青い衝動を見逃さないように。

 

 

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