お前ら、歌詞をちゃんと読めよ! ロキノン系より、歌詞が素晴らしいバンド五選
あなたが音楽を聞く際、重視するものはなんだろうか?
リズム。メロディ。曲展開。演奏技術――まあ当然ながら、その音楽が自分にとって耳触りの良いものかどうかというのが、CDなどを買う際の判断材料だろう。曲が良くないバンドのCDなど、誰も買いはしない。
しかし、ちょっと待て。音楽って、リズムやメロディが全てだろうか? それらが良いのを前提に――もう一つ。判断材料があることを、みんな忘れがちではないだろうか。
そう、歌詞だ。
……マジで近年、オリコンの上位に食い込む楽曲は、これをないがしろにしていて腹が立つ! 会いたかったり会えなかったり、ラインでアイシテルとか送って既読ついたのに返信がないのとか――クッソどうでもいいわ! なんなの? そんな熱い恋してないと流行りの音楽って聞いちゃいけないの? 共感できなさ過ぎるんですけど!
――ご、ごほん。いま一瞬寄稿者の闇が垣間見えてしまったが、違う違う。話を戻そう。
歌詞。もちろん楽曲が良いことが、前提にはあるけれど……音楽を楽しむ際には、そこを避けては通れない。どれ程魅力的なメロディでも、歌詞がアレなら長いこと聞いていたくはないだろう? 歌詞を重視されなくなった昨今ではあるけれど、決してそれが音楽と離れてしまったわけではない。
なので、この記事では今一度、歌詞の良いバンドを紹介して――日本語詞、というものに魅力を見い出してみよう。まさにホルモンの歌詞で言うところの「ロックソング目で聴け」だ。ソナーなんちゃらとかで満足している場合じゃねーぞ!
amazarashi
「やまない雨はない」「明けない夜はない」
とか言って明日に希望を託すのはやめた
土砂降りの雨の中 ずぶ濡れで走っていけるか?
今日も土砂降り《雨男》
まずは言わずもがな、この歌詞が廃れた音楽業界に対し、強烈な歌詞で殴り込みをかけたamazarashi先生だ。楽曲を聞かせられなくて残念至極だが、アルバム『夕日信仰ヒガシズム』より、『雨男』の歌詞である。……説明するのも野暮なくらい、魅力的だ。
音源がある楽曲も、一応紹介しておこう。
時々虚しくなって全部消えてしまえばいいと思うんだ
神様なんてとうの昔に阿佐ヶ谷のボロアパートで首吊った
綺麗な星座の下で 彼女とキスをして
消えたのは 思い出と自殺願望
そんな光《光、再考》
やっぱ、初期amazarashiの楽曲はギラギラしてんな……という僕の感想は置いといて、どうだろうか? 言葉の力がすごくないか?
『神様なんてとうの昔に阿佐ヶ谷のボロアパートで首吊った』――オリコンに蔓延しているつまらない歌詞とは、迫力がケタ違いだ。ボーカルの秋田ひろむは、ちゃんと言葉でリスナーを殴ろうとしている。
また、彼らの強みとして――時たま、楽曲に物語を込めている点が挙げられる(『無題』『古いSF映画』『ピアノ泥棒』など)。そのことからも、amazarashiが歌詞に重きを置いているアーティストだというのが、わかってもらえるだろう。
ちなみに、ストーリー性のあるamazarashiの曲はもれなく名曲、というのはamazarashiあるあるだと思う。
RADWIMPS
誰も端っこで泣かないようにと 君は地球を丸くしたんだろ?
