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むしろ音楽に金を払うやつの方が異常という風潮

2016/07/16

 CDが売れない。

 言われ尽くした話だがよくよく考えてみれば異常な事態だ。音楽はこんなに世間に浸透している。何かの建物に入れば何かしらの音楽が流れ、電車では猫も杓子もイヤフォンを付け、家に帰ればパソコンからテレビから音楽が聴こえてくる。逆に音楽を聴かないでいる方が難しい。歩いていて突然口に店主こだわりのカレーを突っ込まれたり、絵画を見せられたり、全身をタイ古式マッサージで揉みしだかれることはないが、耳には否応なしに何かしらの音楽をねじ込まれ続ける。前にも書いたがマックのBGMなんて社内DJによる極まった名曲ばかり、一旦落ち着いて考えればかなり狂った状況だ。

 本題だ。誰も口に出して言いはしないが、一部の人間の間に確実に「むしろ音楽に金を払うやつの方が変」という風潮が流布しつつある。

 身の回りを思い出してみよう。音楽が趣味!というCD購入依存症のみなさん以外、ほとんどCDを買っているのを見かけないんじゃないか。例えば父母、日本の人口の大部分を占めるお年寄りのみなさんはもちろんのこと、数少ないCD購買のターゲット層である中高生、延いては大学生から若年社会人まで、みなCDにはお金を払わない。良くてレンタル、いや違法ダウンロードですら「一応興味はあるのか…」と感心してしまう程にCDの購買に消極的だ。

 特に、男は本当に新品のCDを買わない。飲食費や趣味、ソシャゲ等にお金を突っ込むばかりで買っても中古のCDが多い。こんなサイトやっておいて言うのは後ろ暗いが、僕も新品でCDを買うより中古での購入の方が圧倒的に多い。少し探せば欲しいCDの中古なんか簡単に見つかってしまうし、一瞬ライブで見たボーカルの笑顔が脳裏にもよぎるが、中古で買ったCDを人へ貸すことに悪気を感じたりも、あまりしない。

そもそもお金をかけなくても聴ける

 人類には"慣れ"という素晴らしい機能がついており、どんな異常事態も時間の経過とともに嚥下し適応していくことが可能だ。そんなわけで僕等はこの異常事態に慣れてしまったが、感覚を取り戻す為に話をラーメンに置き換えてみよう。

 飲食店業界の一大ジャンル、ラーメン。その数の多さから競争は熾烈を極め、各々がオリジナリティとクオリティの追求にしのぎを削っている。ここまでは音楽と同じだ。まず絶対数が多すぎる。バンド音楽のリスナーに対してバンドが多すぎるのだ。今活動しているアマチュアバンドの全てが均等にファンを分け合ったらば、その比率は1:10も怪しい。CD売り上げ10枚、動員10人じゃ活動存続は不可能。ファンは一つのバンドだけを応援するものじゃないにしろバンドの数が圧倒的に多いのは今何かに例えて説明するまでもないだろう。

 そんな状況の中、あるラーメン屋がよほど味に自信があったのか、試食サービスを始めたとしよう。そしてこれがラーメン業界を揺るがし日本中のラーメン屋が店先で、街頭で、クール便で、赤字覚悟の無料のラーメン試食サービスをやりだした。ラーメンファンは大喜び、タダで各ラーメン屋の味をテイスティングできるもんだからそこらじゅうのラーメンをむさぼり食べた。と、いうのも最初のうちでそんな状況が何年か続くとラーメンファンも飽き飽きしてしまい次第に食指が伸びなくなっていった。

 想像して欲しい。このディストピアにみなさんが生きていたらどうだろう。ラーメン、たべたいですか?僕はノー。いつでも食えるんだもん、お金を払うならラーメン以外。なんなら元々うどんの方が好きだ。
「こんな狂った世界ありえねえよ!」
と思うかもしれないが僕らが今まさに生きている現代の音楽シーンがこれ。無茶な設定だがそれと同じくらい昨今の音楽事情は無茶な状態だ。いつでも自由にタダで各バンドのリードトラック聴けるって、ヤバいよ。こんな恵まれた状況なのに探してまで音楽を聴きたいと思えないのは、タダでも聴けるという音楽自体の価値の下落からの魅力の減少のせいであり、いつでも聴けるという希少性のなさのせいでもあり、どれでも聴けるという砂漠に投げ出されて「好きな砂粒を見つけろ」と言われるような途方もなさのせいだ。

 こんな状況に置かれていれば、多くの人間が音楽にお金を支払いたくなくなるのは当然だ。たぶん、おかしいのは金払ってでも音楽を聴きたいという僕らだ。タダでCDを聴いてる人間が時間と手間とお金をかけてライブなんか行こうなんて思わないだろうし、もうこのビジネスは土台から崩壊している。「儲からない商売を始めた方が悪い」と切り捨てるのは簡単だが、いまだにお金を払ってでも音楽を聴きたい側の人間としては、大地震でもストライキでもいいからこのおかしな状態をリセットしてしまえればな、と思ってしまう。きっとそんなことが起きても数年は音楽業界にさらなる闇の時代が訪れるだろうし、現実的に考えてどうやっても厳しい話だが。

 さらなる危惧は、この10年後にある。そろそろタダで音楽を聴ける世代に生きた人間も家庭を持つ頃合い。僕の家は父がビートルズの大ファンで家にギターもベースも置いてあり、音楽にお金をかけることは当然、というような家庭だった。子は親を見て育つ。親父、息子は今立派に電気代を滞納してでもCDとビールを買ってしまう大人になったぜ。ごめん親父。

 では、音楽は違法ダウンロード当たり前、ニコニコ動画テラワロス生主さんわこつ、みたいな親を持った子はどんな風に育つのだろう。人間的にはケースバイケース、きっと今も昔もこれからも変わらず素晴らしい人間から信じられないような人間まで様々生まれくるとは思うが、音楽に対する価値観はより希薄になっていくのではないか。あと関係ないけど子供にニコ生とかユーチューバーとかやらせるのはマジでやめろ。黒歴史は歴史になるから笑えるのであって、データ保存されて延々ネットの海を彷徨うなんて恐ろしいことだよ。本当にネットが発展しきる前に生まれて良かったと思う。

 今回はアレコレ書きすぎた。

 まとめるとすれば、このお金を払わず音楽を楽しめる体制の整いすぎている現状が、逆に音楽への興味を削ぎ、与えられるだけの音楽をタダで聴ければいい、という価値観を蔓延させている。ということだ。なんだ一行で書けるじゃん、なんだったんだよこの2500文字は。

 次は打開案を考えたい。それではまた。

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