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突撃取材、秋葉原サイファー 秋葉原でオタクが自然的に集結してフリースタイルラップみたいなことしてるけど完全にただの早口のオタク

 タイトルに一字の偽りもなし。文字通りの悪夢が、秋葉原の一角にあった。

 秋葉原行ったことありますかみなさん。すごいですよ。駅乃みちかを鼻で笑うド直球の萌えキャラが駅のいたるところにデカデカと張り出され、小劇場の前には屏風から出てきたような紋切り型のオタクが並び、半裸のメイドがメスの顔でビラをビラビラさせ…

 僕なんか初めて秋葉原駅で降りた時思わず「へえ、ここがインターネットかあ!」みたいなことを言ってしまったくらい。

 そんな秋葉原について、信頼のある情報筋よりオタクの皮脂のような香りのタレコミが入った。

「なんか最近、秋葉原の川沿いでオタクたちが自然に集まってフリースタイルラップやり始めてるんだけど、全然韻踏まないからただオタクが早口で会話してるみたいになってるんだよね。一緒に見に来ない?」

 激アツの案件。史上最もグロい奇跡の産物。絶対に見に行く!と即答し今回の取材と相成った。


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 閑散とした秋葉原の一角。友人曰く、ここに毎週土曜の夕方6時になるとどこからともなくオタクたちが湧きだして自然とラップが始まるらしい。

 心底、嘘をつけ、と思った。

 茶柱が「萌え」の形に浮き上がるぐらいありえない。が、来てしまったものは仕方がないので、夕暮れ時まで最寄りのデニーズで時間を潰し、その時を待った。

 

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 え

 

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 やだ うそ

 

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 スレ、ハケーンしますた 晒しageきぼんぬ

 マジでやっとる。マジか。まどかマギカ。

 絵図としてはご覧の通りで、オタクのみなさんがトラックに合わせて「内田彩」とか「TYPE-MOON」とか「新海誠」とか、何かぼそぼそ言ってる。めっちゃ声が小さい。マジか。メガネ率がすごい。東工大みたいになっとる。

 事実確認が取れたところで、当日いらっしゃっていたこの業界の常連でオタクラップの先駆者であるコースさんにオタクラップの経緯を伺った。

 

なぜオタクがラップを?

コースさん:一昨年くらいですかね、僕がテレビを見ていたら、渋谷で酔っ払いがフリースタイル(即興)でラップする様子を放送していて。
当時はまだフリースタイルダンジョンも始まっていなかったのでちょっと物珍しくって、しばらくチャンネルを変えずに眺めていたんです。
けどあまりにヘタクソで思わず「こんなの俺にでもできる」と漏らしてしまって。それを聞いた父が、「じゃあ今度オタクのラップバトル企画するから、お前出ろ」なんて言われてしまいまして。

 出たんですか?

コースさん:出ました。といっても出場者は3人で、3人ともタダのオタクでした。ラップのラの字もわかってない奴らで、そもそもバトルするのに奇数っていうのがおかしいし、その内一人なんか「フリースタイルだ」って言ってるのに当日、紙持ってきてそれ読みながらラップしてましたからね。

コースさん:そんなわけで右も左もわからないまま、見よう見まねでラップの真似事を始めたんですけれど「あれ、これ、楽しいぞ」ってなりはじめて。今年に入って、オタクのラップバトルイベントが定期的に開催されるようになって、色んな人と知り合うことになりました。
現場ではオタク同士がビート上で戦うんですけど、ラップがうまいかヘタかよりも、「8小節の中でマンガやアニメなどの物語に、自分の愛を詰め込んで語る技術」が問われる、すごく面白い環境で。気がつくとイベントに出てるオタクたちは、みんなその特殊スキルをどんどん向上させていて、「イベントでバトルするだけじゃなくて、単純にビートの上でラップしながらオタク会話したいよね!」という気持ちが高まっていた結果、秋葉原の路上で毎週やることになって。
オタクの会話って、"声のでかいオタクが一人いてそいつが延々まくし立てて終わる"っていうパターンがすごく多いんですよ。でもそれがラップだとちゃんと全員平等に8小節の時間を与えてもらえるので、とても健全にコミュニケーションが取れるんですよ。それが良いなと。
今は、「秋葉原サイファー」というのをいーえっくさん(@aqilaEX)と乱さん(@r4a8n120)が主催して、毎週土曜日秋葉原のはずれでオタクの早口ラップをしてます。

 