だから君に会えないと僕は 隅っこを探して泣く 泣く
誰も命無駄にしないようにと 君は命に終わり作ったよ
だから君がいないその時は 僕は息を止め 待つ《有心論》
今でこそ、売れすぎて紹介するのも恥ずかしいくらいだか――リリースされた当時、この楽曲に「歌詞すげえ! RADWIMPSすげえ!」となった中高生は、僕以外にも山ほどいただろう。カラオケでこれを歌って、RADを知らない友人に「歌詞やばいな」と言われたのは良い思い出だ。
結局のところ、RADWIMPSが売れた一番の要因って、ここにある気がする。
楽曲のクオリティ、矢継ぎ早に歌い上げるメロディセンス――売れるための前提が揃っていたところに、あの歌詞だ。そりゃあ大ブレイクする、という話である。
それでは、もう一曲。後期ラッドの曲も紹介しよう。
手にしたいものがない者に 眠れぬ夜はないんだ
守りたいものがない者に この恐れなどないんだ
(中略)
「絶望なんかまだしてんの? 何をそんな期待してるの?」
ご忠告どうもありがとう でも譲る気はないんだ《億万笑人》
RADファンにブチ切れられるかもしれないが、この曲、大したことは言ってない。至極当たり前のことをグッドメロディに乗せて、歌っているだけである。
しかし、僕がこの曲でスゴイと感じたのは、その言い方だ。センスの塊でしかない。
ぼんやりと誰もが、思ったことはあるだろう――「絶望と希望って表裏一体だよなー」と。けれど、それに対して凡人は、そう思うことしかできない。
それをこんな歌にできるのは、とんでもない才能である。
andymori
人身事故が起こったよ 迷惑そうな女の子
見上げたスクランブル大画面 元気を出せって言ってるじゃないか
(中略)
超新星 あの超新星 寂しいのは分かるけどあたりかまわずわめいてはじけて
CITY LIGHTS CITY LIGHTS すぐにいなくなるくせに《CITY LIGHTS》
すごくいいバンドだった――そう、過去形で書かなければいけないのが残念なバンド、andymoriだ。
何かのインタビューで読んだが、ボーカルの小山田は初期の頃、歌詞にさらりと政治的なスパイスをリスナーに気取らせないように入れていたらしい。ということで、あまり「これこれこうだぜ!」とここで書くことはできない(というかしたくない)が、この曲も色々と深読みのしたくなる、良い歌詞だ。
そもそも、『City Lights』とは恐らく――『Civil Rights』のモジりだ。……意味は自分で調べて欲しい。そしてandymoriがこの曲にどんな意味を込めたのか、想像を巡らせてみるのも楽しいだろう。てか、PVの彼らがピースしてるのとか、それもまた――(以下、自主規制)。
綺麗な人形が欲しいよ 僕にとっての君みたいな
Wepons of mass destruction 東へ東へ
太陽がなんだか恋しんだ コンクリートジャングルに降り注いだ
Wepons of mass destruction 東へ東へ《Wepons of mass destruction》
andymoriは決して、リスナーが理解できない歌は歌っていない。ただ、その曲に込めた真意までは見通させなかったように思う。本当に彼らを想う、一途なファンであればうっすらとは理解できたかもしれないが……残念ながら自分は、そこまで見通すことができなかった。
でも、だからこそ。彼らの歌には深みがあって――魅力があったのだ。
tacica
鳥に帰ろうとして
水の飛沫に見付けた僅かな地図
人間(ヒト)に帰ろうとして
「我等、氷の上、炎天下を知る。」
(中略)
いつか僕等も色褪せるのなら
自らの選択に
成功を祈って泳げる歌
水に潜る方を選んだ日《人鳥哀歌》
最近ではアニメの主題歌とかも任される、知る人は多いバンド、tacicaである。十周年おめでとう!
このバンドもまた、歌詞がとてもナイスだ。――空を飛べないペンギンの悲哀を歌った歌だぞ? 可愛すぎるだろ。ちなみに「じんちょうあいか」ではなく「ペンギンエレジー」と読む。
しかし、tacicaの楽曲は動物や乗り物など、キュートな題材を用いることが多いものの、歌詞そのものは抽象的で、意外とわかりずらい。玄人向け、というのではないけれど……歌詞カードをしっかりと目で追わないと、意味は伝わってこないだろう。
けれど、だからこそ――ちゃんと読んでみると存外、メッセージ性は強い。ハマる人はどハマれる歌詞だ。
今日も又 アナタのいない場所を
手当たり次第探す
どこかへ行っても色褪せない理由
そう 描けない夢なんてない
叶わない夢なんてない
って思ってたんだろう ひとり
残り全部の命を使って《DAN》
楽曲と一緒に紹介できないのが申し訳ないが、どうだろうか? 何か、感じ入るものがないだろうか?
