SAKANAMONから、マイノリティなあなたへ
あなたは、自分を「社会の爪はじき者」だと思ったことがあるだろうか?
人と同じことができない。集団に紛れ込めない。社会に溶け込めない――そう、感じたことがあるだろうか?
もし感じたことがないのなら、君はもうこの記事を読まなくていい。いや、これは良い意味でだ。君はきっと、音楽なんかなくても生きていける。
感じたことのあるあなた。僕はいま、あなたに向けて、この記事を書いている。
毎日が上手くいかなくて、日々向かい風に打ちのめされて、それでも負けずに生きているあなたにこそ、読んで欲しくて書いている。
――実はいるのだ。社会の爪はじき者に対して「頑張れ!」と叫んでくれる、すごくいいバンドが。
SAKANAMON
前置きはこのくらいにして、本題に入ろう。
まずは、この曲を聞いてくれ。
うん。とても良い曲だ。思わず口ずさんでしまうな。バッハ~の旋律を~♪
ってこれ、サカナクションやないかーい!!
…………さっきまですげー真面目なことを書いていたのに、こんなことをしてすまないと思っている。で、でもこれは、『地下室TIMES』寄稿者としてやっておかなければいけないと思ったのだ!
とまあ、楽しい冗談はこの辺りにしておいて、本当に本題だ。
きっと、知っている人は知っているバンドだろう。メジャーデビューもしているし、マイナーではない。――けれど、誰もが知っているバンドというわけない。
だからこそ、マイノリティであるあなたにも、知ってもらいたいと思う。
タワーに成って届けよう
どうして、マイノリティなあなたにこそ、聞いて欲しいのか。それは……SAKANAMONというバンドが、そういう人にこそ届くような音楽を作っているからだ。
まるで人がゴミの様だ
ひしと蠢く蛆の様だ
爪弾き者の僕等の様な
塵も積もって山の様だ
今タワーに成って届けよう
無粋な解説をしてしまうと、この曲はそれそのまま――社会不適合者だって、寄り集まれば一つの塔になれる、その声を届けられる、というメッセージが込められている。
マイノリティだって寄り集まれば、一個のマジョリティである、と――けだし至言だ。ここまで記事を読み進めてくれているあなたなら、何か感じ入るものがあるのではないだろうか?
それでは、もう一曲紹介しよう。
とどのつまり何も出来ない
だからって何
何て事無いさ
とんでもない自己肯定っぷりである。この曲の歌詞を見て「なんだこの、自己弁護だらけの歌……」となっている君は、恐らくマイノリティではないけれどここまで読んでくれた方だろう。しかし、できることなら、そんな言葉で切って捨てないで欲しいと思う。
今の時代、こんな風にマイノリティを肯定してくれる楽曲は、そうそうないのだから。
……いやまあ、少しばかり優し過ぎるきらいはあるが。しかし、音楽なんてそこらじゅうにあるのだ。邦ロック界に一曲くらい、優し過ぎる曲があってもいいではないか。
以上の二曲を紹介した時点で、大体SAKANAMONというバンドがどういうことを歌っているのか、あなたにはわかってもらえただろう。
つまるところ、彼らは「マイノリティに向けた応援歌」を、得意中の得意としているのだ。
それは、ボーカル藤森の中にある、「自分はマイノリティだ」という意識から生まれるものだと思われる。彼が自己をそう評価しているからこそ、こんなにも僕に――あなたに響く楽曲を、彼らは創れるのだ。
出来るだけの策を施してるよ
とは言うものの、彼らがそれだけではないことは、この記事に記しておかなければならないだろう。SAKANAMONを「社会不適合者を肯定するのが上手いだけのバンド」という印象で終わらせてしまっては、彼らに申し訳が立たない。
確かにそれは強みではあるが、SAKANAMONの魅力はそれにとどまらないのだから。
こういうのも「メタ」というのだろうか。この曲は自身の作曲工程を、ボーカルの藤森が歌い上げる一曲だ。
この曲の歌詞自体、とても面白いものなのだが……ここで注目するべきは、彼の「視点」である。
さあ四分もの時間をかけちゃって最後まで聞いてくれるかな
出来るだけの策を施してるよ 四つ打ち世界で相身互い勤しんでいこう
ただ身を任せたも
なんと歌詞に「最後まで聞いてくれるかな?」と、終わってしまった某お昼の番組を彷彿とさせるフレーズが出ているのだ。これが出ている時点で、SAKANAMONというバンドがいかにリスナーに向けて音楽を作っているのか、推し量れよう。
実際、彼らの音源をウォークマンに取り込んだ時、プレイタイムの短さに驚いた。恐らく彼らには、「リスナーの時間を奪っている」という意識がちゃんとあるのだ。だからこそ演奏時間は短くしたうえで、曲展開に緩急をつけているため、楽曲が魅力的に仕上がっているのである。
僕から、マイノリティなあなたへ
如何だっただろうか。少しでもSAKANAMONというバンドに興味を持ってもらうことが、できただろうか?
あまり身の上話などしたくはないのだが……正直な話、自分もマイノリティ寄りであると思う。だからこそ、同じ苦しみを抱く「誰か」の毎日が少しでも安らぐよう、この記事を書いたのだ。
彼らの音楽が、マイノリティなあなたに。
あなたの日常に届くことを、切に願う。
P.S.
一部、SAKANAMONのメジャー1stミニアルバム『ARIKANASHIKA』のアマゾンレビューを踏襲したような箇所があるが……あれを書いたのは僕なので、一応報告を。断じてパクリとかではない。