金木和也とキクチリョウタがいるから今後の男性ソロシンガー界は安泰。
男性ソロシンガー界は早すぎる世紀末の最中だ。
星野秦秦秦星野星野秦星野秦秦星野星野星野秦秦。
星野源と秦基博がリスナーという作物を全て根こそぎ刈り取っていってしまった。男性ソロシンガー畑の土壌は無残、ペンペン草すら生えやしねえ、悪魔の所業だ。そんな彼らも気づけば35歳、サラリーマンで言えばそろそろ係長に差し掛かる年齢だ。第一線は若手シンガーに譲ってやってみてはいかがだろうか、ご老公。
世の中の独身OLだってそろそろ若いエキスが欲しいんじゃないだろうか。いかに星野源が若く見えるからってもう35だ。ハグされたらナイスミドルな匂いがするかもしれない年齢だ。それは困る?安心してください。星野源があなたをハグすることは未来永劫ございません。南無。
じゃあもう若い世代に乗り換えてやる!というあなたのために、今後来るであろう2人のシンガーをご用意致しました。ご賞味あれ。
金木和也
1人目は金木和也。滋賀県出身・在住の23歳。若いぞ。その音楽性について公式HPの紹介にはこうある。
新感覚の歌詞と中毒性のあるメロディで独特の世界観を描くソングライター。
オルタナティブロックを下敷きにファンク、カントリー、ブルース、ポップのエッセンスを取り込み、時にアコギを、時にエレキを掻き鳴らす。
ボーカル力が生きるバラードは言葉の一つ一つが聴く人の身体に入り込み、魂を揺さぶる。
音楽に詳しくないお姉さんにはちょっと難しい横文字が並んでいるが、説明見るより曲聴いたほうが早い。人懐っこく丸っこい声で、誰しもに起こり得る世俗的なテーマについて、リスナーに近い目線で歌っている。上記の『ラッキー』は映画版アオハライドの劇中歌にもなっているので、耳にしたことがある方もいるはずだ。
君に彼氏がいなければ
危なく世界中がライバルだった
でも君に彼氏がいるってことは
おかげでたった1人がライバルなんだ
君に彼氏がいてよかった
むしろ君に彼氏がいてよかったな
ラッキーなくらいさ ちくしょう
ラッキーなくらいさ ちくしょう
何度も繰り返されるサビのフレーズが印象的だ。1回聴いたらもう口ずさめる。キャッチーの権化。というかこんな優男からの好意に気づかず他に男を作るような女の子は天罰食らうぞ。独身OLからの天罰。
そんな金木和也、実は意外と早くから大舞台に立っている。ALOE#squash!(アロエスカッシュ)というバンドで2011年の閃光ライオットのファイナリストに残っている。23歳にしてキャリアもバッチリだ。
こちらは今月の頭にリリースされたセカンド・ミニアルバム「最終兵器」からのトラック。これはなんとなく、ほんとになんとなく感じたことなんだけど、多分彼はヒモの才能があると思う。年上受けしそう。
冗談はさておき、金木和也の1番の魅力は曲の展開にあるのではないだろうか。この『ダンシャリーナ』にはそれがハッキリ現れている。Aメロ、Bメロ、サビとダレることなく抑揚と意外性に富んだ構成となっている。職人の仕事だ。
他の曲を聴いてもらうともっと分かるのだが、とにかくメロディーやコード進行の引き出しの多さに驚かされる。この歳にしてなかなかの実力派。第一線を張るための素質は充分にある。
他の曲が聴きたい?じゃあアルバムを買おうね。
キクチリョウタ
金木和也がリスナーに近い目線で歌うノン・フィクションのシンガーだとすれば、兵庫出身の24歳、キクチリョウタは物語の歌い手だ。抽象的な歌詞を多用して、フワッとしたどこか悲しいお話を語るように歌う。
歌い手といえば、キクチリョウタは「ばずぱんだ」という名義でニコニコ動画の歌い手としても活動していた。
その縁からか、同じくニコニコ動画を出身とする古川本舗のメジャーアルバム3枚にゲストボーカルとして参加していて、サード・アルバムの『SOUP』にいたっては全曲彼が歌っている。彼もまた既になかなかのキャリアを積んできている。
秦基博の声が「鋼と硝子でできた声」と例えられていたが、それに準えるとキクチリョウタの声は純度100%のガラス製品だ。しかも薄い奴。すぐ割れそうで危なっかしくて、だからこそ綺麗に透き通るような奴。そういうの好きでしょ皆さん。
彼もまた様々なアプローチから曲を作っている。アコギ1本で泣かせにくるのもあれば、NHKのドキュメンタリーでエンディングとして流れてそうな壮大な曲もあり、もちろん王道ポップスも忘れてはいない。しかしどんなに明るい曲を歌っていても、その声は一抹の叙情を帯びている。どうあっても泣かせたいのか。後家殺しめ。
そんなキクチリョウタは、来月16日にファースト・シングルをリリースする。要チェック。
〆
いかがだろうか、この2人。同じ男性ソロシンガーでもそれぞれに違った魅力を持っていて、これまで積み上げてきた実績も申し分ないものではないだろうか。
この数年でアイドルやらダンスユニット、小難しいロックバンドが台頭してきて、シンガーに与えられるパイの大きさは小さくなりつつあるのかも知れない。それでもやはり彼らのような存在は必要不可欠だ。ドラえもんの主題歌とか、紅白歌合戦とか。
傷心の独身OLから暇を持て余した専業主婦まで、幅広い層が彼らの成長を楽しみにしている。