tacicaのCDは歌詞カードに凝っているため、言葉の並びが美しい時がしばしばある。興味が湧いたのなら、CDをレンタルしてみてはいかがだろうか? ――ちなみに、個人的なオススメは『jacaranda』である。
People in the box
あの子は木に登って 黒い大地に息を呑んだ
巨大なバクのなかプログラマうごめいてる
歴史はそれ自体がスケープゴートの様相だよ
空へと吹き上げる風は意思を孕んでいる
(中略)
あの太陽が偽物だってどうして誰も気付かないんだろう《ニムロッド》
正直な話、この人達の歌詞を紹介するために、ここまで記事を書いてきた――みたいなところがあるバンド、People in the boxだ。僕の中で、まさかアニメに使われると思わなかったバンドランキング、堂々の第一位でもある。ちなみに、二位はamazarashiだ。『東京喰種』は色々とおかしい。
ともかく! 彼らの歌詞を見てみよう。……おい、誰だいま「この歌詞、なに言ってるかわかんねー(笑)」って言ったやつ。バカ、僕だってわかんねーよ! でも、この歌詞を見て何も感じないのなら、もうちょっと感受性ってやつを磨いた方がいいぞ!
ドラマティックな曲展開、リズミカルなメロディに乗せて紡がれる、深海のような歌詞。それの意味を掴めるか、掴めないかが問題じゃない。それを良いと感じられるかどうかだ。
つまり、『Don't think.FEEL!』を地で行く歌詞なのである
それ本来の意味での歌「詞」であり、ポエム。これを魅力的に思えたのなら、あなたは随分と日本語が――言葉が好きなのだろう。誇っていいと思う。
しかし、散々「よくわからない」と言ったが、ボーカル波多野は意味不明な歌詞を書いているわけではない。曲の全体像を掴ませない歌詞をこそ、書いているのだと思う。
その証拠に、彼らの楽曲は時折――出てくる言葉の鋭さに、思いきり刺されることがある。
「もういいかい」
「まだだよ、まだだよ」
「僕はずるをして、もう一回生きてしまって」
「許せないよ だから、わたしのいのちを、君にあげる
パンケーキみたいに切り分けて、あげる」《日曜日/浴室》
…………これが、ミニアルバム『Ghost Apple』の七曲目――ラストの楽曲の、最後の歌詞だ。この言葉で、『Ghost Apple』というアルバムは閉じていく。……この言葉で、だ。
その凄さを、「スゴイ」という言葉でしか表せない自分を、恥ずかしく思う。けれど多分、彼らの歌詞は言葉で説明するものではないのだ。右脳で読むべきなのだろう。
これ以外にも、リスナーが驚かされる歌詞を、波多野はかなりの数書いている。興味が出た方は是非――たまには歌詞を入り口に、音楽を聞いてみては如何だろうか?
最後に
そんなわけで以上、歌詞が凄いバンド、ということで五組ほど紹介させてもらった。
本当は他にも、あまりにも飾らないストレートな言葉でリスナーを射抜く「高橋優」やら、弱者だからこそ出せる心の叫びを歌に乗せる「それでも世界が続くなら」とか、あとメジャーどころ(ミスチル、スピッツなど)も紹介したかったのだが……それらにはあまり詳しくないうえ、そんなことしてたら終わらないので、書きたい五組について書かせてもらった。
ここまで読んでくれて、どうもありがとう。
この記事が、音楽における「歌詞」について考え直す機会になれたなら、幸いだ。
P.S.
今回紹介したバンドは、その殆どが過去に地下室TIMESで紹介されているので、そちらも是非読んでほしい。なんなら僕のこの記事より面白いので。