 ちなみにこのコースさん。本当に知識ゼロの状態から始め、今年の10月に開かれた「マンガMCバトル」というバトルの大会でACEを倒していたマジの猛者。

「どんな練習してらっしゃるんですか?」と訊けば長門有希のごとく座った目で「アニメで忙しいのでしません」と即答。

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*倒された人

 しかも彼、OKAMOTO'Sの中高の同級生だそうで、日本一面白いと名高いオカモトレイジのインスタグラムにちゃっかり頻出している。

 そんな級友のオカモトレイジからもインタビューにて

今注目しているシーンでいえば『オタラップMCバトル』という、ガチガチのアニメオタク同士のMCバトルです。フリースタイルバトルが盛り上がっていて、今キャラ不足の様な状況になっていて、そこに一石投じられるような熱いスクワッドを見つけました(笑)。その一人がMC Courseという和光の同級生で、奇しくもOKAMOTO’SとKANDYTOWNと同じ場所で育ってきたやつで。彼を中心に、ビートに乗りたかったオタ達が溢れかえってきていて、一つのシーンになりつつあって。他にも本当に様々な人がいます

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 "ビートに乗りたかったオタ達が溢れかえってきていて、一つのシーンになりつつあって"

 本当にこの冗談みたいな字ヅラそのまんまで、円陣組んでトラック流して8小節でお互いのオタク趣味について語り合っていたら、それを見かけた別のオタクたちが「楽しそう」と参加し、また通りすがりのトラックメイカーが「え、秋葉原でサイファーやってんの!?」とビートメイキングに参加。ついには来る12/31、コミックマーケット91。通称コミケにて

 

 オタクの早口を収録したCDを頒布するまでに至る。

 メジャーとかインディーズとかそういう枠組みを超えて同人で1stEP出してんのヤバい。Tシャツも頒布予定でこっちはマンガ家の知るかバカうどん先生がアートワークを書き下ろしている。

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 当然のようにド直球の18禁。よそ行きにはもちろん部屋着にするにも家族の理解が必要な出来栄え。もちろんここには掲載できないので各自でご覧になるぽよ。

 

 先ほども単語だけ飛び出したのだけれど、野外でトラックを流し自由参加で各々好きにラップして会話することを"サイファー"と言うそうで。この秋葉原サイファーとは別に、渋谷サイファー、新宿サイファーなど銘打って、日本各地でラッパーたちが集まってラップをするカルチャーがあるらしい。

 秋葉原サイファーの当人たちは頑なに「いや、これラップじゃなくてオタクの早口なんで」と言い張っているものの、"サイファー"と名前がついてしまっているがために、たまに渋谷とかから武者修行とか道場破り的な感じでガチのラッパーが迷い込んでしまうそうで。

 著名ラッパーもオタクパワーにたじたじ。

 HIP HOPカルチャーにある「マッチョ」な感じとは全く無縁の、完全に別の文化として出来上がっている。

 そのため普通のラップバトルであれば"韻を踏む""アツい事を言う""カッコイイメロディでラップする"というのが主に盛り上がるポイントなんだけれど、オタクラップではそれらよりもむしろ"オタクとしての悲哀""アニメやゲームへの慈しみ""推しへの愛"そういった部分でアガるのである。

 僕が見に行った時も「宇都宮から来たぜ」というラッパーの方が2人いらっしゃったのだけど

「お前たちオタクのラップはただの御託、ワック」
※ワック:HIP HOP用語で”ダサい””まがい物”を指すスラング

 みたいなことを仰っているのに対して

「そうですね、私たちのこれはどちらかと言えばつまりラップというよりは早口。オタクの早口なんですねこれは」

 と一蹴。奇跡のノーダメージ。そのあともずっとアニメとか同人誌とかゲームとか声優とか、そういう話で各々が持論を展開し盛り上がっているので宇都宮の方、まったくアニメの話についてこれず寂しそうでした(ラップは上手かった)。

 

不良のオモチャをオタクがねぶる

 上のように書けば誤解されそうだけれど、別に内輪で盛り上がっているだけではなく、スキルが低いわけでもない。

 ラップ調の語りからビートに乗ったまま急に普通の喋り口調に切り替わったり、5時間ぶっ続けで一人の声優について語り続けたりと、他のラップとくらべるとかなり病的で異質だけれど、内容重視のラップで時々カタく韻を踏み、各々が互いの趣味の話を聞きながら「アガって」いる。本人たちが思っているよりかなりラップとして完成されている。

 思えば、ゲーセンなんかも昔は不良カルチャーで治安が悪い場所の代表だったけれど、いまや完全にオタクの巣。バイクだってそうだし、キャバクラガールズバー経営者は次々とメイドカフェ経営に鞍替えしつつある。

 東京生まれHIP HOP育ち、悪そうな奴は大体友達。そんなイメージのラップカルチャーだけれど、これもオタクにねぶり尽くされやがてカジュアル化していくのかも。

「ラップやったことないけど、オタクとマンガやアニメの話をしたい」という方は、ぜひ秋葉原サイファーまで遊びにきてはいかがでしょうか。

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